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今回は潰瘍性大腸炎とヒュミラ皮下注(一般名:アダリムマブ)の作用機序についてご紹介します。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。
好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。
主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。
特に初期症状としては粘血便が多いとされています。
潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。
長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!
潰瘍性大腸炎の原因
明確な原因は未だ不明とされていますが、
- 免疫異常等の遺伝因子
- 食習慣等の環境因子
- ストレス等の心理学的因子
が複雑に関与して発症すると考えられています。
何らかの自己免疫異常によって、免疫細胞(白血球)が自分自身の大腸粘膜を「異物」としてみなして攻撃してしまうことで大腸粘膜に炎症が引き起こされます。
このような持続的な自己免疫異常が潰瘍性大腸炎の発症と炎症の持続に関与すると言われています。
白血球(マクロファージ、顆粒球、T細胞)が大腸粘膜を攻撃する際、血中の白血球は以下のプロセスで大腸粘膜まで移動し、攻撃を行います。
- 血管内皮細胞に接着する
- 組織内に入る(浸潤)
- 攻撃する部位(この場合、大腸粘膜)に移動する(“遊走”と呼びます)
- 大腸粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす
また、マクロファージが粘膜を攻撃する際、TNFαやIL-12、IL-23などの炎症物質を過剰に分泌することで炎症を引き起こします。
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されております。
潰瘍性大腸炎は原因が不明であるため、腸管の炎症を抑えて症状を鎮め寛解に導くこと、そして炎症のない状態を維持(寛解状態)することが治療の主な目標になります。
治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療や血球成分除去療法などが行われることもあります。
初期に行う主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。
- 5-ASA製剤:メサラジン、サラゾスルファピリジン
- 副腎皮質ホルモン:ブレドニゾロン、ブデソニド
- 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン
これらの薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。
このような難治性の中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対して使用できる薬剤がヒュミラです。
ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)の作用機序
ヒュミラはマクロファージ等が分泌する炎症物質の「TNFα」に結合してその働きを抑制するモノクローナル抗体製剤です。
TNFαの働きが抑制されることで炎症が抑えられ、潰瘍性大腸炎の症状が緩和するといった作用機序を有しています。
副作用として、結核・肺炎・敗血症等を含む重篤な感染症の発現を認めることがありますので、十分注意が必要です。
ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)の類薬
同様の効能効果と作用機序(抗TNFαモノクローナル抗体薬)を有する抗体製剤には以下の2種類があります。
レミケードは点滴ですが、シンポニーとヒュミラは皮下注です。
あとがき
今後は類薬との使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。
2018年には、リンパ球(T細胞)が血管内皮細胞に接着する際に関与する「α4β7インテグリン」を特異的に阻害するモノクローナル抗体薬のエンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)も登場しました。
T細胞の接着が阻害されることで、組織への浸潤と炎症部位への遊走も阻害されるといった新規作用機序を有する薬剤のため、今後期待できると思われます。
また、ヒュミラは乾癬にも適応を有していますので、乾癬については以下の記事をご覧下さい。
以上、本日は潰瘍性大腸炎とヒュミラ皮下注(一般名:アダリムマブ)についてご紹介いたしました♪
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