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2024年12月6日、厚労省の薬事審議会医薬品第二部会にて「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」を効能・効果とするカビゲイル注射液(シパビバルト)の承認可否が審議される予定です!
アストラゼネカ|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | カビゲイル注射液300mg |
一般名 | シパビバルト(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | |
製造販売 | アストラゼネカ(株) |
効能・効果 | SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制 |
用法・用量 | 初回と6か月後に2回投与? |
薬価 | |
発売日 |
新型コロナウイルス感染症治療薬としての抗体薬は以下の3製品があるものの、昨今の変異株には対応していません。
上記のうち、「発症抑制」にも使用できるのはエバシェルドのみでした。しかしながら、昨今の変異株であるBQ.1、BQ.1.1、XBB、XBB.1.5系統に対する中和活性は期待できません。
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ちなみに、カビゲイルは抗体薬であるものの、一般名は「~mab(~マブ)」ではなく「~bart(バルト)」です…!
これは2021年に抗体ステムの改正に起因します(本記事の最後に紹介)。
今回は新型コロナウイルスの基本的な解説と共に、カビゲイルの作用機序について解説していきます!
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは
2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。
その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。
「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン
SARS(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。
症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。
しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病、心不全、COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム
コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。
分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。
- 二本鎖DNAウイルス:アデノウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス
- 一本鎖DNAウイルス:アデノ随伴ウイルス
- 二本鎖RNAウイルス:ロタウイルス
- 一本鎖プラス鎖RNAウイルス:コロナウイルス、エンテロウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルス
- 一本鎖マイナス鎖RNAウイルス:麻疹ウイルス、RSウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス
- 一本鎖RNA逆転写ウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 二本鎖DNA逆転写ウイルス:B型肝炎ウイルス
ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。
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プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。
SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。
SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。
- 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
- ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
- 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する
上記②のRNAの複製過程では、「RNA依存性RNAポリメラーゼ(別名:レプリカーゼ)」と呼ばれるウイルスタンパク質が中心を担っていて、これを阻害するのがベクルリー(一般名:レムデシビル)です。
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ここでは「①吸着」を詳しく見ていきましょう。
SARS-CoV-2の膜には「スパイクタンパク質」が存在していて、吸着に関与しているのはその中のRBD(receptor binding domain)と呼ばれる部位です。
RBDがヒト細胞膜にあるACE2受容体と結合することで、SARS-CoV-2が吸着・侵入していきます。
ちなみに、スパイクタンパク質を標的にしたmRNAワクチンも2021年に承認されていますね。
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今回ご紹介するカビゲイルは、免疫不全患者さん(例:血液がん患者、臓器移植レシピエント、透析を要する末期腎不全患者、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者、免疫抑制剤を使用中の患者など)に対するCOVID-19の曝露前発症抑制を目的として使用が見込まれます。
重症度別の治療方法
現在、重症度別の治療方法については厚労省の「新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き」や日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」2)に掲載されています。
新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き 第10.1版
軽症例では経口抗ウイルス薬の
- ゾコーバ錠(エンシトレルビル)
- パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル) ※重症化リスクが高い場合
- ラゲブリオ(モルヌピラビル) ※重症化リスクが高い場合
等が使用されます。
中等症Ⅱ~重症例では国内初の治療薬として登場したベクルリー(レムデシビル)が使用され、重症例では適宜ステロイドやオルミエント(バリシチニブ)が併用されます。
その他、中和抗体も承認されているものの、オミクロン株に対して有効性が減弱していることから、上記の抗ウイルス薬が優先されています。
各薬剤の特徴については「COVID-19に対する薬物治療の考え方」2)が分かりやすいと思います♪(下図。一部抜粋)
カビゲイル(シパビバルト)の作用機序・特徴
カビゲイルはSARS-CoV-2のRBDに対するモノクローナル抗体3)のため、RBDとACE2受容体との結合が抑制されることで感染防止効果を発揮すると考えられています。
また、抗体もFc領域を改変することで、血中半減期が通常の抗体と比較して延長しているとのことです。
治療のエビデンス紹介:SUPERNOVA試験
根拠となった臨床試験(SUPERNOVA試験)をご紹介します。
本試験は、COVID-19の予防を目的としてカビゲイルの安全性および有効性を対照(エバシェルドまたはプラセボ)と比較評価する国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。
現時点では結果等が未公表ですが、メーカーのニュースリリースによれば、カビゲイル投与群においてCOVID‐19の発症率を統計学的に有意に低下させたと発表されています。4)
副作用
後日更新予定です。
用法・用量
後日更新予定です。
抗体ステムの改正:2021年
WHOのINN専門家協議は、1991年に抗体を定義するステム「-mab」を設定しました。
ちなみに、INNとは「International Nonproprietary Name(医薬品国際一般名称)」の略で、INN専門家協議は世界中の医薬品のINNを命名しています。
その後の抗体薬の開発・進歩は目まぐるしく、また抗体の改変技術も発達し、様々な抗体薬が登場しました。2021年には900品目以上の「~mab」が命名されていたようです!!
そこで、2021年には抗体改変技術も加味した新たな抗体のINNが提唱されたという経緯です。5)
今後、新規で命名される抗体薬には「mab」は使用せずに、以下のステムに沿って命名されます。
抗体を定義するステム | 抗体薬の特徴 | 由来 |
-tug(ツグ) | 変異を含まない全長抗体 | 変異を含まない完全長抗体を示すunmodified immunoglobulins |
-bart(バルト | Fc部分に人工的な変異を伴う全長抗体 | 人工的な変異を伴う全長抗体を示すantibody artificial |
-mig(ミグ) | 二重および多重特異性抗体 | 多重特異性抗体を示すmulti-immunoglobulin |
-ment(メント) | 断片型抗体 | 断片を示すfragment |
まとめ・あとがき
カビゲイルはこんな薬
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症とその発症を抑制する抗体薬
- ウイルスのRBDに結合することで、ヒト細胞への侵入・感染を抑制する
- 新たなINN(-bart)が適用された抗体薬
これまで「発症抑制」に使用できた抗体薬はエバシェルドのみでした。しかしながら、昨今の変異株であるBQ.1、BQ.1.1、XBB、XBB.1.5系統に対する中和活性は期待できません。
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エバシェルド筋注セット(チキサゲビマブ/シルガビマブ)の作用機序【COVID-19】
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2021年末には軽症から使用可能な初の経口薬のラゲブリオ(モルヌピラビル)も登場し、2022年にはパキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)やゾコーバ錠(エンシトレルビル)も登場していますので、治療選択肢が増えたことは朗報ですね!
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ゾコーバ錠(エンシトレルビル)の作用機序【COVID-19】
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まずは、ワクチンによる予防が一番大切ですね。よかったら以下の記事もご参照ください。
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コミナティ、ダイチロナ、コスタイベなどの作用機序【新型コロナウイルス】
続きを見る
以上、今回は新型コロナウイルスの基本的な解説と共に、カビゲイル(シパビバルト)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
参考資料・文献等
- International Committee on Taxonomy of Viruses (国際ウイルス分類委員会)による分類
- 日本感染症学会|COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15.1版
- Sci Transl Med. 2024 Jun 26;16(753):eado2817.
- SUPERNOVA試験:長時間作用型モノクローナル抗体sipavibart、免疫不全患者集団を対象とする第III相SUPERNOVA試験でCOVID-19発症抑制の主要評価項目を達成
- WHO|New INN monoclonal antibody (mAb) nomenclature scheme Geneva, November 2021
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