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2020年3月25日、「血栓・塞栓形成の抑制」を対象疾患とするキャブピリン配合錠が承認されました!
武田薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | キャブピリン配合錠 |
一般名 | ●ボノプラザンフマル酸塩 ●アスピリン |
製品名の由来 | TAKECAB+Low Dose ASPIRIN |
製造販売元 | 武田薬品工業(株) |
効能・効果 | 下記疾患又は術後における血栓・塞栓形成の抑制(胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る) ・狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞) ・冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後 |
用法・用量 | 通常、成人には1日1回1錠(アスピリン/ボノプラザンとして100mg/10mg)を経口投与する。 |
収載時の薬価 | 130.30円 |
- タケキャブ(一般名:ボノプラザン)
- 低用量アスピリン
低用量アスピリンとPPI(プロトンポンプ阻害薬)の配合剤ですので、タケルダ配合錠(ランソプラゾール/アスピリン)と同じコンセプトですね。
今回は低用量アスピリンがよく使用される虚血性心疾患と共に、キャブピリン配合錠の作用機序について解説します。
止血と血栓形成のメカニズム
我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。
止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。
出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。
これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。
次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。
二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。
虚血性心疾患と血小板凝集
虚血性心疾患とは、心臓の栄養や酸素を供給する「冠動脈」が狭窄して詰まってしまうことで引き起こされます。
虚血性心疾患の最も多い原因としては、生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満など)による動脈硬化が挙げられます。
生活習慣病が原因で、心臓の冠動脈血管内にプラーク(コレステロール等の塊)が生じることがあります。
プラークが傷ついてしまうと、その箇所に血小板が集まってきて一次血栓を生じます。
この血栓が大きくなって血管を詰まらせてしまうと、血流がストップしてしまい、心臓に十分な栄養や酸素が届けられなくなってしまいます。
虚血性心疾患の治療
狭心症の発作に対して使用されるのはニトログリセリンです。
その他、冠動脈の血管拡張作用のある薬剤が使用されることもあります。1)
また、場合によっては、カテーテルを用いて閉塞している冠動脈を拡張する手技である「経皮的冠動脈形成術(PCIもしくはPTCA)」が行われることもあり、その実施前にはエフィエント(プラスグレル)等の使用も推奨されていますね。
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エフィエント(プラスグレル)の作用機序と副作用【虚血性心疾患】
続きを見る
キャブピリン配合錠の作用機序
キャブピリンは低用量アスピリンとPPIのボノプラザン(商品名:タケキャブ)を配合した薬剤です!
まずは低用量アスピリンによる抗血小板作用(血小板凝集抑制作用)について解説していきます。
低用量アスピリンによる抗血小板作用
血小板の凝集促進や抑制にはアラキドン酸から合成される以下の物質が関与しています。
- トロンボキサンA2(TXA2):凝集促進作用
- プロスタグランジンI2(PGI2:別名はプロスタサイクリン):凝集抑制作用
これらは共にシクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素によって合成されています。
低用量のアスピリンはCOX阻害作用を示しますが、特にTXA2の合成に関与する経路を抑制し、TXA2の合成を抑制します。
ちなみにですが、高用量のアスピリンではTXA2とPGI2の両経路を阻害してしまうため、血小板の凝集抑制作用と促進作用が互いに打ち消されてしまいます。
これをアスピリンジレンマと呼んでいますね。
タケキャブ(ボノプラザン)の作用機序
前述のCOXにはCOX-1とCOX-2が知れらていて、様々なプロスタグランジン(PG)の合成にも関わっています。
- COX-1:胃粘膜保護、腎機能維持といった生理機能維持のPGの合成
- COX-2:炎症・疼痛を引き起こすPGの合成
低用量アスピリンを長期間投与していると、胃粘膜保護に関わっているPGの合成を抑制してしまい、しばしば胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症することがあります。
このため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往患者さんで低用量アスピリンを実施する場合、胃酸分泌抑制作用を有するPPIを併用することがガイドライン等でも推奨されています。1)
胃潰瘍の疾患やタケキャブの詳しい解説は別記事に書いていますが、本剤はプロトンポンプのカリウムイオン(K+)が結合する部位を可逆的に阻害する「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」のPPIです。
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タケキャブ(ボノプラザン)の作用機序と副作用【胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎】
続きを見る
その結果、カリウムイオン(K+)は壁細胞内に入ることができないため、水素イオン(H+)との交換ができなくなります。
副作用
0.1~5%未満に認められる副作用として、便秘、下痢、腹部膨満感、悪心、腹痛、食道炎、胃部不快感、そう痒、貧血、好酸球増多、血圧低下、浮腫などが報告されています。
重大な副作用として、
- 汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、再生不良性貧血(頻度不明)
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、剥脱性皮膚炎(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
- 脳出血等の頭蓋内出血、肺出血、消化管出血、鼻出血、眼底出血等(頻度不明)
- 喘息発作(頻度不明)
- 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
- 消化性潰瘍、小腸・大腸潰瘍(頻度不明)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には1日1回1錠(アスピリン/ボノプラザンとして100mg/10mg)を経口投与します。
収載時の薬価
収載時(2020年5月20日)の薬価は以下の通りです。
- キャブピリン配合錠:130.30円(1日薬価:130.30円)
算定根拠等については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】18製品+再生医療等製品(2020年5月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
キャブピリンはこんな薬
- 低用量アスピリンとPPIのタケキャブ(ボノプラザン)の配合剤
虚血性心疾患では長期的に低用量アスピリンの投与を行いますが、しばしば胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発生するため、PPIとの同時投与が原則です。
これまでPPIとしてタケキャブを使用する場合、服用錠剤数が多くなってしまうといった問題点もありました。
以上、今回は低用量アスピリンがよく使用される虚血性心疾患と共に、キャブピリン配合錠の作用機序について解説しました!
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