2023年11月28日、以下の新規ワクチンが承認が了承されました!
- コスタイベ筋注用:「SARS-CoV-2 による感染症の予防」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品
- ダイチロナ筋注:オミクロン株XBB.1.5対応の1価ワクチン
現在、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とするワクチンは以下の6製品がありましたが、バキスゼブリアは接種終了、ジェコビデンは承認整理により、今後接種されることはありません。
- コミナティ筋注/コミナティRTU筋注:mRNAワクチン(2021年2月14日に承認、2022年9月12日BA1系統の2価承認、2022年10月5日BA4-5系統の2価承認、2023年9月1日XBB.1.5系統1価承認)
- スパイクバックス筋注:mRNAワクチン(2021年5月21日に承認、2022年9月12日BA1系統の2価承認、2022年11月1日BA4-5系統の2価承認)→起源株の1価ワクチンは2023年2月11日で接種終了、2023年9月12日XBB.1.5系統1価承認(追加免疫)、2023年10月24日生後6か月以上の初回免疫
バキスゼブリア筋注:ウイルスベクターワクチン(2021年5月21日に承認)→2022年9月30日で接種終了- ヌバキソビッド筋注:組換えタンパクワクチン(2022年4月19日に承認)
ジェコビデン筋注:ウイルスベクターワクチン(2022年6月20日に承認)→2023年6月30日で承認を整理- ダイチロナ筋注:mRNAワクチン(2023年8月2日承認)
コミナティとスパイクバックスは「従来株」と「オミクロン株」の2価ワクチンと「XBB.1.5系統」の1価ワクチンがありますが、ダイチロナはこれまで「従来株」のみでした。2023年9月より、追加接種時にはXBB.1系統を含有する1価のワクチンを用いる方針が示されているため、従来株のダイチロナは対象となりません。

小児に対するワクチン接種の考え方については日本小児科学会をご参照ください。
>>日本小児科学会|小児への新型コロナワクチン令和5年度秋冬接種に対する考え方
日本小児科学会は、生後6か月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)を引き続き推奨します。
今回は新型コロナウイルスの基本的な解説と共に、コミナティ(トジナメラン)、バキスゼブリア、スパイクバックス、ヌバキソビッドの作用機序を中心に解説していきます!
日本感染症学会が発出している「COVID-19ワクチンに関する提言」に有効性や安全性がまとまっていますので、こちらも必ずご確認くださいませ。
目次(クリック可)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは
2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。
その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。
「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン

SARS(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。
症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。
しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病、心不全、COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。
重症化の可能性や世界的なパンデミックにより、日本においてCOVID-19は2020年1月に感染症法に基づく「指定感染症」及び検疫法に基づく「検疫感染症」に指定されました。
【参考】内閣官房|新型コロナウイルス感染症の指定感染症等への指定について
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム
コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。
分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。

- 二本鎖DNAウイルス:アデノウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス
- 一本鎖DNAウイルス:アデノ随伴ウイルス
- 二本鎖RNAウイルス:ロタウイルス
- 一本鎖プラス鎖RNAウイルス:コロナウイルス、エンテロウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス
- 一本鎖マイナス鎖RNAウイルス:麻疹ウイルス、RSウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス
- 一本鎖RNA逆転写ウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 二本鎖DNA逆転写ウイルス:B型肝炎ウイルス
ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。
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ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】
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プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。
SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。
SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。
- 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
- ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
- 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する
上記②のRNAの複製過程では、「RNA依存性RNAポリメラーゼ(別名:レプリカーゼ)」と呼ばれるウイルスタンパク質が中心を担っています。
治療薬としては、2020年に登場したベクルリー(レムデシビル)や、その後、経口薬として登場したラゲブリオ(モルヌピラビル)やパキロビッドパックなどがありますね。
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パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序・特徴【COVID-19】
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コミナティ・スパイクバックス・ダイチロナの作用機序:mRNAワクチン
新型コロナウイルスの表面には特有のスパイクタンパク質が発現していることが知られていますが、このタンパク質をコードするように設計されたmRNAを改変したものがコミナティとスパイクバックスとダイチロナです。
mRNAはそのままでは非常に脆くて分解されやすいため、
- 人工的な修飾によって安定化
- 脂質ナノ粒子に封入することで分解抑制
といった工夫がなされています。
コミナティを筋肉注射(通常、3週間の間隔をあけて2回投与)すると、体内でmRNA情報を元にして新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が合成されていきます。

合成されたスパイクタンパク質を体内の免疫細胞は「異物だ!」と認識することで排除しようと免疫が活性化されます。
その結果、新型コロナウイルスに対して免疫を獲得すると考えられています。
イラストは代表としてコミナティのみ
これでもし本当に新型コロナウイルスに感染した場合にも、体内の免疫がきちんと働いてくれますので、発症しないということですね。
コスタイベ筋注用:国内初のレプリコンワクチン
コスタイベは、コミナティやダイチロナと同様のmRNAワクチンですが、「自己複製するmRNA」というのが特徴です。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をコードするmRNAに、ベネズエラ馬脳炎ウイルス由来のレプリカーゼタンパク質(RNA依存RNAポリメラーゼ)のmRNAを結合させた構造を有しています。
つまり、コスタイベのmRNAが翻訳されると、mRNAを複製してくれるRNA依存RNAポリメラーゼも合成されることから、自己複製が可能になるといった仕組みですね。
このようなワクチンのことをレプリコンワクチンと呼んでいます。

