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2024年より、新型コロナウイルス感染症を予防接種法のB類疾病に位置づけることとし、そのワクチン接種は「定期接種」に位置付けられることになりました。
本記事では、新型コロナワクチンの定期接種の対象者や、対象となる新型コロナウイルスの株、そしてワクチンの種類について概要をお伝えしていきます。
予防接種法に基づく定期接種ワクチンとは
まずは予防接種法に基づく定期接種ワクチンについてですが、大きく「A類疾患」と「B類疾患」に分けられています。
予防接種法に基づく定期接種ワクチン
- A類疾病:誰もが受けるべき予防接種で、全額公費負担されます。例えば、Hib感染症、B型肝炎、結核(BCG)、麻しん・風しんなどが該当します。
- B類疾病:費用の一部に公費負担がある場合があります。例えば、季節性インフルエンザや高齢者の肺炎球菌感染症などが該当します。ここに新型コロナウイルス感染症が追加される予定です。
【出典】厚生労働省|予防接種情報> よくある質問
新型コロナワクチンの定期接種対象者と費用
2024年10月からは上記の季節性インフルエンザと同様、「定期接種」による一部公費負担があるものの、全額無料ではなく自己負担が発生します(3,000円前後の予定)。
なお、全員が一部公費負担の対象ではありません。「定期接種」の対象とされるのは以下の方々のみです。
新型コロナワクチンの定期接種対象者
- 65歳以上の高齢者
- 60歳から64歳の重症化リスク(※)が高い方
※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
【出典】厚生労働省|新型コロナワクチンについて
上記に該当しない場合、「任意接種」となるため、全額自己負担です。費用の相場については、後日更新します。
ワクチンの抗原構成は「JN.1系統」
新型コロナワクチンの抗原株については、以下の方針により決定されます。
- 最新のWHOの推奨する抗原組成を用いることを基本とすること
- 様々なモダリティのワクチンについても、開発状況に応じて用いること
- 具体的な議論は研究開発及び⽣産・流通部会で⾏うこと
【出典】厚生労働省|第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会資料
その結果、2024年10月~2025年3月末までの時期に使用される新型コロナワクチンの抗原株は
- オミクロン株の「JN.1系統」
と決定されました。
厚生労働省|令和6年度第1回 予防接種に係る自治体向け説明会 資料
新型コロナワクチンの種類・一覧表
これまで、いくつかの新型コロナワクチンがありましたが、2024年秋接種以降に使用できるJN.1対応株のワクチンは以下の5製品です。
- コミナティ筋注
- スパイクバックス筋注
- ダイチロナ筋注
- コスタイベ筋注用
- ヌバキソビッド筋注
以下に簡単な一覧表を作成してみました。
以前は、ウイルスベクターワクチンのバキスゼブリアやジェコビデンがありましたが、現在では使用されていません。
ちなみに、添付文書では「過去に接種歴のない者は2回⽬接種を⾏うことができる」と記載されているワクチンもありますが、定期接種としては初回接種と追加接種の区分を設けず、原則として1回接種を⾏うものとされるようです。
小児に対するワクチン接種の考え方については日本小児科学会をご参照ください。
>>日本小児科学会|小児への新型コロナワクチン令和5年度秋冬接種に対する考え方
日本小児科学会は、生後6か月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を引き続き推奨します。
日本感染症学会が発出している「COVID-19ワクチンに関する提言」に有効性や安全性がまとまっていますので、こちらも必ずご確認くださいませ。
ではここから、新型コロナウイルス感染症の概要と、各ワクチンの作用機序について解説していきます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは
2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。
その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。
「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン
SARS(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。
症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。
しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病、心不全、COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。
重症化の可能性や世界的なパンデミックにより、日本においてCOVID-19は2020年1月に感染症法に基づく「指定感染症」及び検疫法に基づく「検疫感染症」に指定されました。
