11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

オムジャラ(モメロチニブ)の作用機序【骨髄線維症】

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2024年5月24日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、「骨髄線維症」を対象疾患とするオムジャラ錠(モメロチニブ)の承認が了承されました!

グラクソ・スミスクライン|申請のニュースリリース

現時点では未承認のため、ご注意ください。

基本情報

製品名 オムジャラ錠100mg/150mg/200mg
一般名 モメロチニブ塩酸塩水和物
製品名の由来
製造販売 グラクソ・スミスクライン(株)
効能・効果 骨髄線維症
用法・用量 通常、成人にはモメロチニブとして200mgを1日1回経口投与する。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価
発売日

 

オムジャラは、新規のJAK1/2阻害薬ですね。加えて、アクチビンA受容体1型(ACVR1)の阻害作用も有している新薬です!

 

木元 貴祥
既に骨髄線維症では、JAK阻害薬のジャカビ錠(ルキソリチニブ)が使用されていますね。

 

今回は骨髄線維症とオムジャラ(モメロチニブ)の作用機序について解説します。

 

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骨髄線維症とは

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気を白血病と総称しています。

 

木元 貴祥
本当は細かく分類すると100種類以上(WHO分類)あるのですが・・・割愛します。。

 

血液細胞の元となる細胞として、骨髄内に存在する造血幹細胞が知られています。

 

骨髄線維症は、造血幹細胞に異常が発生(腫瘍化)し、骨髄内に線維物質のコラーゲンを分泌する未熟細胞が増え、コラーゲンが大量に産生される疾患です。

その結果、骨髄が繊維化して、骨髄での造血ができなくなってしまいます。

 

それにより、脾臓や肝臓で代替的に造血(髄外造血)が行われるようになりますが、髄外造血によって産生された血球は異常・未熟であることが知られています。つまり、正常の造血能を有さない血球細胞ということです。

また、肝臓においては、血中への鉄の供給を抑制する「ヘプシジン」と呼ばれるペプチドホルモンが産生され、これによって、赤血球の機能が低下し、貧血などの症状を呈します。

骨髄線維症の原因:JAKの活性化による骨髄の繊維化および髄外造血と、肝臓のヘプシジンの分泌促進による貧血症状

 

木元 貴祥
脾臓での髄外造血によって、脾臓に負担がかかって脾腫が生じ、腹部膨満感などの自覚症状が現れることもあります。

 

骨髄線維症では、腫瘍化した異常造血幹細胞にJAK2遺伝子の変異が認められることが知られています。

JAK2は赤血球の造血やサイトカインのシグナル伝達を担っているチロシンキナーゼのため、これに変異があることが主な発症原因だと考えられます。

 

治療

骨髄線維症は、年齢・症状・血液検査などに応じて、以下の4つのリスクに分類されます。1)

  • 低リスク
  • 中間-Ⅰリスク
  • 中間-Ⅱリスク
  • 高リスク

 

低リスク/中間-Ⅰリスクの場合、予後は良好のため、症状があれば症状に対する対症療法が基本です。症状がなければ無治療経過観察の方針が望ましいとされています。1)

中間-Ⅱリスク/高リスクの場合、予後不良のため、合併症がなく適切なドナーが得られる場合は同種造血幹細胞移植を考慮します。ただ、移植が適応とならない場合には、JAK阻害薬のジャカビ(ルキソリチニブ)が治療選択肢となり得ます。1)

 

木元 貴祥
ジャカビは、基本的には中間-Ⅱリスク以上に対して使用しますが、一部、低リスクで症状を有する場合にも使用されることがありますね。1)

 

今回ご紹介するオムジャラ(モメロチニブ)も、ジャカビと同様に中間-Ⅱリスク以上の骨髄線維症に対して効果が期待されているJAK阻害薬です。

また、ジャカビで治療抵抗性を示した場合の後治療としても期待されています。

 

オムジャラ(モメロチニブ)の作用機序

オムジャラは、骨髄線維症の原因となるJAK1およびJAK2を阻害する薬剤です。また、アクチビンA受容体1型(ACVR1:Activin A receptor type I)の阻害作用も有しています。2)

オムジャラ(モメロチニブ)の作用機序:JAK1/2阻害およびACVR1阻害作用を有する

 

JAK阻害薬ではしばしば貧血の副作用が問題となりますが、オムジャラのACVR1阻害作用によってヘプシジンの産生を抑制することで、血中への鉄の供給を促進し、赤血球の働きを活性化させることが示唆されています。それにより、貧血症状の改善も期待されています。

 

木元 貴祥
ムジャラは貧血の副作用が少なく、骨髄線維症による貧血症状の改善も期待されていますよ!

 

エビデンス紹介:A19-201試験

根拠となった主な臨床試験は、以下の2つの第Ⅲ相臨床試験です。3-4)

  • SIMPLIFY-1試験3)JAK阻害薬による治療歴のない骨髄線維症患者さんを対象とし、オムジャラとジャカビを比較した第Ⅲ相国際共同無作為化二重盲検試験
  • MOMENTUM試験4)既承認のJAK阻害薬による治療歴があり、症状及び貧血を有する骨髄線維症患者さんを対象に、オムジャラとダナゾールを比較した第Ⅲ相国際共同無作為化二重盲検試験

ダナゾールは、国内では骨髄線維症に対して未承認

 

代表として、SIMPLIFY-1試験をご紹介します。

本試験の主要評価項目は、24週時点における「脾臓が35%以上縮小した患者の割合」とされ、ジャカビに対するオムジャラの非劣性が検証されました。結果は下表の通りです。

ジャカビ群 オムジャラ群
脾臓が35%以上縮小した患者の割合 29% 26.5%
P=0.011(非劣性が証明)
総症状スコアが50%以上減少した患者の割合 42.2% 28.4%
P=0.98(非劣性が証明されず)
・血小板減少
・下痢
・めまい
・悪心
・貧血
・腹痛
29.2%
19.9%
11.6%
3.7%
38.0%
11.1%
18.7%
17.8%
15.9%
15.9%
13.6%
10.3%

 

主要評価項目は非劣性が達成できていますが、症状スコアについては非劣性が証明できず、数値だけ見るとジャカビの方が良好そうに見受けられます。

また、副作用については、オムジャラ群の方が血小板減少や貧血が低い傾向にあるものの、めまいや悪心については高い傾向です。

 

木元 貴祥
ジャカビは1日2回投与、オムジャラは1日1回投与のため、利便性と副作用プロファイルから使い分けが検討されると思われます。

 

なお、MOMENTUM試験4)においては、全身症状の改善、脾臓の縮小、および輸血非依存割合について、オムジャラ群で有意に改善が認められていました。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量

通常、成人にはモメロチニブとして200mgを1日1回経口投与します。

患者の状態により適宜減量

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

オムジャラはこんな薬

  • 骨髄線維症に使用するJAK阻害薬で、ACVR1阻害作用も有する
  • 貧血の症状改善効果が期待されている
  • 1日1回経口投与

 

中間-Ⅱリスク/高リスクの骨髄線維症を根治させるためには、同種造血幹細胞移植しか方法がありません。しかしながら、高齢であったり、移植が適さない場合、これまではジャカビしか選択肢がありませんでした。

 

オムジャラは新規のJAK阻害薬かつ、ACVR1阻害といった新規の作用機序を有する薬剤です。

 

木元 貴祥
今後は使い分け等の検討が進めば興味深いですね!

 

以上、今回は骨髄線維症とオムジャラ(モメロチニブ)の作用機序について解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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