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2022年3月28日、「潰瘍性大腸炎」を対象疾患とするカログラ(カロテグラスト)が承認されました!
EAファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | カログラ錠120mg |
一般名 | カロテグラストメチル |
製品名の由来 | 製品名は、一般名Carotegrastと 経口α4インテグリン阻害剤Oral α4 integrin antagonistを加え、 カログラ(Carogra)と命名した。 |
製造販売 | 製造販売:EAファーマ 販売:キッセイ薬品 |
効能・効果 | 中等症の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合に限る) |
用法・用量 | 通常、成人にはカロテグラストメチルとして 1回960mgを1日3回食後経口投与する。 |
収載時の薬価 | 200.00円 |
発売日 | 2022年5月30日新発売(HP) |
<効能又は効果に関連する注意>
- 過去の治療において、5-アミノサリチル酸製剤による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること。
- 本剤は維持療法のために投与しないこと。本剤の進行性多巣性白質脳症(PML)発現リスクを考慮し、臨床試験では維持療法について検討していない。
カログラはα4β1インテグリンとα4β7インテグリンを共に阻害するといった作用機序を有する経口薬です!
α4β7インテグリンを特異的に阻害する生物学的製剤としては2018年に登場したエンタイビオ(ベドリズマブ)がありますね。
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エンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎/クローン病】
続きを見る
今回は潰瘍性大腸炎とカログラ(カロテグラスト)の作用機序、根拠となったエビデンスについてご紹介します。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。
好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。
主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。
特に初期症状としては粘血便が多いとされています。
潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。
長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!
潰瘍性大腸炎の原因
明確な原因は未だ不明とされていますが、
- 免疫異常等の遺伝因子
- 食習慣等の環境因子
- ストレス等の心理学的因子
が複雑に関与して発症すると考えられています。
何らかの自己免疫異常によって、免疫細胞(白血球)が自分自身の大腸粘膜を「異物」としてみなして攻撃してしまうことで大腸粘膜に炎症が引き起こされます。
白血球(マクロファージ、顆粒球、T細胞)が大腸粘膜を攻撃する際、血中の白血球は以下のプロセスで大腸粘膜まで移動し、攻撃を行います。
- 血管内皮細胞に接着する
- 組織内に入る(浸潤)
- 攻撃する部位(この場合、大腸粘膜)に移動する(“遊走”と呼びます)
- 大腸粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす
白血球の中でもリンパ球のT細胞が上記プロセスを行う場合、最初の「接着」が重要です。
T細胞に発現している「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が血管内皮細胞上にある「MAdCAM-1」と結合、またはT細胞の「α4β1インテグリン」と血管内皮細胞の「VCAM-1」が結合することで「接着」が起こります。1)
その後、接着した部位から組織内に浸潤が起こり、大腸粘膜に遊走し、大腸粘膜に到達したT細胞が粘膜を攻撃することで炎症を引き起こします。
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されています。
潰瘍性大腸炎は原因が不明なため、腸管の炎症が活動な状態(活動期)を抑えて症状を鎮め、寛解の状態(寛解期)を維持することが治療の主な目標です。
治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療や血球成分除去療法などが行われることもあります。
潰瘍性大腸炎の薬物療法は、活動期の炎症を抑えて落ち着かせ寛解に持ち込む「寛解導入療法」と、寛解を長期に維持して再燃を防ぐ「寛解維持療法」の2つに分けられます。
初期に行う主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。2)
- 5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤):メサラジン、サラゾスルファピリジン
⇒寛解導入療法・寛解維持療法共に使用可能 - 副腎皮質ホルモン:ブレドニゾロン、ブデソニド
⇒寛解導入療法に使用可能 - 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン
⇒寛解維持療法に使用可能
2023年には、軽症~中等症に使用するブデソニドの経口DDS製剤のコレチメント錠も登場しました!軽症から使用できるため、カログラより先行して使用可能です。
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コレチメント(ブデソニド)の作用機序:レクタブルとの違い【潰瘍性大腸炎】
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また、上記の標準治療薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、以下のような生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。
- レミケード点滴静注(一般名:インフリキシマブ)
- ヒュミラ皮下注(一般名:アダリムマブ)
- シンポニー皮下注(一般名:ゴリムマブ)
- エンタイビオ点滴静注(一般名:ベドリズマブ)
- ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ)
通常、生物学的製剤は導入期と維持期に使用しますが、カログラは維持期(寛解維持療法)には使用しないことに注意が必要です。
カログラ(カロテグラスト)の作用機序:インテグリン阻害
カログラは、前述のT細胞の接着に関与する「α4β7インテグリン」および「α4β1インテグリン」を共に阻害する経口薬です。3)
その結果、T細胞による炎症反応が抑制でき、潰瘍性大腸炎の症状緩和効果を発揮すると考えられます。
エビデンス紹介:AJM300/CT3試験
根拠となった臨床試験(AJM300/CT3試験)をご紹介します。4)
本試験は、基本治療薬である5-アミノサリチル酸製剤を用いても効果不十分または不耐であった中等度活動期の潰瘍性大腸炎患者さんを対象に、カログラ群またはプラセボ群の有効性・安全性を検証した国内第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「Mayo scoreを用いた投与8週時の改善率」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 | カログラ群 | |
改善率 | 20.8% | 45.1% |
オッズ比=3.30(95%CI:1.73-6.29) p=0.0003 |
副作用
1~5%未満に認められる副作用として、肝機能異常、AST増加、LDH増加、頭痛、悪心、腹部不快感、白血球数増加、関節痛、尿中蛋白陽性、上咽頭炎、上気道の炎症、発熱、CRP増加などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
PMLの症状として、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等がありますので、これらの症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこととされていますね。
用法・用量
通常、成人にはカロテグラストメチルとして1回960mgを1日3回食後経口投与します。
ただし、PMLなどの副作用を考慮して、投与期間は最大でも「6か月」とされているので注意が必要です。
<用法及び用量に関連する注意>
- 8週間投与しても臨床症状や内視鏡所見等による改善効果が得られない場合、本剤の継続の可否も含め、治療法を再考すること。
- 他のインテグリン拮抗薬であるナタリズマブ(遺伝子組換え)においてPMLの発現が報告されている。本剤のPML発現リスクを低減するため、投与期間は6ヵ月までとし、6ヵ月以内に寛解に至った場合はその時点で投与を終了すること。また、本剤による治療を再度行う場合には、投与終了から8週間以上あけること。
収載時の薬価
収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。
- カログラ錠120mg:200.00円
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)
続きを見る
まとめ・あとがき
カログラはこんな薬
- α4β7インテグリンおよびα4β1インテグリンを共に阻害する経口薬
- T細胞の接着を抑制する
- 1日3回経口投与
- PMLに注意が必要(投与期間は最大6か月)
近年、潰瘍性大腸炎の領域は生物学的製剤(例:エンタイビオ)や経口治療薬(JAK阻害薬)などの開発が活発です。
-
JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ
続きを見る
これまで治療選択肢が少なかったことから、選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。
一方で、臨床試験を見ると、ほとんどの薬剤がプラセボとの比較のため、どの患者さんにどの薬剤が適しているのか、使い分けの検討はまだまだな印象です。
以上、今回は潰瘍性大腸炎とカログラ(カロテグラスト)の作用機序、根拠となったエビデンスについてご紹介しました。
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