5.内分泌・骨・代謝系 7.炎症・免疫・アレルギー

ソーティクツ(デュークラバシチニブ)の作用機序【乾癬】

2022年9月26日、「乾癬」を対象疾患とするソーティクツ錠(デュークラバシチニブ)が承認されました!

ブリストル・マイヤーズ スクイブ|ニュースリリース

基本情報

製品名 ソーティクツ錠6mg
一般名 デュークラバシチニブ
製品名の由来 特になし
製造販売 ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株)
効能・効果 既存治療で効果不十分な下記疾患
尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
用法・用量 通常、成人にはデュークラバシチニブとして
1回6mgを1日1回経口投与する。
収載時の薬価 2,770.90円
発売日 2022年11月16日(HP

 

ソーティクツは国内初のTYK2阻害薬に分類されていますね。

 

木元 貴祥
作用機序的にはJAK阻害薬に似ています。

 

今回は乾癬とソーティクツ(デュークラバシチニブ)について解説していきます!

 

皮膚のターンオーバーと乾癬

通常、皮膚は外からの刺激・乾燥等を防御したり、細菌・ウイルスの侵入を防ぐといった免疫機能を司っています。

 

構造としては、表面から順に、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

の3層に分かれています。

 

また、表皮はさらに

  • 角質層
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層

の4層から構成されています。

 

皮膚はその機能を保つため、基底層で常に新しい細胞が作られています

基底層で新しくできた細胞は徐々に角層へと押し上げられ、最終的には垢となって剥がれ落ちます。

 

このような皮膚の細胞サイクルを「ターンオーバー(分化)」と呼び、通常、約28~40日サイクルで繰り返されています。

ターンオーバーの仕組み

 

乾癬の患者さんでは、慢性の炎症を伴う何らかの原因で上記のターンオーバーのサイクルが4~5日と極端に短くなっています。

そのため、皮膚が盛り上がったような状態(“肥厚”と呼びます)になり、赤い発疹(“紅斑”と呼びます)を伴うことを特徴とします。

 

また、皮膚の一部がかさかさになって剥げ落ちる(“落屑”と呼びます)こともあります。

 

乾癬の分類

乾癬は5つの種類に分類されていますが、約9割は「尋常性乾癬」です。

  • 尋常性乾癬
  • 関節症性乾癬
  • 滴状乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 膿疱性乾癬

乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬は非常に稀ですが、発症すると症状が厳しいため、重症になることが多いです。

 

ちなみに、膿疱性乾癬における急性症状に対しては、2022年にスペビゴ(スペソリマブ)が登場しています。

スペビゴ(スペソリマブ)の作用機序【膿疱性乾癬】

続きを見る

 

木元 貴祥
今回ご紹介するソーティクツは尋常性乾癬・乾癬性紅皮症・膿疱性乾癬に使用できますね!

 

乾癬の原因

明確な原因は不明確ですが、

  • 遺伝的素因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。

 

何らかの原因によって、マクロファージ等が産生する炎症性サイトカイン(IL-12、IL-23、TNFα、IFN-α)等によって炎症が引き起こされ、乾癬の症状が発現します。

乾癬の発症には炎症性サイトカイン(IL-12、IL-23、TNFα、IFN-α)が関与している

 

乾癬の重症度と治療

乾癬の重症度は皮膚の症状や状態、患者さんが感じる不便さ、等を指標に「軽症」、「中等症」、「重症」の3つに分けられています。

 

重症度に応じて、以下の4つの治療が単独もしくは組み合わせて行われますが、中心となるのは外用療法です。

  • 外用療法(塗り薬)
  • 光線療法(紫外線照射)
  • 内服療法(経口薬)
  • 生物学的製剤治療(注射薬)

 

外用療法(塗り薬)には、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。

内服療法(経口薬)には、チガソン(一般名:エトレチナート)等のビタミンA誘導体の他、免疫抑制薬やPDE4阻害薬のオテズラ(一般名:アプレミラスト)が重症度に応じて使用されます。

オテズラ(アプレミラスト)の作用機序【乾癬/ベーチェット病】

続きを見る

 

そして生物学的製剤治療(抗体薬)は基本的には、以下のような患者さんにしか使用することができません。1)

