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ファビハルタ(イプタコパン)の作用機序・特徴【PNH】

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2024年6月24日、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を対象疾患とするファビハルタカプセル(イプタコパン)が承認されました!

ノバルティス ファーマ|ニュースリリース

基本情報

製品名 ファビハルタカプセル200mg
一般名 イプタコパン塩酸塩水和物
製品名の由来 補体B因子阻害剤(fab:factor B inhibitor)と
補体第二経路(alta:alternative complement pathway)の強い関係を表している
製造販売 ノバルティス ファーマ(株)
効能・効果 発作性夜間ヘモグロビン尿症
用法・用量 通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する。
収載時の薬価
発売日

<効能又は効果に関連する注意>

  • 補体(C5)阻害剤による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない場合に投与すること。
  • 本剤は、補体B因子に結合して第二経路を阻害するため、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による感染症を発症しやすくなる可能性があることから、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤投与の是非を慎重に検討し、適切な対象患者に使用すること。また、本剤投与に際しては、髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種の場合又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与開始の少なくとも2週間前までにそれらのワクチンを接種すること。必要に応じて、本剤投与中のワクチンの追加接種を考慮すること。

 

ファビハルタは、国内初のB因子阻害薬ですね。

 

また、発作性夜間ヘモグロビン尿症では初の単剤かつ経口で使用可能です!

 

今回は発作性夜間ヘモグロビン尿症と共に、ファビハルタ(イプタコパン)の作用機序、エビデンス等について解説します。

 

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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とは

発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は稀な疾患(患者さん数は約400人)ですが、重篤化することから難病に指定されています。1)

 

後天的な原因で酸素運搬等の役割を担う赤血球が壊される(溶血)ことで発症すると考えられており、主な症状としては以下があります。

  • 早朝の赤褐色尿(ヘモグロビン尿)
  • 嚥下障害
  • 男性機能不全
  • 腹痛
  • 疲労

 

重症化すると以下のような重度の合併症を呈してしまう2)ため、早期の発見・治療が重要です。

  • 血栓症:主要な死因の一つ
  • 慢性腎臓病:2/3の患者さんが合併する
  • 肺高血圧症

 

このように赤血球の破壊(溶血)が常に起こることで様々な症状・合併症を呈してしまうのが発作性夜間ヘモグロビン尿症ですね。

 

木元 貴祥
では、次に赤血球の溶血が引き起こされる原因について解説します。

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因

通常、赤血球の表面には「グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)」と呼ばれるタンパク質が存在しています。

 

これは自己の免疫システム(次項の補体活性化経路)から身を守るためのもので、通常状態でしたら赤血球は自己免疫の攻撃を受けません。

 

しかし、PNHでは後天的な原因によってGPIが欠損してしまっていることが知られています。1)

このため赤血球は常に補体活性化(自己免疫の攻撃)を受けてしまい、常に溶血が引き起こされてしまっています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)と赤血球の溶血

 

木元 貴祥
詳しく書くと・・・GPIをコードしているPIGA遺伝子の変異によってGPIが欠損してしまうらしいです。

 

治療

根治的な治療法としては造血幹細胞移植しかありませんが、重篤な骨髄不全やコントロール困難で致命的な血栓症に対して行われます。2)

 

通常、中等度から重度の溶血症状に対しては、以下の抗補体C5抗体薬による治療が基本です。3)

 

今回ご紹介するファビハルタは、

  • 抗補体C5抗体薬による治療にも関わらず貧血症状を呈する場合や、
  • 抗補体C5抗体薬による治療歴を有さない場合

にも単剤で治療効果が認められています!

