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2023年6月26日、「急性リンパ性白血病(ALL)、悪性リンパ腫」を対象疾患とするオンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)が承認されました!
日本セルヴィエ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オンキャスパー点滴静注用3750 |
一般名 | ペグアスパルガーゼ |
製品名の由来 | 不明 |
製造販売 | 日本セルヴィエ(株) |
効能・効果 | 急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫 |
用法・用量 | 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、 2週間間隔で点滴静脈内投与(記事内参照) |
収載時の薬価 | 230,637円 |
発売日 |
急性リンパ性白血病では、ロイナーゼ(L-アスパラギナーゼ)がよく使用されていますが、オンキャスパーはL-アスパラギナーゼをポリエチレングリコール(PEG)で修飾したPEG化L-アスパラギナーゼ製剤です!
PEG化することで、血中半減期の延長(作用時間の延長)と、免疫原性の低下による過敏反応の低下が期待されていますね。
今回は代表疾患として、急性リンパ性白血病と共に、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)の作用機序について解説します。
急性リンパ性白血病(ALL)
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球、赤血球、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphocytic Leukemia)は、白血球の中でも「リンパ球」が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。
特に小児のがんの中ではALLが最も多いとされています。
また、腫瘍化するリンパ球によっていくつか分類されており、B細胞が腫瘍化した急性リンパ性白血病のことを「B細胞性急性リンパ性白血病」と呼んでいます。
この腫瘍化したB細胞のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「CD19」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。
急性リンパ性白血病の治療
基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。
1カ月程の以下の化学療法(寛解導入療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後も1~2年程、化学療法(地固め/維持化学療法)を継続していきます。1)
寛解導入療法
- ビンクリスチン
- プレドニゾロン
- L-アスパラギナーゼ
- ドキソルビシン or ダウノルビシン
- シクロホスファミド
フィラデルフィア(Ph)染色体が陽性の場合、イマチニブを併用することもある
そしてその後も完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。
このように、L-アスパラギナーゼはALLの標準治療に位置付けられていますが、しばしば過敏症によって治療継続が困難となるケースもあります。
今回ご紹介するオンキャスパーはPEG修飾されたL-アスパラギナーゼのため、免疫原性が低下し、過敏症のリスクが少ないと期待されていますよ!
ちなみに、寛解導入療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます。また、一度完全寛解が得られたとしても、約半数の患者さんは再発してしまいます。
このような抵抗性・再発の患者さんに対して、最近では以下の治療選択肢があります。
- キムリア(チサゲンレクルユーセル):CAR-T細胞療法
- ビーリンサイト(ブリナツモマブ):二重特異性抗体(BiTE抗体)
オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)の作用機序
正常細胞や白血病細胞が増殖するためには、L-アスパラギンと呼ばれるアミノ酸が必須です。
L-アスパラギンは血中にも存在しているため、通常は血中から細胞内に取り込むことで利用しています。
また、正常細胞は細胞内のアスパラギン酸から、タンパク質合成過程によってL-アスパラギンを生成することも可能ですが、白血病細胞ではこの機能が欠損していることが多いと言われています。
今回ご紹介するオンキャスパーは、血中のL-アスパラギンを分解するL-アスパラギナーゼ製剤です!
オンキャスパーによって、血中のL-アスパラギンが分解されるため、正常細胞と白血病細胞は細胞内に取り込むことができません。
L-アスパラギンは、アスパラギン酸とアンモニアに分解される
そのため、白血病細胞は増殖することができなくなり、抗腫瘍効果が発揮されるといった作用機序ですね!
一方で、正常細胞は細胞内でL-アスパラギンを生成することができるため、オンキャスパーによる副作用は低いと考えられています。
また、オンキャスパーはPEG化されているため、血中半減期が延長し、長時間作用できるといった特徴があります。
類薬のロイナーゼは、静注だと連日または隔日投与、筋注だと週1回または週3回の投与が必要でしたが、オンキャスパーは2週間に1度の投与で治療効果が期待されています。
加えて、PEG化することで免疫原性が低くなるため、過敏症の発現リスク低下も期待されています。これまでロイナーゼの過敏症で治療継続が困難だった場合にも、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
エビデンス紹介
根拠となったのは、国内で実施された第Ⅱ相試験です。2)
フィラデルフィア染色体陰性日本人急性リンパ性白血病患者さんを対象に、他の抗悪性腫瘍剤との併用下においてオンキャスパーを静脈内投与した国内第Ⅱ相試験において、初回投与14日後における血中アスパラギナーゼ活性 0.1IU/mL 以上の達成率は100%と報告されています。2)
副作用
重大な副作用として、
- 過敏症:アナフィラキシー反応(3.8%)
- 膵炎:急性膵炎(3.8%)、膵炎(3.8%)、再発性膵炎(頻度不明)、膵壊死(頻度不明)等
- 出血:小腸出血(頻度不明)等
- 血栓塞栓症:塞栓症(頻度不明)、脳虚血(頻度不明)、播種性血管内凝固(頻度不明)等
- 肝機能障害:ALT増加(11.5%)、AST増加(11.5%)
- 骨髄抑制:好中球減少(15.4%)、白血球減少(57.7%)、血小板減少(53.8%)、発熱性好中球減少症(42.3%)等
- 感染症:レンサ球菌性菌血症(頻度不明)、皮膚感染(頻度不明)、敗血症(頻度不明)等
- 脂質異常症:高トリグリセリド血症(30.8%)、血中コレステロール増加(3.8%)等
- 高血糖(11.5%)
- 中枢神経障害:痙攣発作(頻度不明)、失神(頻度不明)等
が挙げられていますので、注意が必要です。
類薬のロイナーゼでも重篤な凝固異常が報告されています。
これは、L-アスパラギナーゼが肝臓において生成される凝固因子、凝固阻害因子、線溶因子の合成を阻害してしまうことによって、凝固・線溶系のアンバランスが生じ、出血や梗塞が起こると考えられているためです。
投与中は頻回にフィブリノーゲン、プラスミノーゲン、AT-Ⅲ、プロテインC等の検査を行うことが大事かもしれませんね。
用法・用量
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、ペグアスパルガーゼとして、下記の用法・用量で2週間間隔で点滴静脈内投与します。
- 21歳以下の患者:体表面積0.6m2以上の場合は1回2,500国際単位/m2(体表面積)を、体表面積0.6m2未満の場合は1 回82.5 国際単位/kg(体重)を投与する。
- 22 歳以上の患者:1回2,000国際単位/m2(体表面積)を投与する。
収載時の薬価
収載時(2023年8月30日)の薬価は以下の通りです。
- オンキャスパー点滴静注用3750国際単位1瓶:230,637円
算定根拠については、以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】7製品(2023年8月30日)
続きを見る
まとめ・あとがき
オンキャスパーはこんな薬
- L-アスパラギナーゼをPEG化した製剤で、血中のL-アスパラギンを分解する
- PEG修飾したことで、血中半減期の延長と免疫原性の低下が期待できる
- 2週間間隔で点滴静注する
急性リンパ性白血病では、ロイナーゼ(L-アスパラギナーゼ)がよく使用されていますが、しばしば過敏症が問題となっていました。
以上、今回は急性リンパ性白血病と共に、オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)の作用機序について解説しました。
引用文献・資料等
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
- オンキャスパー点滴静注用 添付文書
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