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2024年9月24日、「高カリウム血症」を効能・効果とするビルタサ懸濁用散分包(パチロマー)が承認されました!
ゼリア新薬工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ビルタサ懸濁用散分包8.4g |
一般名 | パチロマーソルビテクスカルシウム |
製品名の由来 | 米国、欧州などにおける販売名「Veltassa」より 日本における販売名を「ビルタサ懸濁用散分包 8.4 g」とした。 |
製造販売 | ゼリア新薬工業(株) |
効能・効果 | 高カリウム血症 |
用法・用量 | 通常、成人には、パチロマーとして8.4gを開始用量とし、 水で懸濁して、1日1回経口投与する。 以後、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、 最高用量は1日1回25.2gとする。 |
収載時の薬価 | 8.4g1包:949.50円 |
発売日 |
これまで高カリウム血症で使用されていた薬剤としては以下があります。直近では、2020年にロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸)が登場しました。
- ポリスチレンスルホン酸Ca製剤(カリメートなど)
- ポリスチレンスルホン酸Na製剤(ケイキサレート)
- ロケルマ懸濁用散分包(ジルコニウムシクロケイ酸)
機序的にはカリメートなどと同じくカルシウム含有のポリマー製剤ですが、ビルタサはより少量の水(1包あたり約40~80mL)で服用可能な1日1回投与の製剤です。
今回は高カリウム血症とビルタサの作用機序について解説します。
高カリウム血症とは
カリウム(K+)は細胞内陽イオンの主成分として存在していて、主な働きには以下があります。
- 浸透圧の維持
- 酸塩基平衡
- 筋肉の収縮
- 神経伝達
筋肉細胞に多く含まれていて、特に心筋の活動には重要な役割を担っています。
通常、生体内のカリウム濃度は極めて狭い範囲で保たれていますが、様々な原因によってカリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ってしまうのが高カリウム血症です。1)
軽度の高カリウム血症ではあまり症状がなく、あったとしても吐き気やしびれなど軽度です。
ただ、重度の高カリウム血症(目安は6.0mEq/L以上)の場合、
- 筋肉痛
- 筋力低下
- 心室細動
- 心静止
を引き起こすことがありますので早期の治療が望まれます。
原因
高カリウム血症を引き起こす原因としては、
- カリウム摂取量の増加
- カリウム排泄量の低下
が主に挙げられます。
通常、カリウムは腎臓から排泄しますが、急性腎障害や慢性腎臓病(CKD)の場合、その排泄機能が低下して高カリウム血症を発症しやすいと言われています。
-
エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】
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その他、薬剤性の高カリウム血症として、
- 心不全治療薬
- ACE阻害薬
- ARB
- β遮断薬
- アルドステロン拮抗薬
等によって生じることもあります。
例えば、心不全でよく使用されるエンレスト(サクビトリルバルサルタン)も高カリウム血症の副作用が知られています。
-
エンレスト(サクビトリルバルサルタン)の作用機序【心不全】
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治療
原因が明確な場合にはそれを取り除く治療を行います。(例:原因薬物の中止)
併せて以下の薬物療法が行われることもありますね。
- 利尿薬
- カリウム吸着薬(カリメート、ケイキサレート、ロケルマなど)
ビルタサ(パチロマー)の作用機序
ビルタサは、ナトリウムを含まない非吸収性の陽イオン吸着ポリマーです。
水に懸濁して服用すると、腸管内でカリウム(K+)を吸着してカルシウム(Ca2+)を放出します。
ただし、マグネシウム(Mg2+)等も一部吸着してしまうようですね。
その結果、腸管内のカリウム値を低下させ、血漿中のカリウム濃度も低下すると考えられています。
用法・用量
通常、成人には、パチロマーとして8.4gを開始用量とし、水で懸濁して、1日1回経口投与します。
以後、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回25.2gとします。
ちなみに、8.4g 1包を飲む場合には約40~80mLの水に懸濁することとされていますね。
2包の場合は約80mLとのことです。
副作用
2%以上に認められる副作用として、便秘(14.5%)が報告されています。
重大な副作用としては、
- 低カリウム血症(4.6%)
- 腸管穿孔、腸閉塞(いずれも頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
ロケルマとの違い・比較
現在、高カリウム血症治療薬としては3成分4製品が承認されています。
- ポリスチレンスルホン酸Ca「三和」(ポリスチレンスルホン酸Ca)
- カリメート(ポリスチレンスルホン酸Ca)
- ケイキサレート(ポリスチレンスルホン酸Na)
- ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸Na)
ポリスチレンスルホン酸Ca「三和」は元々、「アーガメイト」として販売されていました。
-
ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸)の作用機序・特徴【高K血症】
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ロケルマは2020年に承認された新薬ですので、ロケルマとビルタサの比較について一覧表を作成してみました。
ロケルマはNaを含んでいますが、ビルタサはNaを含まないため、食塩制限のあるような患者さんに適しているかもしれません。
ただし、ビルタサは膨潤が認められるため、腸閉塞の患者さんに対しては禁忌とされています。
収載時の薬価
収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- ビルタサ懸濁用散分包8.4g1包:949.50円(1日薬価:1,517.90円)
以下の記事で算定根拠等について解説しています。
-
【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ビルタサはこんな薬
- ナトリウムを含まない非吸収性の陽イオン吸着ポリマー
- カリウムを取り込み、カルシウムを放出する
- 水に懸濁させて服用する
- 1日1回の服用
以上、今回は高カリウム血症とビルタサの作用機序について解説しました!
参考資料・論文等
- MSDマニュアル|高カリウム血症
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