 

木元 貴祥
しかしながら、添付文書では補体C5阻害剤による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない場合にのみ使用可能です。

 

それではここから、ファビハルタなどが関連する補体活性化経路についてみていきましょう。

 

赤血球の溶血と補体活性化経路

補体(Complement)とは、生体が病原菌などを排除する際に、抗体抗原反応などを補助する免疫システムです。

補体にはいくつかの種類があり、C1~C9で表されます。

 

詳細は割愛しますが、免疫が活性化する際に、「レクチン経路」、「古典的経路」、「第二経路」と呼ばれる経路によって、補体の「C3」が産生・活性化されます。第二経路で活性化される際には、「B因子」と呼ばれる因子が関係しています。

 

続いて、補体C3は「C3a」と「C3b」に分解され、C3bが補体C5を「C5a」と「C5b」に分解します。

 

C3bの一部は、B因子によってC3に戻り、この活性化サイクルを繰り返すといった特徴もあります。

 

木元 貴祥
補体の過剰な炎症反応によって赤血球が破壊されているイメージですね。

 

PNHでは、補体C5bによる赤血球の溶血が過剰に引き起こっているため、この働きを阻害する抗補体C5抗体薬が使用されます。

ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序:ソリリスとの違い【PNH】

続きを見る

 

抗補体C5抗体薬で効果不十分な場合、エムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)やボイデヤ錠(ダニコパン)などが使用されますが、いずれも抗補体C5抗体薬と併用します。

 

ファビハルタ(イプタコパン)の作用機序

ファビハルタは補体C3の活性化に関与しているB因子を選択的に阻害する薬剤です。4)

ファビハルタ(イプタコパン)の作用機序:B因子を阻害する経口薬

 

抗補体C5抗体薬よりも、より上位の部分で活性化を阻害していますね。

 

エビデンス紹介:PEGASUS試験

根拠となった主な臨床試験は以下の2つの第Ⅲ相臨床試験です。5)

  • APPLY-PNH試験:抗C5抗体薬による前治療にも関わらず貧血症状が残存しているPNH患者さんを対象に、抗C5抗体薬継続群とファビハルタ単剤群を比較(無作為化比較試験)
  • APPOINT-PNH試験:補体阻害薬による治療歴のない患者さんを対象に、ファビハルタ単剤の有効性と安全性を検討(単群試験)

 

代表として、APPLY-PNH試験をご紹介します。

本試験の主要評価項目は24週時点における「ベースラインから2g/dL以上のヘモグロビン値増加を達成した割合」と「輸血を必要とせずに12 g/dL以上のヘモグロビン値を達成した割合」とされ、結果は以下の通りです。

抗C5抗体薬継続群
(n=35)
ファビハルタ単剤群
(n=60)
ベースラインから2g/dL以上の
ヘモグロビン値増加を達成した割合
0例(推定値:2%) 51例(推定値:82%)
P<0.001
輸血を必要とせずに12 g/dL以上の
ヘモグロビン値を達成した割合
0例(推定値:2%) 42例(推定値:69%)
P<0.001

 

木元 貴祥
いずれの評価項目もファビハルタ群で有意に改善していますね!

 

副作用

5%以上に認められている副作用として、血小板数減少、頭痛などが報告されています。

 

重大な副作用として、

  • 髄膜炎菌感染症(頻度不明)
  • 重篤な感染症(頻度不明)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

木元 貴祥
重大な副作用は補体C5阻害薬と同様に注意が必要ですね。

 

用法・用量

通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与します。

 

なお、補体C5阻害剤から本剤に切り替える際は、補体C5阻害剤の中止に伴う溶血のリスクを低減するため、前治療薬との投与間隔を考慮することとされています。

 

木元 貴祥
前治療の抗体薬の種類に応じて期間が異なるため、注意が必要ですね。現時点ではピアスカイ(クロバリマブ)に関する記載はありません。

 

収載時の薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ファビハルタはこんな薬

  • 国内初のB因子阻害薬
  • B因子を阻害することで、補体C3の活性化を抑制する
  • 単剤かつ経口で治療可能
  • 1日2回経口投与

 

近年、抗C5抗体薬がいくつか登場しました。以下の記事でまとめています。

ピアスカイ(クロバリマブ)の作用機序【PNH】

続きを見る

 

また、新規の作用機序を有する新薬も登場してきています。例えば、補体C3を阻害するPEG化ペプチド製剤のエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)や、補体D因子を阻害するボイデヤ錠(ダニコパン)などです。

 

木元 貴祥
ファビハルタも新規作用機序を有しているため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回は難病の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とファビハルタ(イプタコパン)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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