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厚労省は以下を効能・効果とするシベクトロ錠200mg、同点滴静注用200mg(一般名:テジゾリドリン酸エステル)が2018年3月23日に承認されました!
<適応症>
深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染
<適応菌種>
テジゾリドに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
製薬会社
- 製造販売元(輸入):バイエル薬品(株)
- 販売元:MSD(株)
作用機序としてはザイボックス(一般名:リネゾリド)と同様、オキサゾリジノン系抗菌剤に分類されています。
今回はMRSAとシベクトロ(テジゾリド)の作用機序についてご紹介します。
MRSAとは
MRSAは「methicillin‐resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」のことを言います。
MRSAはメチシリンと呼ばれる抗菌剤(抗生物質)に耐性を示した黄色ブドウ球菌で、通常の抗菌剤が効きにくくなっています。
通常の黄色ブドウ球菌は我々の周りにありふれた細菌で、髪の毛・皮膚・鼻粘膜・口腔内・傷口によく存在しています。
黄色ブドウ球菌は非常に弱毒性の細菌のため、免疫力が通常のヒトでは感染しませんし、感染してもほとんど症状はなく、重篤化することもありません。
しかし、病院内など、免疫力の低下した患者さんが多くいらっしゃる場所では抗生物質の効きにくいMRSAの感染は、重症化しやすいため非常に問題となっています。
重症化してしまうと敗血症、髄膜炎、骨髄炎などを併発し、死の危険性もあります。
従って、まずはMRSAを発生させないための感染対策が重要です。
MRSAの感染対策
病院内でMRSAを発生させないため、医療従事者・患者さんには手洗い・うがい、アルコールによる手の消毒を徹底することが重要です。
また、病院側としても
- 院内清掃・換気を徹底する
- ベッドのシーツや布団を毎日交換する
- 汚染した医療器具はすぐに廃棄・消毒する
などの対策が大切です。
MRSAの治療
MRSAに使用する抗MRSA薬には以下の種類があります。
- グリコペプチド系薬:バンコマイシン、テイコプラニン
- アミノグリコシド系薬:アルベカシン
- オキサゾリジノン系薬:リネゾリド
- 環状リポペプチド系薬:ダプトマイシン
上記の薬剤はそれぞれMRSAの中でも適応症が異なりますので、適応症に応じて基本的には単剤で用いられます。
例えば、敗血症では全ての薬剤が適応を有していますが、骨髄炎ではバンコマイシンしか適応がありません。
今回ご紹介するシベクトロはオキサゾリジノン系薬に分類されています。
それではここからMRSA(細菌)のタンパク質合成についてご説明します。
MRSA(細菌)のタンパク質合成
細菌の細胞とヒトの細胞で大きく異なるのは細胞壁の有無です。
細菌では細胞壁を有していますが、ヒト細胞に細胞壁は存在しません。
また、MRSA(細菌)が増殖する際には、自身のタンパク質を合成する必要があります。
まず自身のDNAが「転写」というプロセスを経てmRNAが合成されます。
mRNAの情報を元に「翻訳」のプロセスを経てタンパク質が合成されます。
この翻訳のプロセスでは、「リボソーム」が重要な役割を担っています。
細菌のリボソームは、
50Sサブユニットと30Sサブユニットが合わさってリボソーム70Sを構成しています。
リボソーム70SがmRNAの遺伝情報を読み取ることでアミノ酸が繋がって、タンパク質が合成されていきます。
シベクトロ(一般名:テジゾリド)の作用機序
シベクトロはMRSAのリボソームの中でも50Sサブユニットを特異的に阻害する薬剤です。
50Sサブユニットと30Sサブユニットが合わさることができなくなるため翻訳が開始できず、MRSAのタンパク質合成を阻害すると考えられます。
シベクトロの用法・用量
シベクトロには錠剤と注射剤があります。
- 錠剤:テジゾリドとして200mgを1日1回経口投与します。
- 注射剤:テジゾリドとして200mgを1日1回1時間かけて点滴静注します。
緊急を要するMRSA感染ではまず注射剤による治療が優先されると思います。
症状が回復すれば錠剤による経口投与に切り替えることも可能です。
投与期間は7~14日間程ですが、症状や状態に応じて適宜医師の先生によって判断されます。
シベクトロの副作用
主な副作用として、悪心・嘔吐、膿瘍、頭痛、下痢・便秘などが報告されています。
MRSA(細菌)のリボソームはヒト細胞のリボソームとは異なっているため、副作用が発現しずらいと考えられます。(ヒト細胞にはシベクトロの作用する50Sが存在しません)
- 細菌:50S+30S=70S
- ヒト:60S+40S=80S
しかしながら、ヒトのミトコンドリアのリボソームは細菌と同じ70S(50S+30S)であることが知られています。
従って、オキサゾリジノン系抗菌剤はミトコンドリア毒性に注意する必要があります。
主なミトコンドリア毒性には、
- 骨髄抑制
- 末梢神経障害
- 視神経障害
- 乳酸アシドーシス
などがあります。
投与期間が長期に渡るとミトコンドリア毒性のリスクが高まるため注意が必要です。
ザイボックス(リネゾリド)との違い:エビデンス紹介
シベクトロと同じオキサゾリジノン系抗菌剤にはザイボックス(一般名:リネゾリド)があります。
ザイボックスは1日2回の投与ですが、シベクトロは1日1回の投与です。
国内の臨床試験ではシベクトロとザイボックスの治療効果は同程度であることが報告されています。1-2)
以下の表に微生物学的評価可能解析対象集団における臨床効果(治癒率)をまとめています。
試験群 | シベクトロ 1日1回 |
ザイボックス 1日2回 |
皮膚・軟部組織感染症 | 86.2% | 80.0% |
深在性皮膚感染症 | 80.0% | 100% |
慢性膿皮症 | 100% | 0% |
外傷・熱傷及び手術等の 二次感染 |
80.0% | 85.7% |
びらん・潰瘍の 二次感染 |
100% | 0% |
また、ミトコンドリア毒性のうち骨髄抑制はシベクトロ(2.4%)がザイボックス(22.0%)と比較して低頻度であったと報告されています。
その他、適応症が異なっており、下表の通りです。
適応症 | ザイボックス | シベクトロ |
肺炎・肺膿瘍・膿胸 | ○ | - |
敗血症 | ○ | - |
深在性皮膚感染症、慢性膿皮症 | ○ | ○ |
外傷・熱傷および手術創の二次感染 | ○ | ○ |
びらん・潰瘍の二次感染 | - | ○ |
シベクトロの薬価
収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の予定です。
- 200mg 1錠:20,801.40円
- 200mg1瓶:28,084円
薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。
あとがき
MRSAはまずは発生させないことが重要ですのため、病院内の感染予防が大切です。
これまでオキサゾリジノン系抗菌剤にはザイボックスしかありませんでしたが、1日2回の投与が必要でした。
シベクトロは1日1回の投与でザイボックスと同程度の有効性が期待されています。
以上、今回はMRSAに使用する新規のオキサゾリジノン系抗菌剤であるシベクトロ(テジゾリド)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- J Infect Chemother. 2018 Jun;24(6):434-442.
- シベクトロ 添付文書
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