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2024年6月24日、レットヴィモ(セルペルカチニブ)の効能・効果に「RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍」を追加することが承認されました!
イーライリリー|ニュースリリース
基本情報
製品名 | レットヴィモカプセル40mg/80mg |
一般名 | セルペルカチニブ |
製品名の由来 | 不明 |
製造販売 | 日本イーライリリー(株) |
効能・効果 | ●RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様がん ●RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍 |
用法・用量 | 通常、成人にはセルペルカチニブとして1回160mgを1日2回経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 ※小児に対しては記事内参照 |
収載時の薬価 | 40mg:3,680.00円 80mg:6,984.50円 |
発売日 | 2021年12月13日新発売(HP) |
レットヴィモは2021年9月27日に「RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患として承認された初の選択的RET阻害薬ですね。その後、2022年2月25日には「RET融合遺伝子陽性の甲状腺がん・甲状腺髄様がん」に対して適応拡大されました。
臓器横断的な適応拡大に伴い、既適応症の「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」と「RET融合遺伝子陽性の根治切除不能な甲状腺がん」は削除されて、「RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍」にまとめられました。
他疾患ではマルチキナーゼ阻害薬の一部(例:レンビマ、カボメティクス、スチバーガ)がRET阻害作用を示しますが、RET選択的阻害薬は国内初ですね。
類薬でも、既に臓器横断的な使用が承認されていますので、併せてご確認くださいませ♪
- MSI-High固形がん:キイトルーダ(ペムブロリズマブ)
- BRAF遺伝子変異の固形がん:タフィンラー(ダブラフェニブ)とメキニスト(トラメチニブ)
- NTRK陽性の固形がん:ロズリートレク(エヌトレクチニブ)、ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)
今回は非小細胞肺がんと甲状腺がん、RET融合遺伝子、そしてレットヴィモ(セルペルカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
-
ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 |
|
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
今回ご紹介するRET融合遺伝子陽性は非小細胞肺がんの1~2%に認められると言われています。2)
レットヴィモの根拠とされている第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(LIBRETTO-001)では化学療法未治療例と既治療例が含まれていて、海外では初回化学療法から使用可能です。
日本でも添付文書の適応上は初回から使用可能ですね!
甲状腺がんと治療
甲状腺がんは、気管の付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じるがんの一種です。
最も多く見られる甲状腺がんの種類である乳頭がんと濾胞がんは、分化型甲状腺がんとして分類され、甲状腺がんのおよそ95%を占めます。その他、未分化がん(頻度:3~5%)、甲状腺髄様がん(頻度:1~2%)があります。
分化型甲状腺がん患者様の多くは、手術および放射性ヨウ素療法で治療できる一方、これらの治療に適さない少数の患者さんもいます。
手術不能で放射性ヨウ素療法に抵抗を示した場合、レンビマ(レンバチニブ)などの分子標的薬が使用できます。
-
レンビマ(レンバチニブ)の作用機序【肝細胞/甲状腺/子宮体/腎細胞がん】
続きを見る
また、甲状腺がんの約70%はRET融合遺伝子陽性3)であると言われていて、RETを標的とする治療薬の開発が望まれていました。
今回ご紹介するレットヴィモはRET融合遺伝子陽性の甲状腺がんに使用することが可能です!!
