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ジーンプラバ(ベズロトクスマブ)の作用機序と副作用【クロストリジウム・ディフィシル感染症】

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厚労省は2017年9月27日、「クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制」を効能・効果とする新有効性含有医薬品のジーンプラバ点滴静注625mg(一般名:ベズロトクスマブ(遺伝子組換え))を承認したと発表がありました!

製薬会社

  • 製造販売元:MSD(株)

 

2017年11月22日に薬価収載、2017年12月8日に発売されています。

 

本日はクロストリジウム・ディフィシル感染症とジーンプラバ(ベズロトクスマブ)の作用機序、根拠となったエビデンスについてご紹介します☆

 

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)とは

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile、C. difficile)は芽胞を形成する嫌気性のグラム陽性桿菌で、外毒素として「トキシンA」と「トキシンB」を産生するすることが知られています。

この菌によって引き起こされる感染症が「クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI:Clostridium difficile infection)」です。

 

感染の主な原因としては、抗生物質の不適正な使用などがあります。

抗生物質によって正常な腸内細菌叢が乱れ、腸の免疫機能が低下してしまう結果、CDIが誘発されてしまいます。

CDIの主な症状には、下痢、発熱、腹痛などがあり、偽膜性大腸炎、巨大結腸症を引き起こすこともあります。

また、場合によっては致死的な重症に至ることもあります。

 

CDIの治療と再発

CDIの治療は、重症度に応じてメトロニダゾールバンコマイシンが使用されます。

ただし、これらの薬剤を使用したとしても、何度か再発を繰り返すこともしばしばあります。

海外の報告では、CDI を発症した患者さんのうち約25%が再発し、そのうち45~65%が2回目以降の再発を繰り返すことが知られています。

1度でも再発すると、その後の再発率は大きく増加し、特に重症な基礎疾患免疫力が低下している患者さんは再発しやすいと言われています。

 

再発のメカニズムとトキシンB

クロストリジウム・ディフィシルが産生する外毒素であるトキシンAとトキシンBがヒトの腸管細胞内に取り込まれることで細胞が障害され、腸管上皮のバリアが破壊されます。

 

外毒素の中でも、特に「トキシンB」が病原性に重要な役割を担っていることが知られており、トキシンBによって腸管上皮細胞が傷害され、その破綻部位からCDIの再発が引き起こされます。

このトキシンBに注目したのがジーンプラバです!

 

ジーンプラバ点滴静注(一般名:ベズロトクスマブ)の作用機序

ジーンプラバは「トキシンB」を特異的に認識して中和するモノクローナル抗体(中和抗体)製剤です!

CDIの再発や腸管細胞障害に関与するトキシンBの働きを抑制することで、CDIの再発を抑えることが期待できます^^

なお、ジーンプラバはCDIの「再発リスクの高い患者さん」が投与の対象です。

 

また、ジーンプラバ自身には抗菌活性が無いため、メトロニダゾールやバンコマイシンなどのCDIの抗菌薬治療と併用して使用します。

用法・用量は「10mg/kgを60分かけて単回点滴静注する」とされていますので、基本的には1度投与して治療は完了です。

 

エビデンス紹介(MODIFY Ⅰ試験、MODIFY Ⅱ試験)

根拠となった臨床試験は2つあります(MODIFY Ⅰ試験、MODIFY Ⅱ試験)1)

 

両試験は抗菌薬(メトロニダゾール、バンコマイシン、フィダキソマイシン)によるCDIに対する治療施行下の患者さんを対象に、CDI再発抑制効果を確認するためにジーンプラバとプラセボを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。1)

MODIFY Ⅱ試験には日本人患者さんも含まれています。

 

両試験の主要評価項目は「投与後12週までのCDI再発率」です。

試験名 MODIFY Ⅰ試験 MODIFY Ⅱ試験
試験群 ジーンプラバ群 プラセボ群 ジーンプラバ群 プラセボ群
投与後12週までの
CDI再発率
17% 28% 16% 26%
プラセボとの群間差 −10.1%
p<0.001
- −9.9%
p<0.001
-

 

このように、ジーンプラバはプラセボと比較して有意に再発率を低下させることが示されました。

 

ジーンプラバ点滴静注(一般名:ベズロトクスマブ)の薬価

収載時(2017年11月22日時点)の薬価は以下の通りです。

  • 625mg25mL1瓶:330,500円

 

ジーンプラバ点滴静注(一般名:ベズロトクスマブ)の副作用

ジーンプラバの主な副作用としては、悪心(1.0%)、頭痛(0.8%)、疲労(0.6%)などが認められていますので、注意が必要です。

 

あとがき

CDI は再発しやすい疾患であり、致死的な転帰に至ることもありますので、患者さんにとっては新たな治療選択肢が増えたことは朗報ではないでしょうか。

 

また、2018年には新規のCDI治療薬のダフクリア(一般名:フィダキソマイシン)も登場しました。

 

以上、本日はクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)とジーンプラバ点滴静注についてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. MODIFY Ⅰ試験、MODIFY Ⅱ試験:N Engl J Med. 2017 Jan 26;376(4):305-317.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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