11.血液・造血器系

モノヴァー(デルイソマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】

2022年3月28日、「鉄欠乏性貧血」を対象疾患とするモノヴァー静注(デルイソマルトース第二鉄)が承認されました!

日本新薬|ニュースリリース

基本情報

製品名モノヴァー静注500mg
一般名デルイソマルトース第二鉄
製品名の由来海外販売名に由来する、
mono-「1 回の」;少ない投与回数をイメージ
製造販売日本新薬(株)
効能・効果鉄乏性貧血
用法・用量週1回点滴静注又は週2回緩徐に静注(詳細
収載時の薬価
発売日

 

鉄欠乏性貧血の基本は経口鉄剤ですが、経口剤が無効または使用できない場合、モノヴァーのような静脈内投与が検討されます。

 

2019年には週1回投与のフェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)も登場しました。

フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】

続きを見る

 

木元 貴祥
1回あたりの鉄量として最大1000mgまで投与できることから、短期間に少ない回数で必要な鉄量が投与可能とのことですね!

 

今回は鉄欠乏性貧血とモノヴァーの作用機序・特徴についてご紹介します。

 

鉄欠乏性貧血とは

血中の酸素運搬を担っているのが赤血球の中に存在する「ヘモグロビン」と呼ばれる物質です。

 

ヘモグロビンや赤血球が不足して組織に酸素を十分に運べなくなった状態を貧血と呼んでいますが、特にヘモグロビンの構成成分である鉄不足によって引き起こされる貧血を「鉄欠乏性貧血」と呼んでいます。

 

木元 貴祥
それでは鉄と赤血球・ヘモグロビンについてもう少し詳しくみていきましょう。

 

赤血球は骨髄内で造血幹細胞⇒赤芽球⇒赤血球の順に成熟していきますが、途中、ヘモグロビンを構成する鉄を取り込みます。

通常、鉄は貯蔵鉄として肝臓に多く存在していますが、必要量が血中に放出され「トランスフェリン(血清鉄)」となります。

 

そしてトランスフェリンが赤芽球に鉄を運ぶことで、ヘモグロビンが合成されて赤血球が成熟していきます。

鉄欠乏性貧血とトランスフェリン

 

鉄欠乏性貧血では何らかの原因で鉄が欠乏し、以下の順で体内の鉄が減少した状態です。

  1. 貯蔵鉄の減少
  2. 血清鉄の減少
  3. ヘモグロビン鉄の減少
  4. 組織鉄の減少

 

③のヘモグロビン鉄まで減少してしまうと、赤血球の酸素運搬能力が低下し、組織に十分な酸素を供給することができなくなってしまいます。これが鉄欠乏性貧血の発症です。

 

若年から中年の女性に多く発症するのが特徴で、これは女性では月経や、妊娠による鉄需要の増大などがあるためですね。

 

鉄欠乏性貧血の症状

一般的な貧血症状としては以下があります。

  • 動悸・息切れ
  • 頭痛
  • めまい
  • 易疲労感

 

鉄欠乏性貧血に特徴的な症状としては以下がありますが、これは組織鉄が欠乏することに起因すると考えられています。

  • スプーン状爪:爪が脆くなり、真ん中が凹んでスプーンみたいになる
  • 異食症状:栄養価の無いもの(例:氷、土、紙)を無性に食べたくなる症候
  • 舌炎

 

これらの症状は鉄欠乏が回復すると徐々に回復していきます。

 

鉄欠乏性貧血の治療

治療は鉄剤の経口投与が第一選択です。

 

主に使用される経口の鉄剤としては以下がありますね。

  • フェロミア錠(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)
  • フェロ・グラデュメット錠(一般名:乾燥硫酸鉄)
  • リオナ錠(一般名:クエン酸第二鉄水和物)

 

経口鉄剤で副作用(例:悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘などの消化器症状)が強い場合や効果不十分な場合、もしくは緊急を要する場合に初めて静脈投与の鉄剤が選択されます。

 

代表的な静脈投与の鉄剤としては以下があります。

静脈投与の鉄剤では事前に総鉄必要量を計算して個人に合わせた分量を投与します。

 

今回ご紹介するモノヴァー静注も静脈投与として使用する薬剤です。

 

モノヴァー静注の作用機序・特徴

モノヴァーの有効成分はデルイソマルトース第二鉄です。

 

デルイソマルトースとFe3+が複合体を形成したマトリックス構造を有していて、投与されると血中で徐々に鉄が放出されるといった特徴があります。1)

また、血清フェリチンレベルは投与後約7日でピークに達し、約4週間で定常状態となるとのことでした(海外データ)。2)

モノヴァー静注の作用機序・特徴:徐々に放出されるため、単回投与で治療が完結する

 

木元 貴祥
この特徴により、基本的には週1回の投与で治療が行えます!

