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ベスポンサ(イノツズマブオゾガマイシン)の作用機序【急性リンパ性白血病】

2024年3月26日ベスポンサ点滴静注用1mg(一般名:イノツズマブオゾガマイシン)の「再発又は難治性のCD22陽性の急性リンパ性白血病」に対して1歳以上の小児用量を追加することが承認されました!

 

ベスポンサは2018年1月19日に承認された薬剤ですが、これまでは成人の使用に限られていました。

 

本日は急性リンパ性白血病とベスポンサ(イノツズマブオゾガマイシン)の作用機序についてご紹介します☆

 

急性リンパ性白血病

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球、赤血球、リンパ球等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

急性リンパ性白血病は、白血球の中でも「リンパ球」が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。

この腫瘍化したリンパ球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面には「CD22」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

急性リンパ性白血病の治療

基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。

1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後も1~2年程、化学療法(地固め/維持化学療法)を継続していきます。

そしてその後も完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。

ただし、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます。

また、一度完全寛解が得られたとしても、約半数の患者さんは再発してしまいます。

このような抵抗性・再発の患者さんに対して有望な治療法はありませんでした。

ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン)の構造

ベスポンサは「抗体(イノツズマブ)+抗がん剤(オゾガマイシン)」で成り立っている薬剤です。

イノツズマブは「CD22」を特異的に認識する“モノクローナル抗体”で、これにオゾガマイシンと呼ばれるカリケアマイシン誘導体の“抗がん剤”が結合しています。

オゾガマイシンは強力なDNA障害作用を持つ抗がん剤ですが、そのまま体内に投与されると、正常細胞も傷つけてしまうため、副作用が強く発現してしまいます。

 

そこで、白血病細胞を特異的に認識する抗体であるイノツズマブに、抗がん剤のオゾガマイシンを結合させることで、抗がん剤が白血病細胞のみに作用するよう工夫した薬剤がベスポンサです!

イノツズマブは、いわゆる「薬の運び屋」みたいなイメージですね♪

 

ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン)の作用機序

まず、ベスポンサは白血病細胞表面にある「CD22」を認識して結合します。

その後、ベスポンサは白血病細胞内に取り込まれ、抗がん剤のオゾガマイシンが遊離されます。

そしてオゾガマイシンは核内のDNAに結合し、強力なDNA障害作用によって、白血病細胞を死滅させるといった作用機序です!

 

難治・再発の急性リンパ性白血病では、有望な治療がありませんでしたので、ベスポンサによって治療選択肢が増えたことは朗報かと思います^^

 

ただし、副作用として静脈閉塞性肝疾患(VOD)/類洞閉塞症候群(SOS)等の肝障害より死亡に至った例も報告されていますので、十分注意が必要です。

 

薬価

収載時(2018年4月18日)の薬価は以下の通りです。

  • 1瓶 1,307,092円

 

類薬

抗体に抗がん剤を結合したような医薬品を「抗体薬物複合体:Antibody drug conjugate(ADC)」と呼んでいます。

ベスポンサと同様にADCの構造をもつ薬剤としてマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、マイロターグは「再発又は難治性のCD33陽性の急性骨髄性白血病」に用いる薬剤です。

血液
マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】

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その他にはエンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)などもありますね。以下の記事でまとめています。

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】

続きを見る

 

以上、本日は急性リンパ性白血病とベスポンサについてご紹介いたしました♪

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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