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2014年7月4日厚生労働省は、「前立腺がん」を効能・効果とするジェブタナ点滴静注(一般名:カバジタキセル アセトン付加物)を承認しました。
今回は前立腺がんとジェブタナ(カバジタキセル)の作用機序についてご紹介します。
前立腺がんとは
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。
この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。
基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。
自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。
前立腺がんの発生・増殖メカニズム
前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。
男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎や前立腺がんからも分泌されます。
前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。
前立腺がんの治療
早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、
- 手術
- 放射線療法
- ホルモン療法
などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。
一方、発見時に遠隔転移を有する前立腺がんの場合、ホルモン療法が基本となります。
前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。
昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。
しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による「内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。
現在、初回のホルモン療法としては、
- LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害
などを適宜併用した治療が行われます。
2018.4.12追記:
最近では、ザイティガ(一般名:アビラテロン)が初回のホルモン療法と併用して使用できるようになりました。
これらの初回ホルモン療法を行っても、がんの増殖が抑えられない場合、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と診断されます。
CRPCに使用できる薬剤としては、
- ザイティガ(一般名:アビラテロン)
- イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)
- タキソテール(一般名:ドセタキセル)
などがあります。
今回ご紹介するジェブタナはCRPCに使用できる薬剤(ザイティガ、イクスタンジ、タキソテール)にも抵抗性を示した患者さんに対して使用できる薬剤です!
それではここからジェブタナが関与する微小管とがんの細胞分裂メカニズムについてご説明します。
がん細胞分裂(増殖メカニズム)と微小管
がんが細胞分裂を行う際には、まず細胞内のDNAを2倍に増やします(これを“複製”と呼んでいます)。
2倍に増えたDNAは「微小管」と呼ばれる糸のような構造物によって、それぞれ細胞の両極(両側)に均等に運ばれていきます。
その後、細胞の分裂が開始され、がん細胞の細胞分裂が完了します。
上記に関与している微小管は「チュブリン」と呼ばれるタンパク質の集合体です。
細胞分裂開始時にチュブリンが集まってきて微小管を形成します(これを“重合”と呼んでいます)。
そして細胞分裂が完了すると、チュブリンがバラバラになって微小管が分解されます(これを“脱重合”と呼んでいます)。
ジェブタナ(一般名:カバジタキセル)の作用機序
ジェブタナは微小管の脱重合を阻害するといった作用機序を有しており、タキサン系の抗がん剤に分類されています。
本来、細胞分裂完了と同時に分解されるはずの微小管が細胞内に残ったままになってしまい、がん細胞は細胞分裂を完了することができなくなります。
その結果、がん細胞は分裂できないままになり、死滅していってしまいます。
このようにジェブタナは微小管の脱重合を抑制(重合を促進して微小管を安定化)することによって、がん細胞の増殖を抑えると考えられています。
ジェブタナ(一般名:カバジタキセル)の副作用
主な副作用として好中球減少症、発熱性好中球減少症、疲労、悪心、下痢、食欲減退、味覚異常などが報告されています。
特に、発熱性好中球減少症は頻度が高く、重篤化すると生命に関わるため、注意が必要です!
発熱性好中球減少症の対策については以下の記事をご参考ください。
類薬とあとがき
同様の作用機序(微小管の脱重合阻害)を有するタキサン系の抗がん剤としては、
などがありますが、前立腺がんにはタキソテールのみが適応を有しています。
近年、前立腺がんに使用できる薬剤が次々に登場してきています。
今後の薬剤開発にも大いに期待したいと思います。
以上、今回は前立腺がんとジェブタナ(カバジタキセル)の作用機序についてご紹介しました。
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