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2023年2月24日、イムブルビカカプセル140mg(一般名:イブルチニブ)の「マントル細胞リンパ腫」について、初回治療から使用可能とする適応拡大が承認されました。
現在のイムブルビカの効能・効果は以下の通りです。
- 慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫- 造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)
- 原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫
今回は代表疾患として慢性リンパ性白血病とイムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序、そして根拠となったエビデンスについてご紹介します。
原発性マクログロブリン血症(WM)とリンパ形質細胞リンパ腫(LPL)については、同様の作用機序を有するベレキシブル(チラブルチニブ)の記事をご参考くださいませ。
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ベレキシブル(チラブルチニブ)の作用機序【悪性リンパ腫】
続きを見る
マントル細胞リンパ腫(MCL)については、同様の作用機序を有し、イムブルビカで治療抵抗性が認められても効果が期待できるジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の記事をご参照ください♪
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ジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序【MCL】
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慢性リンパ性白血病とは
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球(B細胞やT細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
慢性リンパ性白血病は、リンパ球のうち「成熟した小型のB細胞」が腫瘍化する疾患です。
腫瘍化したB細胞が末梢血や骨髄に存在している時には「慢性リンパ性白血病」と呼ばれ、リンパ節にあるときは「小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれます。
慢性リンパ性白血病の発生頻度は日本では非常に少なく、白血病全体の約1~2%で約2,000人と推定されています。
また、慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。
慢性リンパ性白血病の症状と治療
慢性リンパ性白血病は進行が緩やかで無症状であることが多く、この場合経過観察が基本です。
進行すると倦怠感、寝汗を伴う微熱、貧血、血小板減少が認められることもあります。
症状がある場合、抗がん剤(フルダラビンやシクロホスファミド)と適宜リツキサン(一般名:リツキシマブ)を併用した治療が行われます。
今回ご紹介するイムブルビカは慢性リンパ性白血病の初回治療として使用する薬剤です。
それではイムブルビカの関与する「B細胞受容体(BCR)」と「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」についてご紹介します。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)とは
慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞(B細胞)の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。
BCRに増殖因子が結合すると、そのシグナル伝達が細胞質内に伝えられ、途中に「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」を経由して核内に伝わります。
核内までシグナル伝達が伝わると腫瘍細胞の増殖が促進され、活性化・症状悪化が引き起こされると考えられます。
イムブルビカ(一般名:イブルチニブ)の作用機序
イムブルビカは腫瘍細胞の「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」を選択的に阻害する薬剤です。
BTKを阻害することでシグナル伝達が阻害され、結果的に腫瘍細胞の増殖を抑制することが可能となります。
これまでは、初回治療で抵抗性のあった患者さんにしかイムブルビカは使用できませんでしたが、今後は初回治療から使用が可能になります。
エビデンス紹介(RESONATE-2試験)
根拠となった臨床試験は、未治療の慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫患者さんを対象に、クロラムブシル(国内未承認)とイムブルビカを直接比較する第Ⅲ相臨床試験(RESONATE-2試験)です。1)
本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
試験名 | RESONATE-2試験 | |
対照群 | クロラムブシル群 | イムブルビカ群 |
PFS中央値* | 18.4か月 | 未到達 |
HR=0.16, P<0.001 | ||
2年時点の生存率 | 85% | 98% |
HR=0.16, P=0.001 | ||
奏効率 | 35% | 86% |
P<0.001 |
*治療を開始してから、がんが増悪するまでの期間
クロラムブシルと比較してイムブルビカの方が治療効果が高かったことが示されています。
副作用
主な副作用として、倦怠感、悪心・嘔吐、下痢、咳、好中球減少症、貧血、発疹などが報告されています。
まとめ・あとがき
イムブルビカはこんな薬
- ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を選択的に阻害する
- 慢性リンパ性白血病の初回治療から使用可能
慢性リンパ性白血病は国内の患者さんが少ないことから、なかなか新薬の開発が進まない領域でした。
これまでイムブルビカは初回治療に抵抗のある患者さんにしか使用できませんでしたが、今後は初回治療からの使用が可能となります。
治療選択肢が限られている疾患のため、選択肢が広がることは朗報ではないでしょうか。
以上、今回は慢性リンパ性白血病とイムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- RESONATE-2試験:N Engl J Med. 2015 Dec 17;373(25):2425-37
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