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2022年8月24日、ポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の「未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を対象疾患とする適応拡大が了承されました!
それに伴い、元々の効能・効果から「再発又は難治性の」が削除されています。
中外製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ポライビー点滴静注用140mg/30mg |
一般名 | ポラツズマブ ベドチン |
製品名の由来 | Polatuzumab vedotin、Life、antibody-drug conjugateに由来する。 |
製造販売 | 中外製薬(株) |
効能・効果 | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 |
収載時の薬価 | 30mg:298,825円 140mg:1,364,330円 |
ポライビーはCD79bと選択的に結合するポラツズマブに抗がん剤を結合させた構造を有していて、2021年3月23日に「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」を効能効果として承認されました。
結合している抗がん剤(MMAE)としてはアドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン)と同じです。
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今後は初回治療からも期待できますね!
今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の作用機序・エビデンス等について解説していきます。
悪性リンパ腫とは
造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。
細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)
- ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
- 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)
今回ご紹介するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)もNHLの一種に分類されています。
また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、DLBCLは「中悪性度」のアグレッシブ分類とされています。
そしてDLBCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面には「CD79b」を発現していることが知られています。
DLBCLと治療
DLBCLは発見時の進行度(限局期もしくは進行期)によって治療が若干異なりますが、基本は薬物療法です。2)
限局期であっても進行期であっても「R-CHOP療法*」を3~8回行い、場合によっては放射線と併用することもあります。
*R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法
今回ご紹介するポライビーはNCCN-IPI**で中・高リスクの場合、初回治療としてR-CHP療法***と併用することで、R-CHOP療法を上回る効果が期待されています!
**NCCN-IPI:年齢、血清LDH、病期、節外病変有無、PS(全身状態)を元にスコア化された予後因子のスコア。ポライビーの臨床試験3)ではスコア2~5が対象とされている。
***R-CHP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロンの併用療法
なぜ、R-CHOP療法との併用ではなく、ビンクリスチンを除いたR-CHP療法と併用したのでしょうか。その理由はビンクリスチンの神経毒性作用がポライビーと重複するリスクがあるためだそうです。3)
さて、初回のR-CHOP療法で抵抗性を示した場合や再発してしまった場合、その後の治療選択肢としては以下があります。2)
- DHAP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン
- ESHAP療法:メチルプレドニゾロン、エトポシド、シタラビン、シスプラチン
- ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド
- CHASE療法:シクロホスファミド、シタラビン、デキサメタゾン、エトポシド
- Dose adjusted-EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン
- MINE療法:ミトキサントロン、イホスファミド、メスナ、エトポシド
- GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン
いずれもリツキシマブと併用する場合あり
ポライビーはCD79bが陽性の再発・難治性の場合、ベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法と併用することでも治療効果が期待されています。
ちなみに、CD19が陽性の場合、同様の治療選択肢としては、以下のCAR-T細胞療法もありますね。
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ポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の構造・作用機序
ポライビーはB細胞由来白血病細胞のCD79bを特異的に認識する抗体のポラツズマブに、抗がん剤のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させた構造を有しています。
MMAEは微小管(チューブリン)阻害作用を有していて、強力な抗腫瘍活性を持つ抗がん剤ですが、そのまま体内に投与されると、正常細胞も傷つけてしまうため、副作用が強く発現してしまいます。
そこで、白血病細胞を特異的に認識する抗体であるポラツズマブに、抗がん剤のMMAEを結合させることで、抗がん剤が白血病細胞のみに作用するよう工夫した薬剤がポライビーです!
このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が既に承認・販売されています。
- マイロターグ(一般名:ゲムツズマブ オゾガマイシン):造血器腫瘍
- カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン):乳がん
- エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン):乳がん
- アドセトリス(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン):造血器腫瘍
- ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン):造血器腫瘍
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ポライビーは白血病細胞にある「CD79b」を認識して結合します。その後、ポライビーは白血病細胞内に取り込まれ、抗がん剤のMMAEが遊離されます。
そしてMMAEは白血病細胞内の微小管(チューブリン)を阻害し、白血病細胞の増殖を抑制するといった作用機序です!
エビデンス紹介:POLARIX試験(初回治療)
初回治療の根拠となった臨床試験をご紹介します(POLARIX試験)。3)
本試験はNCCN-IPIスコアが2~5(中・高リスク)の未治療のDLBCL患者さんを対象に、R-CHOP療法とポライビー+R-CHP療法の有効性と安全性を検証した国際共同第Ⅲ相試験です。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)†」とされ、結果は以下の通りでした。
R-CHOP療法 | ポライビー+ R-CHP療法 |
|
2年時点のPFS率 | 70.2% | 76.7% |
HR=0.73(95%CI:0.57-0.95) p=0.02 |
†PFS:がんが増悪、または死亡するまでの期間
参考までに、再発・難治のDLBCLを対象とした臨床試験には以下があります。
- GO29365試験:ポライビー+BR療法とBR療法単独を比較した第Ⅰb/Ⅱ相試験(国際共同)4)
- JO40762/P-DRIVE試験:ポライビー+BR療法の有効性・安全性を検討した第Ⅱ相試験(日本人)
いずれもBR療法との併用で治療効果が確認されていますね。
副作用
10%以上に認められる副作用として、悪心(22.6%)、便秘(17.6%)、下痢(17.1%)、食欲減退、疲労(19.9%)などがあります。
その他、重大な副作用としては、
- 骨髄抑制(49.2%)
- 感染症(20.3%)
- 末梢性ニューロパチー(34.5%)
- Infusion reaction(6.5%)
- 腫瘍崩壊症候群(0.7%)
- 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
- 肝機能障害(6.8%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2021年5月19日)の薬価は以下の通りです。
- ポライビー点滴静注用30mg:298,825円
- ポライビー点滴静注用140mg:1,364,330円
算定根拠については以下をご覧ください。
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【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2021年5月19日)
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まとめ・あとがき
ポライビーはこんな薬
- ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)
- CD79bを選択的に認識するポラツズマブに抗がん剤のMMAEを結合
- 初回治療ではR-CHP療法と併用して使用する
- 再発難治例ではBR療法と併用して使用する
DLBCLの初回治療はR-CHOP療法以降が登場して以降、20年にわたり新しい治療法が登場してきませんでした。
近年、DLBCLでは、CAR-T細胞療法やポライビー等、新規薬剤の開発も盛んですので、治療選択肢が広がることは朗報ではないでしょうか。
以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の作用機序等について解説しました!
引用文献・資料等
- がん情報サービス|びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
- POLARIX試験(初回治療):N Engl J Med 2022; 386:351-363
- GO29365試験(再発難治例):J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38(2):155-165.
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