7.炎症・免疫・アレルギー

ブイタマー(タピナロフ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/乾癬】

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2024年5月31日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて「アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬」を対象疾患とするブイタマークリーム(タピナロフ)の承認が了承されました!

⽇本たばこ産業|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ブイタマークリーム1%
一般名 タピナロフ
製品名の由来
製薬企業 製造販売:⽇本たばこ産業(株)
販売:鳥居薬品(株)
効能・効果 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬
用法・用量 <アトピー性皮膚炎>
通常、成人及び12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布する。
<尋常性乾癬>
通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布する。
収載時の薬価
発売日

 

ブイタマーは、国内初のアリル炭化水素受容体(AhR:Arylhydrocarbon Receptor)のモジュレーターです。

 

木元 貴祥
AhRを調整することで、アトピー性皮膚炎や乾癬の症状緩和・進行抑制効果が期待されていますよ。

 

外用薬のため、早期から使用可能となる見込みですね。

 

今回はアトピー性皮膚炎や乾癬の疾患と共に、ブイタマークリーム(タピナロフ)の作用機序とエビデンスについて解説します。

 

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アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。

 

主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。

具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。

 

部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。

 

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。

 

治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)

  1. 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
  2. スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
  3. 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く

 

ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。

その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服したりもします。

 

このような治療を行っても改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服が行われることもあります。

しかしながら、シクロスポリンには腎臓への悪影響などが懸念されており、長期間使用するのが難しいといった問題点も指摘されていました。

 

最近では新規JAK阻害薬による外用薬コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)や、新規PDE4阻害薬による外用薬モイゼルト軟膏(ジファミラスト)も使用可能です。

モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

今回ご紹介するブイタマーも外用薬のため、コレクチムやモイゼルトと同列で使用可能となる見込みです。

 

木元 貴祥
使い分けが気になるところですね。ちなみに、拙著「新薬情報オフライン」では、既存の外用薬について比較解説しています♪

新薬情報オフライン|22.モイゼルト軟膏

新薬情報オフライン|22.モイゼルト軟膏

『新薬情報オフライン』はこんな薬剤師におススメ|評判・使い方は?

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外用薬で効果不十分な場合、経口のJAK阻害薬(リンヴォックオルミエントなど)や、以下の生物学的製剤(注射剤)の使用が検討されます。

 

以下の記事で生物学的製剤について一覧表を作成しています。

イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序と類薬比較【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

木元 貴祥
続いて乾癬についてです。

 

皮膚のターンオーバーと乾癬

通常、皮膚は外からの刺激・乾燥等を防御したり、細菌・ウイルスの侵入を防ぐといった免疫機能を司っています。

 

構造としては、表面から順に、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

の3層に分かれています。

 

また、表皮はさらに

  • 角質層
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層

の4層から構成されています。

 

皮膚はその機能を保つため、基底層で常に新しい細胞が作られています

基底層で新しくできた細胞は徐々に角層へと押し上げられ、最終的には垢となって剥がれ落ちます。

 

このような皮膚の細胞サイクルを「ターンオーバー(分化)」と呼び、通常、約28~40日サイクルで繰り返されています。

ターンオーバーの仕組み

 

乾癬の患者さんでは、慢性の炎症を伴う何らかの原因で上記のターンオーバーのサイクルが4~5日と極端に短くなっています。

そのため、皮膚が盛り上がったような状態(“肥厚”と呼びます)になり、赤い発疹(“紅斑”と呼びます)を伴うことを特徴とします。

 

また、皮膚の一部がかさかさになって剥げ落ちる(“落屑”と呼びます)こともあります。

 

乾癬の分類

乾癬は5つの種類に分類されていますが、約9割は「尋常性乾癬」です。

  • 尋常性乾癬
  • 関節症性乾癬
  • 滴状乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 膿疱性乾癬

 

乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬は非常に稀ですが、発症すると症状が厳しいため、重症になることが多いです。

 

ちなみに、膿疱性乾癬における急性症状に対しては、2022年にスペビゴ(スペソリマブ)が登場しています。

スペビゴ(スペソリマブ)の作用機序【膿疱性乾癬】

続きを見る

 

木元 貴祥
今回ご紹介するブイタマーは、尋常性乾癬に使用できますね!

