11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序【MCL】

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2024年5月9日、厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、「他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」を対象疾患とするジャイパーカ錠(ピルトブルチニブ)の承認が了承されました!

現在では未承認のため、ご注意ください。

基本情報

製品名 ジャイパーカ錠50mg/100mg
一般名 ピルトブルチニブ
製品名の由来
製薬会社 製造販売:日本イーライリリー(株)
販売提携:日本新薬(株)
効能・効果 他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫
用法・用量 通常、成人にはピルトブルチニブとして200mgを1日1回経口投与する。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価
発売日

 

木元 貴祥
ジャイパーカは新規のBTK阻害薬に分類されています。

 

既に、マントル細胞リンパ腫や他疾患において、以下のBTK阻害薬が承認・販売されていますね。

 

ジャイパーカは、既存のBTK阻害薬と異なる結合様式で阻害することから、既存薬で耐性が生じた際にも効果が期待されていますよ~。

 

今回は悪性リンパ腫の中でも「マントル細胞リンパ腫(MCL)」とジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序・エビデンス等について解説していきます。

 

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悪性リンパ腫とは

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介するマントル細胞リンパ腫(MCL:mantle cell lymphoma)は、NHLの一種です。

 

また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、MCLは「低悪性度」のアグレッシブ分類とされています。1)

 

そしてMCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面には「B細胞受容体(BCR)」を発現していることが知られています。

 

MCLと治療

MCLは発見時の進行度(限局期と進行期)に応じて、治療方針がそれぞれ異なります。1)

 

限局期(Ⅰ/Ⅱ期)では、放射線療法を基本とし、化学療法と併用することもあります。

 

また、進行期(Ⅱ期の一部/Ⅲ/Ⅳ期)では、大量化学療法+自家造血幹細胞移植に耐えられると判断される若年性の場合、それらが治療選択肢です。

この場合、リツキシマブと大量シタラビン療法を含んだ導入療法を施行し、奏効例に自家移植併用大量化学療法による地固め療法とリツキシマブ維持療法を実施することが推奨されています。1)

 

しかし、上記のような治療に耐えられない場合(例:高齢)、以下のような移植を伴わない治療法が推奨されています。

 

最近では、65歳以上のMCLに対して、BR療法にイムブルビカ(イブルチニブ)を上乗せすることで、より治療効果が期待できることが示されています(2023年2月24日適応拡大)。

血液
イムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序と副作用【CLL】

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しかし、上記の治療に抵抗・再発が認められた場合、その後の治療選択肢は限られていました。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するジャイパーカは、再発・難治性のMCLに対して治療効果が期待されています!

 

ジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序

リンパ腫細胞の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。

BCRに増殖因子が結合すると、そのシグナル伝達が細胞質内に伝えられ、途中に「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」を経由して核内に伝わります。

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)とは

 

核内までシグナル伝達が伝わると腫瘍細胞の増殖が促進され、活性化・症状悪化が引き起こされると考えられますね。

 

ジャイパーカは腫瘍細胞のBTKを選択的に阻害(可逆的)する薬剤です。

BTKを阻害することでシグナル伝達が阻害され、結果的に腫瘍細胞の増殖を抑制することが可能となります。

ジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序:可逆的BTK阻害薬

 

既存のBTK阻害薬との違い

ジャイパーカは、既存のBTK阻害薬とBTKへの結合部位が若干異なります。

既存のBTK阻害薬は、BTKのATPポケットのうち、C481と共有結合をすることで非可逆的に阻害します。2)

 

一方、ジャイパーカはC481に依存することなく可逆的に阻害すると考えられています。2)

ジャイパーカと既存BTK阻害薬(イブルチニブなど)との阻害部位の違い

 

BTK阻害薬では、しばしばC481変異によって耐性を生じることがありますが、ジャイパーカはそのような腫瘍細胞であっても効果が期待されています。

 

エビデンス紹介:BRUIN試験

根拠となった臨床試験(BRUIN試験)をご紹介します。3)

本試験は、既存薬で不耐・不応となった慢性リンパ性白血病や非ホジキンリンパ腫(MCLを含む)の患者さんを対象に、ジャイパーカの安全性や有効性を確認する国際共同第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験です(日本人含む)。

慢性リンパ性白血病や、MCL以外の非ホジキンリンパ腫については、国内未承認です。

 

既存のBTK阻害剤による治療歴を有するMCL患者さん(n=52)を対象とした解析において、奏効割合は52%(95%CI:38-66%)という結果でした。

 

木元 貴祥
生存期間等の長期成績はまだ未公表のため、今後の結果も気になりますね。

 

用法・用量

通常、成人にはピルトブルチニブとして200mgを1日1回経口投与します。

患者の状態により適宜減量

 

木元 貴祥
海外の情報によれば、食事の影響はな無いとのことでした。

 

副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験では、疲労、下痢、呼吸困難などが主な副作用として報告されていました。

 

海外では、重大な副作用として、

  • 感染症
  • 出血
  • 骨髄機能抑制

などが挙げられていますので、特に注意が必要です。そのため、抗血栓薬との併用や手術前後3~7日に投与する場合には、リスク・ベネフィットをよく考慮することとされていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ジャイパーカはこんな薬

  • 新規のBTK阻害薬で、既存薬とは結合部位が異なる
  • 既存のBTK阻害薬で耐性があった場合にも効果が期待されている
  • 感染症や出血に注意が必要

 

近年、MCLはイムブルビカ(イブルチニブ)などの新規治療薬が登場しましたが、まだまだ治療選択肢が限られている状況です。

 

木元 貴祥
そんな中、既存のBTK阻害薬とは異なる結合様式のジャイパーカは期待できるのではないでしょうか。

 

今後はMCLの初回治療や、治療抵抗性の慢性リンパ性白血病への適応拡大も期待できそうです。既に海外では慢性リンパ性白血病に対して適応を有していますからね~♪

 

以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「マントル細胞リンパ腫(MCL)」とジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序・エビデンス等について解説しました!

 

既存のBTK阻害薬についても、興味があればぜひご確認くださいませ。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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