 

エビデンス紹介:鉄欠乏性貧血

根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表的な国内第Ⅲ相試験(NS32-P3-01試験)をご紹介します。3)

本試験は18歳以上49歳以下の経口鉄剤に忍容性がない若しくは効果不十分、又は急速な鉄補給を必要とする過多月経に伴う鉄欠乏性貧血患者さんを対象に、モノヴァーと含糖酸化鉄(フェジン)を比較した第Ⅲ相試験です(非劣性を検証)。

 

主要評価項目は「投与開始12週後時点のヘモグロビン濃度の最大変化量の調整済み平均値」とされ、結果は以下の通りでした。

非劣性限界値-0.5g/dL

試験群モノヴァー静注フェジン静注
投与開始12週後時点の
ヘモグロビン濃度の最大変化量の調整済み平均値
4.33g/dL4.27g/dL
差:0.06g/dL [95%CI:-0.13-0.24]
非劣性が証明

 

 

その他、鉄欠乏性貧血を対象に海外で実施された3つの第Ⅲ相臨床試験の概要も併せてご確認ください。

  • FERWON-IDA試験:モノヴァーと含糖酸化鉄(フェジン)の有効性・安全性を比較(非劣性)4)
  • PHOSPHARE-IDA-04試験およびPHOSPHARE-IDA-05試験:モノヴァーとフェインジェクトの安全性を比較5)

国内未承認の用量が含まれている試験もあり

 

FERWON-IDA試験はフェジン静注(1回200mgを最大5回投与)に対するモノヴァー静注(1000mgの単回投与)の非劣性を検証した臨床試験で、主要評価項目は「ベースラインから8週目までのヘモグロビン値の平均変化量」および「重度または重度の過敏反応」とされました。

有効性の非劣性マージンは-0.5g/dL

試験群モノヴァー静注フェジン静注
ベースラインから8週目までの
ヘモグロビン値の平均変化量
2.49g/dL2.49g/dL
差:0.00 [95%CI:−0.13-0.13]
非劣性が証明
重度または重度の過敏反応0.3%0.4%

 

木元 貴祥
国内と同様の結果ですね!

 

PHOSPHARE-IDA-04試験およびPHOSPHARE-IDA-05試験はフェインジェクト静注(1回750mgを週1回、計2回投与)モノヴァー静注(1000mgの単回投与)の安全性を比較した臨床試験です。

主要評価項目はいずれも「35日目までの低リン血症(血清リン酸塩レベル<2.0mg/dL)の発生率」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群モノヴァー静注フェインジェクト静注
【PHOSPHARE-IDA-04試験】
35日目までの低リン血症の発生率
7.9%75.0%
差:-67.0%(95%CI:-77.4%〜-51.5%)
P<0.001
【PHOSPHARE-IDA-05試験】
35日目までの低リン血症の発生率
8.1%73.7%
差:-65.8%(95%CI:-76.6%~-49.8%)
P<0.001

 

フェインジェクト静注では低リン血症が高頻度で発現していますが、モノヴァー静注では有意な発現頻度の低下が示されていました。

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、肝酵素上昇、低リン酸血症、蕁麻疹、発熱などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 過敏症(頻度不明)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

用法・用量

体重によって投与量が異なっていますね。

 

通常、体重50kg以上の成人には、鉄として1回あたり1,000mg を上限として週1回点滴静注、又は鉄として1回あたり500mgを上限として最大週2回緩徐に静注します。

通常、体重50kg未満の成人には、鉄として1回あたり20mg/kg を上限として週1回点滴静注、又は鉄として1回あたり500mgを上限として最大週2回緩徐に静注します。

 

なお、治療終了時までの総投与鉄量は、患者のヘモグロビン濃度及び体重に応じますが、鉄として2,000mg(体重50kg未満の成人は1,000mg)が上限とされています。

<本剤の総投与鉄量>

投与前ヘモグロビン濃度体重
40kg以上50kg未満50kg以上70kg未満70kg以上
10g/dL以上750mg1000mg1500mg
10g/dL未満1000mg1500mg2000mg

体重40kg未満の患者における総投与鉄量(mg)=[2.2×(16-投与前ヘモグロビン濃度g/dL)+10]×(体重kg)

 

モノヴァーとフェインジェクト・フェジンとの違い

鉄欠乏性貧血に使用する点滴静注の鉄剤をまとめてみました。

モノヴァーとフェインジェクト・フェジンとの違い

 

例えば、フェジンでは総投与鉄量から投与回数・日数を算出しますが、総投与鉄量が3,000mgだった場合、1日120mg投与するとしても25日連日投与です。

 

その点、モノヴァーでは1回あたり1,000mgを上限に週1回が可能なため、総投与鉄量が2,000mgであっても2週間で投与が完了しますね。

 

木元 貴祥
鉄の総投与量が多い患者さんではモノヴァーの方が投与回数を少なくできるため、メリットがあるのではないでしょうか。

 

収載時の薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

モノヴァーはこんな薬

  • 静脈投与で使用する鉄剤
  • 週1回投与で治療が行う
  • 低リン血症の発現頻度はフェインジェクトより低い

 

静注の鉄剤は過去に数種類(ブルタール、フェリコン、アトフェン)が販売されていましたが、相次いで販売中止となり、現在ではフェジン静注とフェインジェクト静注しか選択肢がありませんでした。

フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】

続きを見る

 

木元 貴祥
モノヴァーは週1回投与で治療でき、低リン血症の発現頻度も低いため、使いやすいのではないでしょうか。

 

以上、今回は鉄欠乏性貧血の概要とモノヴァーの作用機序・特徴、そしてエビデンスについてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. Int J Nephrol Renovasc Dis. 2016 Mar 10;9:53-64.
  2. https://monoferric.com/
  3. モノヴァー静注 添付文書
  4. FERWON-IDA試験:Am J Hematol. 2019 Sep;94(9):1007-1014.
  5. PHOSPHARE-IDA-04試験およびPHOSPHARE-IDA-05試験:JAMA. 2020 Feb 4;323(5):432-443.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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