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2022年3月28日、「遺伝性血管性浮腫」を対象疾患とするタクザイロ皮下注(ラナデルマブ)が承認されました!
武田薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | タクザイロ皮下注300mgシリンジ |
一般名 | ラナデルマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 海外に準じた |
製造販売 | 武田薬品工業(株) |
効能・効果 | 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制 |
用法・用量 | 通常、成人及び12歳以上の小児には、ラナデルマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを2週間隔で皮下注射する。 なお、継続的に発作が観察されず、症状が安定している場合には、1回300mgを4週間隔で皮下注射することもできる。 |
収載時の薬価 | 1,288,729円 |
発売日 | 2022年5月30日新発売(HP) |
遺伝性血管性浮腫(HAE)は稀な疾患でこれまで治療選択肢が限られていました。
発作の発症抑制としては、HAEでは初の経口薬のオラデオ(ベロトラルスタット)が2021年に承認されていますが、まだまだ治療選択肢が少ないのが現状です。
今回はHAEの疾患と共にタクザイロ(ラナデルマブ)の作用機序を解説していきます。
遺伝性血管性浮腫(HAE)とは
遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema: HAE)は全身の皮下や粘膜に「浮腫(むくみ)」が起こる疾患で、遺伝的要素が多いとされています。
※HAEの読み方ですが、「ハエ」や「エイチエーイー」と呼ばれます
浮腫が起こる部位によって症状が異なりますが、多い部位としては手足や消化管、咽頭と言われています。
- 手足の皮膚:手や足がむくんでしまう
- 消化管:激しい腹痛と共に悪心・嘔吐・下痢が起こる
- 咽頭:呼吸困難
原因
生体内には「ブラジキニン」と呼ばれる炎症性物質が存在していますが、通常は「C1-インヒビター(別名:C1-インアクチベーター)」と呼ばれる物質によってその産生が抑制(制御)されています。
※上記イラストはカリクレインを例にしていますが、それ以外の経路もC1-インヒビターによって抑えられていると考えられています。
しかしHAEでは遺伝的要因等によってC1-インヒビターが欠損もしくは活性が低下してしまっている状態です。1)
治療
HAEの症状が起こった場合(急性発作時)、C1-インヒビター製剤の補充療法やフィラジル(イカチバント)の投与を行います。1)
- C1-インヒビター製剤:ベリナート静注用(一般名:ヒトC1-インアクチベーター)
- フィラジル(イカチバント):ブラジキニンB2受容体拮抗薬
-
ベリナート(ヒトC1-インアクチベーター)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】
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ベリナートは静注製剤のため、自己注射はできず、病院等で投与する必要がありましたが、フィラジルは自己注射も可能ですね。
予防
HAEの急性発作の発症抑制を目的として使用できる薬剤は、2021年に登場した初の経口薬のオラデオ(ベロトラルスタット)があります。
-
オラデオ(ベロトラルスタット)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】
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オラデオは経口で簡便に予防が可能ですが、連日服用する必要がありました。
その他、侵襲を伴う処置(例:歯科治療、出産、小手術)を行うと、HAEの発作が引き起こされることがあり、その発症抑制としてはC1-インヒビター製剤(ベリナート)が用いられます。
侵襲を伴う処置のHAE発作抑制に対してはオラデオもタクザイロも適応外
タクザイロ(ラナデルマブ)の作用機序
タクザイロはブラジキニンの産生に関与しているカリクレインを選択的に阻害する抗体薬です。
ブラジキニンの産生が抑制される結果、HAEの急性発作予防につながると考えられます。
エビデンス紹介:HELP試験
根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表例として海外第Ⅲ相試験のHELP試験をご紹介します。2)
本試験は12歳以上のHAE患者さんを対象に、プラセボ群、タクザイロ群(4週間毎150mg、4週間毎300mg、2週間毎300mg)の有効性・安全性を検証した臨床試験です。
主要評価項目は「HAEの月間平均発作回数」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 |
タクザイロ | |||
4週間毎 150mg |
4週間毎 300mg |
2週間毎 300mg |
||
HAEの月間平均発作回数 | 1.97 | 0.48 | 0.53 | 0.26 |
(プラセボとの差) | - | -1.49 P<0.001 |
-1.44 P<0.001 |
-1.71 P<0.001 |
4週間毎でも効果が期待されていますね!基本は2週間毎の投与とのことです。
副作用
10%以上に認められる副作用として、注射部位反応(疼痛、紅斑、内出血、不快感、血腫、出血、そう痒感、腫脹、硬結、異常感覚、反応、熱感、浮腫、発疹)(52.4%)が報告されています。
重大な副作用として、
- アナフィラキシー(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量、在宅自己注射
通常、成人及び12歳以上の小児には、ラナデルマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを2週間隔で皮下注射します。なお、継続的に発作が観察されず、症状が安定している場合には、1回300mgを4週間隔で皮下注射することも可能です。
2023年6月1日より、在宅自己注射が可能となりした!
収載時の薬価
収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。
- タクザイロ皮下注300mgシリンジ:1,288,729円(1日薬価:92,052円)
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)
続きを見る
まとめ・あとがき
タクザイロはこんな薬
- HAEの急性発作の発症抑制として使用する
- カリクレインを阻害する抗体薬で、ブラジキニンの産生を抑制する
- 2~4週間毎に皮下注投与
HAEは稀な疾患ですが、これまで急性発作予防に使用できる薬剤はオラデオしかありませんでした。
以上、今回は遺伝性血管性浮腫(HAE)とタクザイロ(ラナデルマブ)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
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