  • 外用療法、光線療法、内服療法で改善しない患者さん
  • 乾癬性関節炎で痛みが激しい患者さん
  • 乾癬性紅皮症膿疱性乾癬等の重症な患者さん

 

木元 貴祥
ソーティクツも位置づけとしては生物学的製剤と同じように使用されます。

 

ソーティクツ(デュークラバシチニブ)の作用機序

炎症性サイトカインであるIL-12、IL-23、IFN-α等が炎症を引き起こす際、それらが各受容体に結合して刺激が核に伝えられます。

 

各受容体には「TYK2(チロシンキナーゼ2)」と呼ばれるタンパク質が付随していて、TYK2を介してシグナルが核へと届けられます。

 

核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、乾癬の発症や症状進行が促進されると考えられています。

 

特にTYK2は、乾癬の原因となるIL-12、IL-23、IFN-αが結合するため、乾癬の病態と深く関与しています。

乾癬におけるTYK2の役割

 

ソーティクツは、TYK2を選択的に阻害する薬剤です。

 

TYK2を阻害することで、IL-12、IL-23、IFN-αによる刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑え、乾癬の進行を抑制すると考えられています。

ソーティクツ(デュークラバシチニブ)の作用機序:経口のTYK2阻害薬

 

木元 貴祥
ちなみに、TYK2はJAKファミリーの一種のため、作用機序的にはJAK阻害薬と似ていますね~。

 

乾癬のエビデンス紹介:POETYK PSO-1試験

根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表としてPOETYK PSO-1試験をご紹介します。2)

 

本試験は、中等度から重度の尋常性乾癬の患者さんを対象に、ソーティクツとプラセボとオテズラ(アプレミラスト)の有効性と安全性を比較した国際共同第Ⅲ相試験です。

主要評価項目は16週時点での「PASI 75の達成率*」と「sPGA 0/1の達成率†」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ ソーティクツ オテズラ
PASI 75の達成率 12.7% 58.4% 35.1%
P<0.0001 -
- P<0.0001
sPGA 0/1の達成率 7.2% 53.6% 32.1%
P<0.0001 -
- P<0.0001

*PASI(Psoriasis Area and Severity Index):乾癬の面積と重症度の指標でPASI 75は「75%以上の改善」と定義される
†sPGA(医師による静的総合評価):sPGA 0/1とは、スコア0「消失」とスコア1「ほぼ消失」の達成と定義される

 

ソーティクツはプラセボに対してだけでなく、オテズラに対しても有意な改善が認められています!

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、上気道感染が報告されています。

 

重大な副作用として、

  • 重篤な感染症(0.2%)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

TYK2はJAKファミリーのため、JAK阻害薬で報告されているような、

  • 感染症:帯状疱疹及び肺炎等
  • 好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少
  • 肝機能障害:ALT上昇、AST上昇等
  • 間質性肺炎

などは気になるところでしたが、ソーティクツは比較的マイルドな印象を受けました。

JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ

続きを見る

 

木元 貴祥
もちろん、直接比較ではないので、注意が必要ですが。

 

用法・用量

通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。

 

収載時の薬価

収載予定時(2022年11月16日)の薬価は以下の通りです。

  • ソーティクツ錠6mg:2,770.90円(1日薬価:2,770.90円)

 

算定根拠については以下をご確認ください。

【新薬:薬価収載】16製品(2022年11月16日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ソーティクツはこんな薬

  • 乾癬に使用する国内初のTYK2阻害薬
  • TYK2を阻害することで、炎症性サイトカインの働きを抑制する
  • 1日1回経口投与
  • 重篤な感染症に注意が必要

 

木元 貴祥
近年、乾癬領域では生物学的製剤やJAK阻害薬の適応拡大など、治療選択肢が増えてきています。
【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

それでもまだまだ治療選択肢は少ないことから、新規作用機序のソーティクツは期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回は乾癬とソーティクツ(デュークラバシチニブ)の作用機序・エビデンスについてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 日本皮膚科学会:乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
  2. POETYK PSO-1試験:J Am Acad Dermatol. 2023 Jan;88(1):29-39.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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