【参考】内閣官房|新型コロナウイルス感染症の指定感染症等への指定について
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム
コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。
分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。
- 二本鎖DNAウイルス:アデノウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス
- 一本鎖DNAウイルス:アデノ随伴ウイルス
- 二本鎖RNAウイルス:ロタウイルス
- 一本鎖プラス鎖RNAウイルス:コロナウイルス、エンテロウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス
- 一本鎖マイナス鎖RNAウイルス:麻疹ウイルス、RSウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス
- 一本鎖RNA逆転写ウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 二本鎖DNA逆転写ウイルス:B型肝炎ウイルス
ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。
-
ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】
続きを見る
プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。
SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。
SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。
- 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
- ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
- 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する
上記②のRNAの複製過程では、「RNA依存性RNAポリメラーゼ(別名:レプリカーゼ)」と呼ばれるウイルスタンパク質が中心を担っています。
治療薬としては、2020年に登場したベクルリー(レムデシビル)や、その後、経口薬として登場したラゲブリオ(モルヌピラビル)やパキロビッドパックやゾコーバ錠(エンシトレルビル)などがありますね。
以下の記事で治療薬についてまとめています。
-
ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序【COVID-19】
続きを見る
コミナティ・スパイクバックス・ダイチロナの作用機序:mRNAワクチン
新型コロナウイルスの表面には特有のスパイクタンパク質が発現していることが知られていますが、このタンパク質をコードするように設計されたmRNAを改変したものがコミナティとスパイクバックスとダイチロナです。
mRNAはそのままでは非常に脆くて分解されやすいため、
- 人工的な修飾によって安定化
- 脂質ナノ粒子に封入することで分解抑制
といった工夫がなされています。
コミナティを筋肉注射(通常、3週間の間隔をあけて2回投与)すると、体内でmRNA情報を元にして新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が合成されていきます。
合成されたスパイクタンパク質を体内の免疫細胞は「異物だ!」と認識することで排除しようと免疫が活性化されます。
その結果、新型コロナウイルスに対して免疫を獲得すると考えられています。
イラストは代表としてコミナティのみ
これでもし本当に新型コロナウイルスに感染した場合にも、体内の免疫がきちんと働いてくれますので、発症しないということですね。
コスタイベ筋注用:国内初のレプリコンワクチン
コスタイベは、コミナティやダイチロナと同様のmRNAワクチンですが、「自己複製するmRNA」というのが特徴です。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をコードするmRNAに、ベネズエラ馬脳炎ウイルス由来のレプリカーゼタンパク質(RNA依存RNAポリメラーゼ)のmRNAを結合させた構造を有しています。
つまり、コスタイベのmRNAが翻訳されると、mRNAを複製してくれるRNA依存RNAポリメラーゼも合成されることから、自己複製が可能になるといった仕組みですね。
このようなワクチンのことをレプリコンワクチンと呼んでいます。
Meiji Seikaファルマ|コスタイベ製品情報概要
これによって、より少量のmRNAでより大量の抗原が合成されることから、副作用の軽減および作用持続期間の延長が期待されています。
ただ、作用持続期間が延長すると、副作用の持続期間も伸びてしまうのでは?と思ってしまいました。
こちらについては、審査報告書に「明確な差異は認められていない」と書かれていました。
