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ジーラスタ(ペグフィルグラスチム)の作用機序と副作用【G-CSF製剤】

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2024年5月17日ジーラスタ皮下注(一般名:ペグフィルグラスチム)の効能・効果に「造血幹細胞の末梢血中への動員」を追加することが承認されました!

 

2022年2月25日には「同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員」の効能・効果が承認されていて、今回は「自家末梢血幹細胞移植」に対しての適応拡大です。

それに伴い、効能・効果は「造血幹細胞の末梢血中への動員」としてまとめられました。

 

ジーラスタは2014年9月26日に「がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制」を効能・効果として承認されていますね。

 

また、2022年7月28日には、自動投与デバイスである「ジーラスタ皮下注 3.6mg ボディーポッド」が承認されました(ニュースリリース)。

通常、ジーラスタはがん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるため、これまでは翌日以降に通院が必要でした。ボディーポッド製剤は、薬剤が一定時間後に自動で投与される機能を搭載しているため、翌日以降の通院が不要になりますね!

 

装着方法や、患者さん向けの資料については、メーカーのHPに掲載されているので、各自ご確認くださいませ~♪

ジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッドの装着方法

ジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッドの装着方法(医療従事者向け)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ちなみに、これまでのジーラスタ皮下注とボディーポッド製剤は効能・効果が異なるため注意が必要です。
ジーラスタ皮下注 ジーラスタ皮下注
ボディーポッド
がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
造血幹細胞の末梢血中への動員 ×

 

今回は、がん化学療法と発熱性好中球減少、そしてジーラスタ(ペグフィルグラスチム)の作用機序についてご紹介します。

 

白血球(好中球)の役割と分化

通常、生体は白血球(リンパ球、顆粒球)等によって免疫機能が保たれています。

従って、少しの菌やウイルスに接触しても体調を崩すことはありません。

白血球の中でも特に「好中球」は血中の割合が多く、免疫機能の中心を担っています。

このように免疫機能を担っている白血球、そして赤血球や血小板等の血球成分は「骨髄」に存在している「造血幹細胞」から作られています。

造血幹細胞は様々な刺激や因子を受けて、各血球成分へと成長します。(これを“分化”と呼んでいます)

 

特に、好中球は造血幹細胞⇒好中球前駆細胞⇒好中球、と分化しますが、これを促進する因子として「G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)」が知られています。

 

がん化学療法と骨髄抑制

がん患者さんが抗がん剤治療(がん化学療法)を受けている場合、抗がん剤は様々な臓器を障害してしまいます(副作用の発現)。

障害を受けてしまいやすい臓器としては、以下のような体内で活発に増殖する細胞が多い臓器です。

  • 髪の毛
  • 骨髄
  • 皮膚
  • 腸管
  • 粘膜

このうち、骨髄が障害されてしまい、その機能が低下することを「骨髄抑制」と呼んでいます。

 

骨髄の機能が低下すると、白血球の中でも特に免疫に重要な「好中球」の産生量が減ってしまい、免疫力が低下してしまいます。

 

免疫力が低下することで感染症にかかりやすくなってしまい、重症化してしまうこともあるため注意が必要となります。

 

発熱性好中球減少症とは

抗がん剤の骨髄抑制によって、好中球が著しく低下し、かつ発熱が持続して感染症が疑われる状態を「発熱性好中球減少症」と呼んでいます。

 

放置してしまうと重篤な感染症敗血症等を引き起こし死に至る可能性もあるため、「好中球」を増加させるための迅速な処置が必要となります。

従って、発熱性好中球減少症は発現させないように「予防」することが非常に重要です!

 

今回ご紹介するジーラスタは、発熱性好中球減少症のリスクが高い抗がん剤を使用する際、その発現を予防する目的で使用できる薬剤です。

 

ジーラスタ(一般名:ペグフィルグラスチム)の作用機序

ジーラスタは「好中球」の増殖を促したり、機能を亢進させたりする「G-CSF製剤」に分類されています。

 

以下のような働きによって、好中球の増加・機能亢進を促すと考えられています。

  1. 好中球前駆細胞から好中球への分化促進
  2. 骨髄内から血管内への好中球の放出促進
  3. 好中球の機能亢進

 

以上の作用機序によって、発熱性好中球減少症のリスクが高い抗がん剤と併用して用いることで発熱性好中球減少症の発現を予防できると考えられます。

 

発熱性好中球減少症のリスクが高い抗がん剤の例として、

などがあります。

ジェブタナ(カバジタキセル)の作用機序と副作用【前立腺がん】

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ジーラスタ皮下注の特徴と類薬との違い

同じくG-CSF製剤の類薬としては、以下があります。

  • グラン(一般名:フィルグラスチム)
  • ノイトロジン(一般名:レノグラスチム)

これらのG-CSF製剤は発熱性好中球減少症等の「治療目的」で使用することができますが、「予防目的」で使用することはできません

 

ジーラスタは初めて「予防目的」で使用できるG-CSF製剤です。

 

また、ジーラスタは有効成分のフィルグラスチムを「PEG(ペグ)化」している製剤です。

タンパク質をペグ化すると、体内での分解が抑制されたり体外への排泄が減少することで、半減期が延長し、血液中でより長期間残存するため、医薬品の作用時間を延長することが可能になります!

 

副作用

主な副作用としてLDH上昇、背部痛、発熱、関節痛、倦怠感、筋肉痛、などが報告されています。

 

あとがき

発熱性好中球減少症を予防できることから、好中球減少症による感染症発症リスクを低減し、化学療法の投与量やスケジュール遵守が可能となるといった、医療上のメリットも期待されています。

 

以上、本日は初めての持続型G-CSF製剤のジーラスタ皮下注をご紹介しました☆

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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