 

乾癬の重症度と治療

乾癬の重症度は皮膚の症状や状態、患者さんが感じる不便さ、等を指標に「軽症」、「中等症」、「重症」の3つに分けられています。

 

重症度に応じて、以下の4つの治療が単独もしくは組み合わせて行われますが、中心となるのは外用療法です。

  • 外用療法(塗り薬)
  • 光線療法(紫外線照射)
  • 内服療法(経口薬)
  • 生物学的製剤治療(注射薬)

 

外用療法(塗り薬)には、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するブイタマーは、外用療法の新たな治療選択肢となる見込みです。

 

内服療法(経口薬)には、チガソン(一般名:エトレチナート)等のビタミンA誘導体の他、免疫抑制薬やPDE4阻害薬のオテズラ(アプレミラスト)、TYK2阻害薬のソーティクツ(デュークラバシチニブ)が重症度に応じて使用されます。

ソーティクツ(デュークラバシチニブ)の作用機序【乾癬】

続きを見る

 

そして生物学的製剤治療(抗体薬)は基本的には、以下のような患者さんにしか使用することができません。2)

  • 外用療法、光線療法、内服療法で改善しない患者さん
  • 乾癬性関節炎で痛みが激しい患者さん
  • 乾癬性紅皮症膿疱性乾癬等の重症な患者さん

 

乾癬に使用する生物学的製剤については、以下の記事でまとめています。

【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

続いて、アトピー性皮膚炎や乾癬の原因について解説します。

 

アトピー性皮膚炎や乾癬の原因

アトピー性皮膚炎や乾癬の明確な原因は不明確ですが、

  • 遺伝的素因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。

 

具体的には、Th2細胞(ヘルパーT細胞の一種)やマクロファージから炎症性サイトカイン(例:IL-17、IL-12、IL-23、TNFα、IFN-α等)の産生促進や、バリア関連分子(FLG、LOR等)の産生抑制によります。

アトピー性皮膚炎や乾癬の原因

 

ブイタマークリーム(タピナロフ)の作用機序:AhRモジュレーター

ブイタマーは、免疫細胞や上皮細胞のAhR(Arylhydrocarbon Receptor:アリル炭化⽔素受容体)のモジュレーターとして作用します。3)

ブイタマークリーム(タピナロフ)の作用機序:AhRモジュレータ

 

その結果、炎症性サイトカインの産生抑制およびバリア関連分子の産生促進によって、アトピー性皮膚炎や乾癬の症状緩和・進行抑制効果が得られると考えられています。3)

 

ちなみに、元々、AhRはダイオキシンなどのアリル炭化⽔素系の有害物質が作用する受容体です。有害物質が作用した際には、炎症性サイトカインや活性酸素の産生促進バリア関連分子の産生抑制といった有害な作用を示します。

一方、脱脂大豆乾留タール液(製品名:グリテール)などのタール類や、ブイタマー(タピナロフ)がAhRに作用すると、有益な作用を示します。

厚生労働省|令和5年度 カネミ油症行政担当者会議【資料3】油症の研究について

 

このようにAhRは、作用する物質によって生体内作用が異なるといった不思議な受容体(リガンド依存性転写因子)です。4)

 

木元 貴祥
ブイタマーが作用すると、生体にとって有益な作用を示すというわけですね。

 

ちなみに、AhRに働きかけて治療効果を期待する化合物のことを総称して「TAMA:Therapeutic AHR modulating agent」と呼ばれることもあります。3)

 

乾癬のエビデンス紹介:PSOARING 1/2試験

尋常性乾癬の根拠となった臨床試験(PSOARING 1および2試験)をご紹介します。4)

本試験は米国・カナダの軽~重症の尋常性乾癬患者さん(成人)を対象に、プラセボとブイタマーを比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は、12週時点での「PGA奏効割合*」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ ブイタマー
PGA奏効割合
(PSOARING 1試験)
6.0% 35.4%
p<0.001
PGA奏効割合
(PSOARING 2試験)
6.3% 40.2%
p<0.001

*PGA(医師による静的総合評価)奏効割合:12週時のPGAスコアが0~1、かつベースラインから2ポイント以上低下

 

ブイタマーはプラセボに対して有意な改善が認められています!

