2.循環器系 11.血液・造血器系

エフィエント(プラスグレル)の作用機序と副作用【虚血性心疾患】

2021年12月24日エフィエント錠(一般名:プラスグレル塩酸塩)の効能・効果に「虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)」を追加することが承認されました!

第一三共|ニュースリリース

 

エフィエントはADP受容体阻害剤に分類されている抗血小板薬で、2014年3月24日に「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患」を適応とし承認されていますね。

 

木元 貴祥
これまでは「心疾患」のみでしたが、今後は「脳血管障害」にも使用可能です。

 

今回は血液凝固のメカニズムと虚血性心疾患、そしてエフィエント(プラスグレル)の作用機序についてご紹介します。

 

止血と血栓形成のメカニズム

我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。

止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。

出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。

これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。

 

次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。

二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。

 

虚血性心疾患と血小板凝集

虚血性心疾患とは、心臓の栄養や酸素を供給する「冠動脈」が狭窄して詰まってしまうことで引き起こされます。

一般的に知られている「狭心症」や「心筋梗塞」が虚血性心疾患の代表例です。

 

虚血性心疾患の最も多い原因としては、生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満など)による動脈硬化が挙げられます。

 

生活習慣病が原因で、心臓の冠動脈血管内にプラーク(コレステロール等の塊)が生じることがあります。

プラークが傷ついてしまうと、その箇所に血小板が集まってきて一次血栓を生じます。

この血栓が大きくなって血管を詰まらせてしまうと、血流がストップしてしまい、心臓に十分な栄養や酸素が届けられなくなってしまいます。

この病態のことを虚血性心疾患と呼んでいます。

 

虚血性心疾患の治療

狭心症の発作に対してはニトログリセリンが使用されます。

その他、冠動脈の血管拡張作用のある薬剤が使用されることもあります。

  • β遮断薬
  • カルシウム拮抗薬
  • ACE阻害薬ARB
  • アスピリン:抗血小板作用

 

また、場合によっては、カテーテルを用いて閉塞している冠動脈を拡張する手技である「経皮的冠動脈形成術(PCI)」が行われることもあります。

今回ご紹介するエフィエントはPCIが適応される患者さんに対して使用できる薬剤です。

 

血小板凝集のメカニズム

血小板が凝集する際には、血小板内のカルシウム(Ca2+)濃度が上昇することが知られています。

血小板内のCa2+はcAMP(サイクリックエーエムピー)によって調節されています。

  • cAMP濃度低下⇒Ca2+濃度上昇
  • cAMP濃度上昇⇒Ca2+濃度低下

また、cAMPは、
ATPにグアニル酸シクラーゼが作用することで合成されます。

 

血小板が凝集する際には血小板細胞膜上にある「ADP受容体」が刺激され、グアニル酸シクラーゼの作用が抑制されます。

その結果、cAMP濃度が低下して血小板内のCa2+濃度が上昇し、血小板が凝集します。

 

エフィエント(一般名:プラスグレル)の作用機序

エフィエントはADP受容体阻害剤に分類されている抗血小板薬です。

エフィエントはプロドラッグのため、体内に投与されてからカルボキシエステラーゼによって活性代謝物へと変換されます。

この活性代謝物がADP受容体を阻害することで、グアニル酸シクラーゼが活性化し、cAMP濃度が上昇します。

 

その結果、血小板内のCa2+濃度が低下し、血小板の凝集を抑制することができます。

このように、血小板の働きを抑えることから「抗血小板薬」と呼ばれています。

 

用法・用量

<経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患>

通常、成人には、投与開始日にプラスグレルとして20mgを1日1回経口投与し、その後、維持用量として1日1回3.75mgを経口投与します。

 

<虚血性脳血管障害患者(アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)での再発抑制>

通常、成人には、プラスグレルとして3.75mg を1 日1 回経口投与します。

 

副作用

主な副作用は、皮下出血、鼻出血、血尿、血管穿刺部位血腫、皮下血腫、などが報告されています。

 

エフィエントの特徴とあとがき

他のADP受容体阻害作用薬には、プラビックス(一般名:クロピドグレル)がありますが、この薬剤は薬物代謝酵素の遺伝多型(特にCYP2C19の遺伝子多型)によって個々人で治療効果に差があることが問題となっています。

エフィエントはCYP2C19の遺伝子多型の影響を受けにくいことが特徴とされています。

 

以上、今回は血液凝固のメカニズムとエフィエント(プラスグレル)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /

本サイトが書籍化(オフライン化)して新発売

>>Amazonで立ち読み

新薬情報オンラインの更新情報をLINEで受け取ろう!

PASSMED公式LINE、はじめました。

友だち追加

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

 

日々の情報収集に最適

薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼
私の勉強法紹介

-2.循環器系, 11.血液・造血器系
-,