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2023年6月26日、「潰瘍性大腸炎」を対象疾患とするコレチメント錠(ブデソニド)が承認されました!
フェリング・ファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | コレチメント錠9mg |
一般名 | ブデソニド |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | 製造販売:フェリング・ファーマ(株) 販売:持田製薬(株) |
効能・効果 | 活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く) |
用法・用量 | 通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与する。 |
収載時の薬価 | 607.80円(1日薬価:607.80円) |
発売日 | 2023年9月1日(HP) |
これまで潰瘍性大腸炎では、ブデソニドの注腸フォームとして「レクタブル2mg注腸フォーム」が使用されていましたが、経口のブデソニドは当疾患で初です!
コレチメントは大腸で選択的かつ局所的に作用するため、全身性の副作用の軽減が期待されていますよー!
今回は潰瘍性大腸炎とコレチメント(ブデソニド)の作用機序、そしてレクタブルとの違いについてご紹介します。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。
好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。
主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。
特に初期症状としては粘血便が多いとされています。
潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。
長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!
潰瘍性大腸炎の原因
明確な原因は未だ不明とされていますが、
- 免疫異常等の遺伝因子
- 食習慣等の環境因子
- ストレス等の心理学的因子
が複雑に関与して発症すると考えられています。
何らかの自己免疫異常によって、免疫細胞(白血球)が自分自身の大腸粘膜を「異物」としてみなして攻撃してしまうことで大腸粘膜に炎症が引き起こされます。
そして潰瘍性大腸炎の発生原因は未だ不明とされていますが、炎症性疾患であることから、炎症サイトカインであるTNFαや各IL(インターロイキン)が関わっていると考えられています。
特に、潰瘍性大腸炎では腸の抗原提示細胞(マクロファージなど)によるTNF-αや、IL-12およびIL-23の分泌が増加していることが知られています。
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されています。
潰瘍性大腸炎は原因が不明なため、腸管の炎症が活動な状態(活動期)を抑えて症状を鎮め、寛解の状態(寛解期)を維持することが治療の主な目標です。
治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療や血球成分除去療法などが行われることもあります。
潰瘍性大腸炎の薬物療法は、活動期の炎症を抑えて落ち着かせ寛解に持ち込む「寛解導入療法」と、寛解を長期に維持して再燃を防ぐ「寛解維持療法」の2つに分けられます。
初期に行う主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。1-2)
- 5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤):メサラジン、サラゾスルファピリジン
⇒寛解導入療法・寛解維持療法共に使用可能 - 副腎皮質ホルモン:プレドニゾロン、ブデソニド
⇒寛解導入療法に使用可能 - 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン
⇒寛解維持療法に使用可能(いずれも保険適応外)
まずは5-ASA製剤による寛解導入療法が基本ですが、5-ASAで効果不十分な場合、軽症~中等症の全大腸炎型・左側大腸炎型で特に左側の炎症が強い場合、ブデソニド注腸フォーム剤のレクタブルの追加が検討されます。1)
また、直腸炎型の寛解導入療法でも同様にレクタブルが推奨されています。
今回ご紹介するコレチメントもレクタブルと同様の位置付けで使用可能ですが、コレチメントの国内外の臨床試験3)では、「病変が直腸のみ」の患者さんは除外されていたため、直腸に限局している場合にはレクタブルの方が適しています。
コレチメント|インタビューフォーム
コレチメントは、軽症・中等症の全大腸炎型・左側大腸炎型で推奨されています。
最近では5-ASA製剤の治療歴がある中等症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法にカログラ(カロテグラスト)が使用できるようになりました。
-
カログラ(カロテグラスト)の作用機序【潰瘍性大腸炎】
続きを見る
また、上記の標準治療薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、以下のような生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。
- レミケード点滴静注(一般名:インフリキシマブ)
- ヒュミラ皮下注(一般名:アダリムマブ)
- シンポニー皮下注(一般名:ゴリムマブ)
- エンタイビオ点滴静注(一般名:ベドリズマブ)
- ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ)
- オンボー(一般名:ミリキズマブ)
詳しくは以下で解説しています。
-
オンボー(ミリキズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎】
続きを見る
コレチメント(ブデソニド)の作用機序:MMXによる薬物送達技術
コレチメントは、「MMX(Multi Matrix System)テクノロジー」と呼ばれる薬物送達技術を用いた、ブデソニドの経口DDS(Drug Delivery System)製剤です!
