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厚生労働省は2014年7月2日、「去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とするザイティガ錠(一般名:アビラテロン酢酸エステル)を承認したと発表がありました^^
今回は前立腺がんとザイティガ(アビラテロン)の作用機序についてご紹介します。
前立腺がんとは
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。
この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。
基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。
自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。
前立腺がんの発生・増殖メカニズム
前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。
男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎や前立腺がんからも分泌されます。
前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。
アンドロゲンの合成経路
アンドロゲンは精巣・副腎・前立腺がんで以下の図のような経路で合成されます。
アンドロゲンの合成経路の途中には「CYP17」と呼ばれるタンパク質がその変換に関わっていることが知られています。
前立腺がんの治療
早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、
- 手術
- 放射線療法
- ホルモン療法
などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。
一方、発見時に遠隔転移を有する前立腺がんの場合、ホルモン療法が基本となります。
前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。
昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。
しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による「内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。
現在、初回のホルモン療法としては、
- LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害
などを適宜併用した治療が行われます。
これらの初回ホルモン療法を行っても、がんの増殖が抑えられない場合、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と診断されます。
今回ご紹介するザイティガはCRPCに使用できる薬剤として承認されました。
ザイティガ(一般名:アビラテロン)の作用機序
ザイティガは、アンドロゲン合成経路に関与する「CYP17」を特異的に阻害するといった作用機序を有した薬剤です。
CYP17が阻害されることで、精巣・副腎・前立腺がんでのアンドロゲンの合成が阻害され、その結果、前立腺がん細胞の増殖が抑制されると考えられます。
ザイティガ(一般名:アビラテロン)の副作用
主な副作用には、肝機能異常、低カリウム血症、高脂血症、高血圧、疲労、浮腫などが報告されています。
ザイティガ(一般名:アビラテロン)の注意点
ザイティガは、上記のCYP17を阻害することで「コルチゾール(糖質コルチコイドの一種)」の生成も抑制してしまいます。
コルチゾール量が低下すると、フィードバック機構によってACTH濃度が上昇し、それに伴い「鉱質コルチコイド」の量が増加します。
鉱質コルチコイドの増加によって、高血圧・低カリウム血症・浮腫などの症状が発現してしまうことから、ザイティガを使用する際には「糖質コルチコイド」を補充しておく必要があります。
一般的には、糖質コルチコイドのプレドニゾロンと併用して用いられます。
ザイティガ(一般名:アビラテロン)の用法用量
プレドニゾロンとの併用において、1日1回1000mgを空腹時に経口投与します。
あとがき
類似薬で同じ適応の薬剤としては、2014年3月に承認されたイクスタンジ(一般名:エンザルタミド)があります。
最近、前立腺がんの薬剤が次々に登場しています。
薬剤の選択肢が増えたことで治療の幅が広がると期待しています♪
2018年3月追記:
2018年2月16日に「内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺がん」の適応が追加されました。
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