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2025年6月6日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「腎細胞がん」と「フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍」対象疾患とするウェリレグ錠(ベルズチファン)の承認可否が審議される予定です!
MSD|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | ウェリレグ錠40mg |
一般名 | ベルズチファン |
製品名の由来 | |
製造販売 | MSD(株) |
効能・効果 | ●がん化学療法後に増悪した根治切除不能又は転移性の腎細胞がん? ●フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍? |
用法・用量 | 1日1回経口投与? |
収載時の薬価 | |
発売日 |
国内初の経口の低酸素誘導因子2α(HIF-2α)阻害薬ですね。
HIFに関連する薬剤としては、腎性貧血に使用するエベレンゾ(ロキサデュスタット)などのHIF-PH阻害薬がありますが、がん領域では初の登場です。
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エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】
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今回は腎細胞がんを中心に、ウェリレグ(ベルズチファン)の作用機序とエビデンスを紹介していきます♪
腎臓とは
腎臓は、ちょうど背骨の両側の、腰の高さのところに左右1つずつある臓器で、大きさは握りこぶしくらいのソラマメのような形をしています。
主な働きはご存知の通り、原尿の生成です。
原尿は「腎実質」と呼ばれる部位で血液を濾過(糸球体で濾過される)して生成されます。
その後、原尿は腎盂に集められた後に、尿管、膀胱を通っていきます。
腎細胞がんと治療薬
腎臓の中でも、腎実質の細胞から発生するのが腎細胞がんです。
腎細胞がんは初期では手術で取り除くことが可能で、再発低リスクの場合には無治療で経過観察します。しかし、手術で取り除いたとしても、再発リスクが高い場合、再発の危険性があります。
再発リスクが高い腎細胞がんの術後療法として、最近キイトルーダ(ペムブロリズマブ)が使用可能になりました。
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バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】
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また、発見時に肝臓や他臓器に転移が認められる場合、手術で取り除くことが困難です。
一般的に、他の臓器のがんでは、手術により切除できない場合や他の臓器に転移が見られた場合には、抗がん剤による化学療法が行われます。
しかし、腎細胞がんの場合、これまでの抗がん剤ではがんに対する感受性が低く、一般的に化学療法が行われることはありませんでした。
かつて、薬物治療として唯一行われてきたのが、インターフェロンα(IFN-α)製剤やインターロイキン2(IL-2)製剤を用いたサイトカイン療法でした。
その後、分子標的治療薬として以下の薬剤が登場し、現在ではこれらの薬剤が一次治療の中心です。
- オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)併用療法
- 免疫チェックポイント阻害薬(バベンチオ や キイトルーダ や オプジーボ)+チロシンキナーゼ阻害薬(インライタ やカボメティクスなど)
- スーテント(一般名:スニチニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- ヴォトリエント(一般名:パゾパニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- ネクサバール(一般名:ソラフェニブ):チロシンキナーゼ阻害薬
- トーリセル(一般名:テムシロリムス):mTOR阻害薬
- アフィニトール(一般名:エベロリムス):mTOR阻害薬
これら薬剤の使い分けですが、下記のIMDCリスク分類(低・中・高リスク)による使い分けがよく行われています。
予後予測の6因子 | 何項目当てはまるか | ||
0個 | 1-2個 | 3個以上 | |
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低リスク | 中リスク | 高リスク |
低リスクにはスーテントやネクサバールなどの分子標的治療薬単剤、中・高リスクにはオプジーボ+ヤーボイ併用療法や、免疫チェックポイント阻害薬+チロシンキナーゼ阻害薬が用いられることが多いです。

腎細胞がんとHIF
アンデス高地に住んでいる人々は、標高が高いため酸素濃度の低い生活環境で暮らしていますが、この地方の健常成人男性のヘモグロビン値は19.2g/dLと、我々日本人(成人男性で15g/dL前後)と比較しても高値であることが知られています1)。
これは、酸素がより少ない状況下でも、全身の細胞に何とか酸素を行き渡らせようとするメカニズムが働いているためです。
このメカニズムを担っているのがHIFです。
HIF(低酸素誘導因子:hypoxia inducible factor)は、細胞の酸素供給が低下した場合(低酸素状態)に誘導・活性化されるといった特徴を有したタンパク質(転写因子)です。

HIFには2αと1βがあり、通常の酸素状態でも産生されています。
しかし、通常の酸素状態ではすぐに「VHLタンパク質」によって速やかに分解されてしまうため、活性化することはありません。
VHL:von Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル・リンドウ)
一方、がん細胞の周囲などで低酸素状態になった場合、VHLタンパク質の働きが抑制されるため、HIFは分解されなくなります。
その後、HIF-2αはHIF-1βと複合体を形成して、がん細胞の増殖に関わるDNAの転写を活性化させます。
HIFによって転写が活性化されると、
- VEGFの活性化による血管新生の促進
- がん細胞の増殖促進
- がん生存遺伝子の発現促進
などによってがん細胞の増殖や転移が促進されます。
VEGFは、がんの血管新生に関わる重要な因子ですね。アバスチン(ベバシズマブ)はVEGFの働きを抑制する抗体薬です。
ちなみに、適応症のうち「VHL病関連腫瘍」は、VHLタンパク質をコードする遺伝子の異常などによって、その働きが低下した結果生じると考えられています。
ウェリレグ(ベルズチファン)の作用機序
ウェリレグは、HIF-2αを選択的に阻害するHIF-2α阻害薬です!
HIF-2αが阻害されることによって、
- VEGFの発現抑制と血管新生の抑制
- がん細胞の増殖抑制
- がん生存遺伝子の発現抑制
などによりがんの増殖や転移を抑制すると考えられています。2-3)

エビデンス紹介:LITESPARK-005試験
根拠となった臨床試験(LITESPARK-005試験)をご紹介します。4)
本試験はPD-1またはPD-L1阻害薬とVEGFR-TKIを逐次または同時に用いた治療後に進行した切除不能な局所進行または転移性の淡明細胞型腎細胞がん患者さんを対象に、アフィニトール(エベロリムス)群とウェリレグ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」と「全生存期間(OS)」とされ、結果は以下の通りでした。
アフィニトール群 | ウェリレグ群 | |
18か月時点のPFS率 | 3.5% | 21.9% |
P=0.002 | ||
生存期間中央値 | 18.1か月 | 21.4か月 |
HR=0.88(95%CI:0.73~1.07)、 P=0.20 |
OSは残念ながら有意差がありませんでしたが、PFSについてはウェリレグ群で有意な改善が認められていました。

副作用
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、特徴的な副作用として貧血が報告されていました。

用法・用量
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、120mg(3錠)を1日1回経口投与とされていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ウェリレグはこんな薬
- 国内初の低酸素誘導因子2α(HIF-2α)阻害薬
- HIF-2αを阻害することでがん細胞の増殖・転移を抑制する
- 1日1回経口投与
- 貧血には注意が必要
近年、腎細胞がんは免疫チェックポイント阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬など、多くの治療薬が登場してきたものの、まだまだ治療成績の改善の余地が残されています。
ウェリレグは国内初のHIF-2α阻害薬のため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。

以上、今回は腎細胞がんを中心に、ウェリレグ(ベルズチファン)の作用機序とエビデンスを紹介しました。
引用文献・資料等
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