コレチメントは、ブデソニドを親水性基剤と親油性基剤からなるマトリックス中に分散させた素錠部をフィルムコーティングした錠剤です。
まずフィルムコーティングすることで、胃や小腸で崩壊することなく大腸に届けられます。そして、大腸付近のpH変化によって、大腸で選択的にフィルムコーティングが溶解し、素錠部が現れます。
大腸においては、素錠のマトリックスの親水性基剤と親油性基剤の働きによって、ブデソニドの持続的な放出が期待されています。
持田製薬|コレチメント錠剤:薬物送達技術「MMX」
さらに、ブデソニドは吸収されたとしても、肝臓における肝初回通過効果によって、ステロイド活性をほとんどもたない代謝物(例:6β-ヒドロキシブデソニド、16α-ヒドロキシプレドニゾロン)に変換されます。4)
代謝物のステロイド活性は、未変化体ブデソニドの1%未満とのことです。4)
ちなみに、ブデソニドは気管支喘息等の他疾患でもよく使用されていますね。
- シムビコート(LABAのホルモテロール+ICSのブデソニド)
- ビレーズトリ(LABAのホルモテロール+LAMAのグリコピロニウム+ICSのブデソニド)
- パルミコート(ブデソニド)
- ゼンタコート(ブデソニド)
エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験
根拠となった国内第Ⅲ相臨床試験をご紹介します。3-4)
本試験は、軽症~中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象に、コレチメントを8週間経口投与した際の有効性について、pH依存型メサラジン放出調節製剤のアサコール錠に対する「非劣性」を検証した臨床試験です。
主要評価項目は「投与後8週時のUCDAI総スコアのベースラインからの変化量」とされ、結果は以下の通りでした(非劣性マージンは1.30)。
アサコール群 | コレチメント群 | |
UCDAI総スコアの ベースラインからの変化量 |
−1.39 | −0.87 |
群間差:0.53[95%CI:−0.26~1.31] |
非劣性マージンを超過してしまったことから、「非劣性が示されなかった」という結果です。
ただ、海外で実施された臨床試験では、プラセボに対するコレチメントの優越性が確認されている点や、海外の使用実績・ガイドライン等が考慮され、承認に至っています。3)
副作用
2~5%未満の副作用として、潰瘍性大腸炎増悪などが報告されていますが、全体的な副作用は少ない印象を受けました。
重大な副作用も特にありません。
用法・用量
通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与します。
レクタブルとの違い・比較
コレチメントと同様の有効成分を含有する潰瘍性大腸炎治療薬には、ブデソニド注腸フォーム製剤の「レクタブル2mg注腸フォーム」があります。
特徴などを一覧表にまとめましたので、ご参考にしてみてください。
大きな違いは、製剤特徴による作用部位です。
レクタブルは注腸によって投与するため、その範囲はほとんどが「直腸からS状結腸」です。
キッセイ薬品工業|レクタブル:単回直腸内投与後の大腸各部位の放射能分布
一方、コレチメントはMMXによって、大腸到達後に崩壊・放出されるため、大腸全体的に作用します。
下図は、コレチメント錠の崩壊開始部位を示したもので、大半が回腸~上行・横行結腸で崩壊しています。
持田製薬|コレチメント錠剤:薬物送達技術「MMX」
一部、S状結腸でも崩壊していますが、割合は低いため、S状結腸~直腸の作用は少ないのかもしれません。
コレチメントの臨床試験でも、病変が直腸のみの患者さんは除外されていたことから、
- S状結腸・直腸の炎症が強い ⇒ レクタブル
- 回腸~下行結腸の炎症が強い ⇒ コレチメント
といった使い分けができるのではないでしょうか。
収載時の薬価
収載時(2023年8月30日)の薬価は以下の通りです。
- コレチメント錠9mg:607.80円(1日薬価:607.80円)
算定の根拠については、以下で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】7製品(2023年8月30日)
続きを見る
まとめ・あとがき
コレチメントはこんな薬
- 潰瘍性大腸炎で使用する初の経口ブデソニド製剤
- MMXによって大腸選択的に作用する
- アンテドラッグ型のステロイドのため、全身性の副作用が少ない
- 1日1回1錠を経口投与する
ブデソニドには、これまではレクタブル注腸フォームしか使用できませんでしたが、コレチメントは新たな治療選択肢として期待されています。
近年、潰瘍性大腸炎の領域は生物学的製剤(例:エンタイビオやオンボー)や経口治療薬(JAK阻害薬)などの開発が活発です。
-
オンボー(ミリキズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎】
続きを見る
2022年には、5-ASA製剤による治療で効果不十分な中等症の潰瘍性大腸炎に使用するカログラ(カロテグラスト)も登場しました。
-
カログラ(カロテグラスト)の作用機序【潰瘍性大腸炎】
続きを見る
以上、今回は潰瘍性大腸炎とコレチメント(ブデソニド)の作用機序、そしてレクタブルとの違いについてご紹介しました。
引用文献・資料等
- 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和5年度 改訂版
- 日本消化器病学会ガイドライン:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020
- コレチメント 審査報告書
- コレチメント インタビューフォーム
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