RET融合遺伝子陽性のがん細胞
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞は増殖因子の結合する受容体を持っています。
受容体を構成する遺伝子の1つに「RET遺伝子」が知られていて、正常なRET遺伝子を持つ受容体では、増殖因子が結合することで刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられることでがん細胞が増殖します。
しかし、増殖因子が存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
何らかの原因でRET遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子が「RET融合遺伝子」です。
RET融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なRET融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。
レットヴィモ(セルペルカチニブ)の作用機序
レットヴィモは異常なRET融合タンパクに対する阻害薬です。RET融合タンパクの働きが抑制されることで、がん細胞の増殖抑制効果が得られると期待されています。
肺がん、甲状腺がん以外の固形がんでも、しばしばRET融合遺伝子陽性のことがあります。今後、レットヴィモは癌腫を問わず、臓器横断的なRET融合遺伝子陽性のがんに対して使用可能となる見込みです。
エビデンス紹介:LIBRETTO-001試験
根拠となったのはRET融合遺伝子陽性の以下のがん患者さんを対象とした国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(LIBRETTO-001試験)です。日本人も含まれています。2-3)
- 非小細胞肺がん(化学療法未治療例39例と既治療例105例)
- 甲状腺がん(化学療法未治療例88例と既治療例19例)
- 非髄様甲状腺がん
- 固形がん
今回は非小細胞肺がん、甲状腺がん、固形がんの部分を紹介します。主要評価項目は「奏効率」とされ、結果は以下の通りでした。
- 非小細胞肺がんの奏効率(化学療法未治療例):85%(95%CI:54%~73%)2)
- 非小細胞肺がんの奏効率(化学療法既治療例):64%(95%CI:70%~94%)2)
- 甲状腺がんの奏効率(化学療法未治療例):73%(95%CI:62%~82%)3)
- 甲状腺がんの奏効率(化学療法既治療例):79%(95%CI:54%~94%)3)
- 固形がんの奏効率:43.9%(95%CI:28.5-60.3%)4)
LIBRETTO-431試験(非小細胞肺がん)
参考までに、非小細胞肺がんの初回治療(一次化学療法)におけるエビデンスを紹介します(LIBRETTO-431試験)。5)
本試験は、RET融合遺伝子陽性の非小細胞がん患者さんを対象に、化学療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド±キイトルーダ)群とレットヴィモ群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)とされ、結果は以下の通りでした。
化学療法群 | レットヴィモ群 | |
PFS中央値 | 11.2か月 | 24.8か月 |
HR=0.46 (95%CI:0.31-0.70) P<0.001 |
||
奏効率 | 65% | 84% |
用法・用量
成人と小児で容量が異なります。
<成人>
通常、成人にはセルペルカチニブとして1回160mgを1日2回経口投与します。
患者の状態により適宜減量
<小児>
通常、12歳以上の小児には体表面積に合わせて次の投与量(セルペルカチニブとして1回約92mg/m2)を1日2回経口投与します。
体表面積 | 1回投与量 |
1.2m2未満 | 80mg |
1.2m2以上1.6m2未満 | 120mg |
1.6m2以上 | 160mg |
副作用
20%以上に認められる副作用として、口内乾燥(42.8%)、下痢、浮腫、疲労、発疹などが報告されています。
また、重大な副作用としては
- 肝機能障害(39.4%)
- QT間隔延長(14.4%)
- 過敏症(10.6%)
- 高血圧(29.4%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2021年11月25日)の薬価は以下の通りです。
- レットヴィモカプセル40mg:3,680.00円
- レットヴィモカプセル80mg:6,984.50円
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】12製品+再生医療等製品(2021年11月25日)
続きを見る
まとめ・あとがき
レットヴィモはこんな薬
- RET融合タンパクの選択的阻害薬
- RET融合タンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制する
- 1日2回経口投与
- 臓器横断的に対しても使用可能となった
RET融合遺伝子陽性の固形がんに対しても治療効果が認められているため、今後は臓器横断的に使用可能となる見込みです。既に臓器横断的な使用が可能な薬剤は以下がありますので、併せてご確認くださいませ♪
- MSI-High固形がん:キイトルーダ(ペムブロリズマブ)
- BRAF遺伝子変異の固形がん:タフィンラー(ダブラフェニブ)とメキニスト(トラメチニブ)
- NTRK陽性の固形がん:ロズリートレク(エヌトレクチニブ)、ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)
-
ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん】
続きを見る
以上、今回は非小細胞肺がん・甲状腺がんとRET融合遺伝子、そしてレットヴィモ(セルペルカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2023年版
- LIBRETTO-001試験(非小細胞肺がん):N Engl J Med 2020; 383:813-824
- LIBRETTO-001試験(甲状腺がん):N Engl J Med 2020; 383:825-835
- LIBRETTO-001試験(固形がん):Lancet Oncol. 2022 Oct;23(10):1261-1273.
- LIBRETTO-431試験(非小細胞肺がん):N Engl J Med 2023;389:1839-1850
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