注目すべき有害事象のうち、本剤接種後に発現が認められたショック・アナフィラキシー関連有害事象については、いずれも軽度又は中等度の過敏症であり、忍容可能である。本剤はレプリコンを含む RNAワクチンであるが、有害事象の発現時期及び持続期間について、対照に比し遷延する等の明確な差異は認められていない。
その他、既承認 RNA ワクチンで注目すべき有害事象とされている心筋炎・心膜炎、ギラン・バレー症候群及び VAED・VAERD について、①これらの有害事象は発現頻度が低く、臨床試験成績のみから明確なリスク評価を行うことは困難と考えること、及び②本剤が既承認 RNA ワクチンと同様の RNA ワクチンであることを踏まえると、製造販売後にこれらの事象が発現する可能性は否定できないことから、いずれも注意が必要であり、申請者の説明どおり、注意喚起等を行うことは適当と判断した。
なお、マウスの実験によれば、2週間~1か月程度経過後にはレプリカーゼの有無によらずRNS量は低下したとのことでした。
Meiji Seikaファルマ|コスタイベ製品情報概要
直接比較はできないものの、有害事象の持続期間もコミナティと同程度であったとのことです。
バキスゼブリア・ジェコビデンの作用機序:ウイルスベクターワクチン
バキスゼブリアやジェコビデンも概念としてはmRNAワクチンと似ています。スパイクタンパク質の情報を有するDNAをチンパンジーのアデノウイルスに組み込んだ構造です。このような構造をウイルスベクターと呼んでいます。
両薬剤は接種終了・承認整理のため、今後接種されることはありません。
体内に投与されると、DNA情報を元に新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が合成され、あとはmRNAワクチンと同様に免疫を獲得します。
ヌバキソビッド筋注の作用機序:組換えタンパクワクチン
SARS-CoV-2スパイクタンパクの遺伝子を元に、昆虫細胞を用いて発現させた遺伝子組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質をナノ粒子化して製造されたワクチンです。
免疫の活性化を促進するためにアジュバントが添加されています。
第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会|2022(令和4)年3月24日
体内に投与されると、体内の免疫細胞は「異物だ!」と認識することで排除しようと免疫が活性化されます。
その結果、新型コロナウイルスに対して免疫を獲得すると考えられていますね。シンプル!
第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会|2022(令和4)年3月24日
新型コロナワクチンは危険?シェディングは本当?
最近ではコロナワクチンに対する不要論や陰謀論がSNSや怪しい著書等で広まっていますが、そんなことはありません。
他者への伝搬(シェディング)なんて、トンデモな考え方まで拡散される始末・・・(笑)
X(Twitter)仲間のFizz先生がブログの中で正しい情報を発信されているため、気になる方は是非ご覧くださいませ♪
エビデンスを元に、しっかりと反論されているので、一読する価値ありです。
Fizz Drug Information|新型コロナのワクチン、打った方が良い?~mRNAワクチンの効果と安全性、よくある誤解
また、レプリコンワクチンのコスタイベも「危険!」、「接種後にも増え続ける!」という投稿をSNSで見かけますが、全くそんなことはありません。
ベトナムで実施された第Ⅲ相試験(Nat Commun. 2024 May 14;15(1):4081.)の結果を見ると、忍容性は良好で、死亡者数もワクチン接種群で低かったと報告されています。
気になるQAについては、Meiji Seika ファルマ 株式会社の「次世代 mRNA ワクチン 情報サイト(一般の皆様向けページ)」に掲載されていますので、ぜひご確認くださいませ。
まとめ・あとがき
新型コロナウイルスワクチンの特徴
- 2024年秋以降、新型コロナワクチンは定期接種となった
- 定期接種の対象は、65歳以上の高齢者および60歳から64歳の重症化リスクが高い方
- 定期接種の自己負担費用は3,000円~4,000円前後
- JN.1対応株のワクチンは5種類ある
- コミナティ、スパイクバックス、ダイチロナはmRNAワクチン
- コスタイベはmRNAのレプリコンワクチン
- ヌバキソビッドは組換えタンパクワクチン
新型コロナウイルス感染症の治療薬としては、2020年に登場したベクルリー(レムデシビル)や、その後、経口薬として登場したラゲブリオ(モルヌピラビル)やパキロビッドパックやゾコーバ錠(エンシトレルビル)などがありますね。
以下の記事で治療薬についてまとめています。
-
ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序【COVID-19】
続きを見る
以上、今回は新型コロナウイルス感染症と初のmRNAワクチンであるコミナティの作用機序を中心に、その後、登場したバキスゼブリアやスパイクバックスについてご紹介しました!
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