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2021年1月22日、「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新規のALKチロシンキナーゼ阻害薬のアルンブリグ(ブリグチニブ)が承認されました!
武田薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アルンブリグ錠30mg/90mg |
一般名 | ブリグチニブ |
製品名の由来 | Alk+LUNg+BRIGatinib |
製造販売 | 武田薬品工業(株) |
効能・効果 | ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
用法・用量 | 通常、成人にはブリグチニブとして、1日1回90mg を7日間経口投与する。 その後、1日1回180mg を経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 30mg:4,200.50円 90mg:11,598.00円 |
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの一次治療ではアレセンサ(一般名:アレクチニブ)やザーコリ(一般名:クリゾチニブ)が使用されますが、アルンブリグも一次治療として使用可能です。
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アレセンサ(アレクチニブ)の作用機序【ALK陽性の肺がん・ALCL】
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今回は非小細胞肺がんとアルンブリグ(ブリグチニブ)の作用機序、エビデンス等について解説していきます。
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は非扁平上皮がんを中心にご紹介します。扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
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非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 |
|
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
上記のうち、最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
また、ALK融合遺伝子陽性は約2~5%とされ、推定患者数は1600~3900人と少数です。
一次化学療法ではアレセンサ、ジカディア、ザーコリが使用可能ですが、今回ご紹介するアルンブリグも一次化学療法として使用可能となります。
一次化学療法で耐性が生じた場合、ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)が使用可能ですね。
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ローブレナ(ロルラチニブ)の作用機序と副作用【ALK陽性の肺がん】
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ALK融合遺伝子とがんの増殖メカニズム
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞は増殖因子の結合する受容体を持っています。
受容体を構成する遺伝子の1つに「ALK遺伝子」が知られていますが、正常なALK遺伝子を持つ受容体では、増殖因子が結合することで、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、増殖因子が存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
しかし、非小細胞肺がんの約2~5%の患者さんでは、ALK遺伝子と別の遺伝子が入れ替わって融合してしまうことが知られています。
融合してしまった遺伝子のことを「ALK融合遺伝子」と呼んでおり、これを元に「ALK融合タンパク」が合成されます。
ALK融合タンパクは、増殖因子が存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。
そのため、常にがん細胞は増殖が活性化されている状態です。
アルンブリグ(ブリグチニブ)の作用機序
アルンブリグはALK融合遺伝子から合成されたALK融合タンパクを特異的に阻害する薬剤です!
ALK融合タンパクを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。
ALK融合タンパクは、がん細胞にしか存在していないため、アルンブリグは正常細胞には影響を及ぼしにくいといった特徴があります。
エビデンス紹介:ALTA試験、J-ALTA試験、ALTA-1L試験
根拠となった臨床試験は以下です。
- ALTA試験:ザーコリ抵抗性のALK融合遺伝子陽性の患者さんを対象とした海外第Ⅱ相試験2)
- J-ALTA試験:アレセンサもしくはアレセンサ・ザーコリ抵抗性のALK融合遺伝子陽性の患者さんを対象とした国内第Ⅱ相試験3)
代表としてALTA試験についてご紹介します。2)
本試験はザーコリ抵抗性のALK融合遺伝子陽性の患者さんを対象に、アルンブリグ90mg投与群とアルンブリグ180mg投与(最初の7日間は90mg)群を検討した海外第Ⅱ相臨床試験です。
主要評価項目は「奏効率」とされ、結果は以下の通りでした。
アルンブリグ 90mg投与群 |
アルンブリグ 180mg投与群 |
|
奏効率* | 45% | 54% |
PFS中央値† | 9.2か月 | 12.9か月 |
HR=0.55 (95%CI:0.35-0.86) |
*奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
†無増悪生存期間(PFS):がんが増殖(増悪)せずに生存している期間
その他、アルンブリグは初回治療(一次化学療法)でもザーコリと直接比較して良好な成績が発表されています(ALTA-1L試験)4)ので、一次治療から使用も可能です。
用法・用量
通常、成人にはブリグチニブとして、1日1回90mg を7日間経口投与します。その後、1日1回180mgを経口投与します。
患者さんの状態により適宜減量
副作用
20%以上に認められる副作用として、高血圧、下痢(40.4%)、悪心、CK上昇(54.8%)、発疹、リパーゼ上昇、アミラーゼ上昇などが報告されています。
また、重大な副作用としては、
- 間質性肺疾患(6.3%)
- 膵炎(頻度不明)
- 肝機能障害(32.2%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2021年4月21日)の薬価は以下の通りです。
- アルンブリグ錠30mg:4,200.50円
- アルンブリグ錠90mg:11,598.00円
算定方法については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2021年4月21日)
続きを見る
まとめ・あとがき
アルンブリグはこんな薬
- ALKチロシンキナーゼを選択的に阻害する
- ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの一次治療で使用可能
これまで国内では4製品のALK阻害薬が承認・販売されていましたので、アルンブリグが5製品目です。
- アレセンサ(一般名:アレクチニブ)
- ジカディア(一般名:セリチニブ)
- ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)
- ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)
以上、今回は非小細胞肺がんとアルンブリグ(ブリグチニブ)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました。
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2023年版
- ALTA試験:J Clin Oncol. 2017 Aug 1;35(22):2490-2498.
- J-ALTA試験:J Thorac Oncol. 2020 Nov 25;S1556-0864(20)31026-1.
- ALTA-1L試験:N Engl J Med 2018; 379:2027-2039
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