 

木元 貴祥
国内の臨床試験については不明ですので、判明次第、更新します。

 

アトピー性皮膚炎のエビデンス紹介:ADORING 1/2試験

アトピー性皮膚炎の根拠となった臨床試験(ADORING 1および2試験)をご紹介します。5)

本試験は米国の中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者さん(2歳以上の小児および成人)を対象に、プラセボとブイタマーを比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は、8週時点での「IGA奏効割合†」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ ブイタマー
IGA奏効割合
(ADORING 1試験)
13.9% 45.4%
p<0.0001
IGA奏効割合
(ADORING 2試験)
18.0% 46.4%
p<0.0001

†8週時のIGAスコアが0~1、かつベースラインから2ポイント以上低下

 

ブイタマー群で有意な改善が認められています。また、EASIスコアなどの改善も認められていました♪

 

なお、メーカーのニュースリリースによれば、国内でも12歳以上の小児および成人に対して効果が認められているようです。

ニュースリリース(2022年7月20日)|アリル炭化水素受容体モジュレーター「JTE-061(tapinarof)」のアトピー性皮膚炎患者対象の国内第Ⅲ相臨床試験(比較試験)の速報結果について

 

その後、国内の2歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験でも効果が認められていると発表がありました。

ニュースリリース(2024年5月31日)|アリル炭化水素受容体モジュレーター「JTE-061(tapinarof)」の小児アトピー性皮膚炎患者対象の国内第Ⅲ相臨床試験(比較試験)の速報結果について

 

木元 貴祥
よって、国内ではまずは12歳以上に対して承認される見込みです!今後は2歳以上の適応拡大も期待できると思います。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では、毛嚢炎、鼻咽頭炎、接触皮膚炎、頭痛、上気道感染症、そう痒症などの副作用が認められていました。

 

用法・用量

<アトピー性皮膚炎>

通常、成人及び12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布します。

 

<尋常性乾癬>

通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布します。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ブイタマーはこんな薬

  • 国内初のアリル炭化水素受容体(AhR:Arylhydrocarbon Receptor)のモジュレーター
  • AhRの働きを調整することで、炎症性サイトカインの産生抑制およびバリア関連分子の産生促進作用を有する
  • 1日1回塗布する外用薬

 

木元 貴祥
近年、乾癬やアトピー性皮膚炎領域では生物学的製剤やJAK阻害薬の適応拡大など、治療選択肢が増えてきています。
イブグリース(レブリキズマブ)の作用機序と類薬比較【アトピー性皮膚炎】

続きを見る

 

アトピー性皮膚炎領域では、最近、コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)モイゼルト軟膏(ジファミラスト)などの外用薬が登場していましたが、乾癬領域では久しぶりの外用薬です!

ブイタマーは新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回はアトピー性皮膚炎や乾癬の疾患と共に、ブイタマークリーム(タピナロフ)の作用機序とエビデンスについて解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021年版
  2. 日本皮膚科学会:乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
  3. J Am Acad Dermatol. 2021 Apr;84(4):1059-1067.
  4. PSOARING 1/2試験(乾癬):N Engl J Med 2021;385:2219-2229
  5. ADORING 1/2試験(アトピー性皮膚炎):J Am Acad Dermatol. 2024 May 20:S0190-9622(24)00755-2. doi: 10.1016/j.jaad.2024.05.023. Online ahead of print.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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