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2024年6月24日、「各種感染症」を対象疾患とするザビセフタ配合点滴静注用(セフタジジム/アビバクタム)が承認されました!
ファイザー|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ザビセフタ配合点滴静注用 |
一般名 | セフタジジム水和物・アビバクタムナトリウム |
製品名の由来 | β-ラクタマーゼ阻害剤のアビバクタム(Avibactam)が セフタジジム(Ceftazidime)に加わることを表現して命名された。 |
製造販売 | ファイザー(株) |
効能・効果 | 〈適応菌種〉 本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、 エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、 インフルエンザ菌、緑膿菌 〈適応症〉 敗血症、肺炎、膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍 |
用法・用量 | 通常、成人には1回2.5g(アビバクタムとして0.5 g/セフタジジムとして2g)を 1日3回2時間かけて点滴静注する。 なお、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍に対しては、メトロニダゾール注射液と併用すること。 |
収載時の薬価 | 16,111円 |
発売日 | 2024年11月12日(HP) |
ザビセフタは、既存の第三世代セフェム系抗生物質のセフタジジム(製品名:モダシン静注用)に、新規のβ-ラクタマーゼ阻害薬のアビバクタムを配合した注射剤です。
今回は細菌とザビセフタ配合点滴静注の作用機序についてご紹介します。
細菌の構造と分類(グラム染色)
細菌はヒトを含む真核生物と比較して非常に単純な構造から成り立っています。
主には、鞭毛、莢膜、細胞壁、細胞膜、細胞質などから構成されており、DNAは核膜に覆われていません。(真核生物のDNAは核膜に覆われている)
特に細胞壁の合成では「ペニシリン結合タンパク質(PBP)」が関与しており、細菌の細胞壁内に存在していますが、これはヒトには存在していません。
また、細菌を分類する手法としてグラム染色が知られており、以下に大別されます。
- グラム陽性菌(例:黄色ブドウ球菌、MRSA)
- グラム陰性菌(例:大腸菌)
グラム陽性菌では細胞壁が厚いため色素が抜けずに染色されたままになります。
一方、グラム陰性菌は細胞壁が薄いため、染色しても色素が抜けてしまいます。
臨床的にもグラム陽性か陰性かによって薬剤の感受性や耐性機序等が異なるため、重要な分類法となります。
セフェム系抗菌薬と耐性機序(β-ラクタマーゼ)
細菌感染に使用する代表的な抗菌薬(抗生物質)としてセフェム系抗菌薬があります。
現在使用されているセフェム系抗菌薬には第一世代から第四世代まであり、それぞれグラム陽性/陰性菌に対する効きやすさが異なっています。
- グラム陽性菌:第一世代>第二世代>第三世代
- グラム陰性菌:第三世代>第二世代>第一世代
第四世代はグラム陽性/陰性問わず、幅広い抗菌スペクトラムを有しています。
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ザバクサ配合点滴静注(セフトロザン/タゾバクタム)の作用機序と副作用【細菌感染】
続きを見る
今回ご紹介するザビセフタ配合点滴静注の有効成分であるセフタジジムは第三世代のセフェム系抗菌薬に分類されています。
また、セフェム系抗菌薬の耐性に関わる因子として「β-ラクタマーゼ」が知られています。
これは細菌が産生する物質で、ペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬を分解して活性を低下させてしまいます(耐性の獲得)。
ザビセフタ配合点滴静注の作用機序と特徴
ザビセフタ配合点滴静注は以下を配合した薬剤です。
- セフタジジム:第三世代のセフェム系抗菌薬
- アビバクタム:β-ラクタマーゼ阻害薬
セフェム系抗菌薬のセフタジジムは細菌の細胞壁合成に関与しているペニシリン結合タンパク質(PBP)を阻害することで細胞壁合成を阻害します。
またセフェム系抗菌薬の耐性に関与しているβ-ラクタマーゼをアビバクタムが阻害します。
以上より、β-ラクタマーゼを産生している細菌に対してもセフタジジムの活性が維持されて抗菌作用を発揮すると考えられます。
β-ラクタマーゼのクラス
もう少し詳しい話をすると、β-ラクタマーゼの中にも主に3つのクラスがあります。
- クラスA:ESBL(Extended Spectrum β-lactamase:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)など
- クラスB:カルバペネマーゼ、メタロ-β-ラクタマーゼなど
- クラスC:AmpCなど
アビバクタムはクラスAとクラスC(および一部のクラスD)を阻害することが示されていますが、クラスBは阻害しません。1)
つまり、クラスBが原因の耐性菌に対しては効果が期待できませんので、注意が必要です。
エビデンス紹介:複雑性尿路感染症(RECAPTURE試験)
根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表として国際共同(日本は含まず)で実施された複雑性尿路感染症(cUTI)に対する第Ⅲ相臨床試験(RECAPTURE試験)について紹介します。2)
尿路感染症は時に生命の危機にもなりえる感染症ですし、院内感染では敗血症を合併して重篤化の恐れもあります。
耐性菌がしばしば問題となりますので、新規の抗菌薬の開発が望まれていました。
本試験は急性腎盂腎炎や複雑な下部尿路感染症を含むcUTIで入院した成人患者さんを対象に、フィニバックス(ドリペネム)とザビセフタ配合点滴静注の非劣性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は、「5日目における症状反応率*」および「TOC(無作為化後の21日から25日)時点における微生物学的治癒と症状反応率の組み合わせ」とされました。
試験群 | フィニバックス群 | ザビセフタ群 |
5日目における症状反応率 | 66.2% | 70.2% |
非劣性が証明 | ||
TOC時点における 微生物学的治癒と症状反応率の組み合わせ |
64.5% | 71.2% |
非劣性が証明 |
*症状反応率:頻度/切迫感/排尿困難/恥骨上の痛みとして定義
副作用
重大な副作用として、
- ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
- クロストリジウム・ディフィシレ大腸炎(0.16%)
- 急性腎障害等の重篤な腎障害(頻度不明)
- 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、溶血性貧血(いずれも頻度不明)
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)
- 間質性肺炎、PIE症候群(いずれも頻度不明)
- 肝炎、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
- 精神神経症状(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には1回2.5g(アビバクタムとして0.5 g/セフタジジムとして2g)を1日3回2時間かけて点滴静注します。
なお、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍に対しては、メトロニダゾール注射液と併用することとされています。
収載時の薬価
収載時(2024年8月15日)の薬価は以下の通りです。
- ザビセフタ配合点滴静注用:16,111円(1日薬価:48,333円)
算定根拠については、以下の記事で解説しています♪
-
【新薬:薬価収載】12製品(2024年8月15日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ザビセフタはこんな薬
- 第三世代セフェム系抗菌薬のセフタジジムとβ-ラクタマーゼ阻害薬のアビバクタムを配合
- アビバクタムは、クラスAとクラスC(および一部のクラスD)を阻害するものの、クラスBは阻害しない
最近では、厚労省がAMR対策の一環として新たに試行導入した「抗菌薬確保支援事業」によって迅速に承認されたフェトロージャ(セフィデロコル)もありましたね。
-
フェトロージャ(セフィデロコル)の作用機序【CRE】
続きを見る
ザビセフタは、AMR対策の新たな選択肢として期待できるのではないでしょうか。
以上、今回は細菌感染症とザビセフタ配合点滴静注(セフタジジム/アビバクタム)の作用機序についてご紹介しました!
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