大分大学|令和3年度 8月学長記者会見
これによって、より少量のmRNAでより大量の抗原が合成されることから、副作用の軽減および作用持続期間の延長が期待されています。
ただ、作用持続期間が延長すると、副作用の持続期間も伸びてしまうのでは?と思ってしまいました。
こちらについては、審査報告書に「明確な差異は認められていない」と書かれていました。
注目すべき有害事象のうち、本剤接種後に発現が認められたショック・アナフィラキシー関連有害事象については、いずれも軽度又は中等度の過敏症であり、忍容可能である。本剤はレプリコンを含む RNAワクチンであるが、有害事象の発現時期及び持続期間について、対照に比し遷延する等の明確な差異は認められていない。
その他、既承認 RNA ワクチンで注目すべき有害事象とされている心筋炎・心膜炎、ギラン・バレー症候群及び VAED・VAERD について、①これらの有害事象は発現頻度が低く、臨床試験成績のみから明確なリスク評価を行うことは困難と考えること、及び②本剤が既承認 RNA ワクチンと同様の RNA ワクチンであることを踏まえると、製造販売後にこれらの事象が発現する可能性は否定できないことから、いずれも注意が必要であり、申請者の説明どおり、注意喚起等を行うことは適当と判断した。
直接比較はできないものの、有害事象の持続期間もコミナティと同程度であったとのことです。
バキスゼブリア・ジェコビデンの作用機序:ウイルスベクターワクチン
バキスゼブリアやジェコビデンも概念としてはmRNAワクチンと似ています。スパイクタンパク質の情報を有するDNAをチンパンジーのアデノウイルスに組み込んだ構造です。このような構造をウイルスベクターと呼んでいます。
両薬剤は接種終了・承認整理のため、今後接種されることはありません。

体内に投与されると、DNA情報を元に新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が合成され、あとはmRNAワクチンと同様に免疫を獲得します。
ヌバキソビッド筋注の作用機序:組換えタンパクワクチン
SARS-CoV-2スパイクタンパクの遺伝子を元に、昆虫細胞を用いて発現させた遺伝子組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質をナノ粒子化して製造されたワクチンです。
免疫の活性化を促進するためにアジュバントが添加されています。
第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会|2022(令和4)年3月24日

体内に投与されると、体内の免疫細胞は「異物だ!」と認識することで排除しようと免疫が活性化されます。
その結果、新型コロナウイルスに対して免疫を獲得すると考えられていますね。シンプル!
第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会|2022(令和4)年3月24日
コミナティのエビデンス紹介:国際共同第Ⅲ相臨床試験
コミナティの承認の根拠となったのは国際共同で実施された第Ⅲ相試験です。2)
本試験は16歳以上の健常人43,448人を対象に、21,720人がコミナティを、21,728人がプラセボを接種され、その有効性と安全性が比較されました。
いずれも21日間隔で2回接種
主要評価項目は「感染歴のない参加者の集団における2回目接種7日後からの発症有無」とされ、結果は以下の通りでした。
コミナティ群 (18,198人) |
プラセボ群 (18,325人) |
|
発症人数 | 8人 | 162人 |
有効性:95%(95%credible interval:90.3-97.6%) |

他の2製品のワクチンに関する臨床試験結果や、ワクチンの有効性・安全性に関する考察についてはるるーしゅさん(@ph_lelouch)のサイトが分かり易かったので是非ご覧になってください。
KUROYAKU|【薬局で働く皆さんへ】新型コロナワクチンは接種したほうがいいのか解説します
日本感染症学会の「COVID-19ワクチンに関する提言」に有効性・安全性がまとまっているため、参考になります。
<有効性>
<安全性(1回目)>
<安全性(2回目)>
【出典】日本感染症学会|COVID-19ワクチンに関する提言(第7版)
ワクチンの陰謀論・不要論?
最近ではコロナワクチンに対する不要論や陰謀論がSNSや怪しい著書等で広まっていますが、そんなことはありません。
Twitter仲間のFizz先生がブログの中で正しい情報を発信されているため、気になる方は是非ご覧くださいませ♪
Fizz Drug Information|新型コロナのワクチン、打った方が良い?~mRNAワクチンの効果と安全性、よくある誤解
まとめ・あとがき
新型コロナウイルスワクチンの特徴
- コミナティとスパイクバックスとダイチロナはmRNAワクチン(コミナティが世界初)
- バキスゼブリアはウイルスベクターワクチン
- ヌバキソビッドは組換えタンパクワクチン
- 筋肉注射することでウイルスに対する免疫獲得が期待できる
新型コロナウイルス感染症に対しては2020年5月に初の治療薬であるベクルリー(レムデシビル)が特例承認されていますね。
ベクルリーと特例承認については以下の記事で解説していますので併せてご覧ください。
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ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】
続きを見る
その後、初の抗体カクテル療法のロナプリーブ点滴静注(カシリビマブ/イムデビマブ)も登場しました!
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ロナプリーブ注射液セット(カシリビマブ/イムデビマブ)の作用機序【COVID-19】
続きを見る
2021年末には軽症から使用可能な初の経口薬のラゲブリオ(モルヌピラビル)も登場し、2022年にはパキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)も登場しました!
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パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序・特徴【COVID-19】
続きを見る
以上、今回は新型コロナウイルス感染症と初のmRNAワクチンであるコミナティの作用機序を中心に、その後、登場したバキスゼブリアやスパイクバックスについてご紹介しました!
参考資料・文献等
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