6.腎・泌尿器系 12.悪性腫瘍

ゴナックス(デガレリクス)の作用機序と副作用【前立腺がん】

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前立腺がん」を効能・効果とするゴナックス皮下注用80mg、同120mg、同240mg(一般名:デガレリクス酢酸塩)に、12週間隔投与を追加することが2019年1月8日に承認されました!

製薬会社

  • 製造販売:アステラス製薬(株)
  • 提携:フェリング・ファーマ(株)

 

これまでは4週間間隔投与のみでしたが、12週間隔投与の追加に伴い、240mg製剤も追加されています。

今回は前立腺がんとゴナックス(デガレリクス)の作用機序についてご紹介します。

 

前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。

この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。

基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。

自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。

 

前立腺がんの発生・増殖メカニズム

前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。

男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎前立腺がんからも分泌されます。

 

前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。

 

アンドロゲン合成のプロセス

アンドロゲンは様々な生体内ホルモンによってその分泌量が調節されています。

 

視床下部から「GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)」が分泌され、下垂体前葉のGnRH受容体に結合します。

そうすると下垂体前葉からLH(黄体形成ホルモン)ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌され、それぞれ精巣と副腎を刺激し、アンドロゲンの分泌を促します。

 

このように様々なホルモンによってアンドロゲンの分泌量が調節されていますが、前立腺がんではアンドロゲンの分泌が過剰になってしまっています。

 

前立腺がんの治療

早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、

  • 手術
  • 放射線療法
  • ホルモン療法

などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。

 

一方、発見時に遠隔転移を有する前立腺がんの場合、ホルモン療法が基本となります。

前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。

 

昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。

しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。

 

現在、初回のホルモン療法としては、

  • LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
  • GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
  • 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害

などを適宜併用した治療が行われます。

 

今回ご紹介するゴナックスは「GnRHアンタゴニスト」に分類されている薬剤です!

 

ゴナックス(一般名:デガレリクス)の作用機序

ゴナックスは下垂体前葉の「GnRH受容体」を可逆的に遮断するGnRHアンタゴニスト製剤です。

 

下垂体前葉にGnRHの刺激が伝わらなくなるため、LHとACTHの分泌が抑制され、結果的に精巣や副腎からのアンドロゲン分泌が抑制されます。

ゴナックス皮下注用の副作用

主な副作用として、注射部位疼痛、注射部位硬結、注射部位紅斑、ほてり、体重増加、発熱、注射部位腫脹、高血圧などが報告されています。

 

ゴナックス皮下注用の用法用量

通常、成人にはデガレリクスとして、初回は240mgを1力所あたり120mgずつ腹部2力所に皮下投与します。

2回目以降は、初回投与4週間後より、維持用量を投与しますが、間隔によって以下の2パターンがあります。

  • 4週間隔で繰り返す場合:80mgを維持用量とし、腹部1力所に皮下投与します。
  • 12週間隔で繰り返す場合:480mgを維持用量とし、1力所あたり240mgずつ腹部2力所に皮下投与します。

 

今回、12週間隔が追加されることから、240mg製剤も新たに追加されました!

患者さんにとっては投与間隔が空くことから、煩雑さの軽減になるのではないでしょうか。

 

まとめ・あとがき

ゴナックスはこんな薬

  • GnRH受容体を遮断する
  • アンドロゲンの分泌を抑制する
  • 副作用としては注射部位関連が多い
  • 維持投与の間隔は4週間と12週間がある

 

ゴナックス等のホルモン療法に抵抗性を示した場合には現在様々な治療選択肢があります。

 

今後も新たな薬剤の登場で前立腺がんの予後向上に期待したいと思います☆

以上、今回は前立腺がんとゴナックス(デガレリクス)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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