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2021年3月23日、「アトピー性皮膚炎」を対象疾患するコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の小児(2歳以上)に関する適応拡大が承認されました。それに伴い、0.25%の剤型も追加されています。
その後、2023年1月30日には生後6か月以上の小児に対しても使用可能となりました。
鳥居薬品|注意事項等情報改訂のお知らせ
基本情報
製品名 | コレクチム軟膏0.5%/0.25% |
一般名 | デルゴシチニブ |
製品名の由来 | 免疫(IMMU)をただす(CORRECT) |
製薬会社 | 製造販売:日本たばこ産業(株) 販売:鳥居薬品(株) |
効能・効果 | アトピー性皮膚炎 |
用法・用量 | <成人> 通常、成人には、0.5%製剤を1日2回、適量を患部に塗布する。 なお、1回あたりの塗布量は5gまでとする。 <小児> 通常、小児には、0.25%製剤を1日2回、適量を患部に塗布する。 症状に応じて、0.5%製剤を1日2回塗布することができる。 なお、1回あたりの塗布量は5gまでとするが、体格を考慮すること。 |
収載時の薬価 | 0.5%1g:139.70円 0.25%1g:141.40円 |
コレクチムは2020年1月23日に成人のアトピー性皮膚炎治療薬として承認されました。
アトピー性皮膚炎では初のJAK阻害薬ですね!
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ちなみに新有効成分含有のアトピー性皮膚炎の外用薬は、1999年に発売されたプロトピック軟膏(一般名:タクロリムス)以来ですので、約20年ぶりですね!
今回はアトピー性皮膚炎とコレクチム軟膏の作用機序・エビデンス等についてご紹介します。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。
主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。
具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。
部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。
治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)
- 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
- スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
- 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く
ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。
その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服することもあります。
一方で、外用薬等では改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服の他、抗IL-4受容体α(IL-4Rα)抗体薬のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が行われることもあります。
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同様に経口のJAK阻害薬も使用可能です!
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アトピー性皮膚炎の原因:マクロファージやTh2細胞による炎症
アトピー性皮膚炎の明確な発症原因は不明確ですが、
- 家族歴・既往歴
- 外的要因
- 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)
などによって、炎症反応が引き起こされることで発症すると考えられています。
様々な原因によって、マクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22などのサイトカイン・ケモカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで痒みを誘発すると考えられています。1)
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序
炎症性サイトカインであるTNFαやIL-4、IL-6、IL-13、IL-22などが炎症を引き起こす際、それらが各受容体に結合して刺激が核に伝えられます。
各受容体には「ヤヌスキナーゼ(JAK)」と呼ばれるタンパク質が付随していて、JAKを介してシグナルが核へと届けられます。
JAKには結合するサイトカインの受容体に応じてJAK1・JAK2・JAK3が知られている。
核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、アトピー性皮膚炎が進行してしまいます。
コレクチム軟膏はアトピー性皮膚炎の発症部位に塗ることで、細胞内のJAK1~3を選択的に阻害する薬剤です。2)
JAKが阻害されることで、サイトカインによる刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑え、アトピー性皮膚炎の進行を抑制すると考えられています。
エビデンス紹介:16歳以上を対象とした国内第Ⅲ相試験
根拠となった臨床試験を一つご紹介します。3)
本試験は16歳以上の日本人のアトピー性皮膚炎患者さんを対象に、コレクチム軟膏0.5%の4週間投与とプラセボ軟膏を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「mEASIスコア*の変化率」とされ、結果は以下の通りでした。
試験群 | コレクチム軟膏 | プラセボ |
mEASIスコアの変化率 | -44.29% | 1.74% |
p<0.001 |
* mEASI(modified EASI)スコア:形態的変化の重症度と広がりから重症度を簡便に評価するEASIスコアから「頭頸部スコアを除いた」もの
ちなみに、52週間反復塗布した長期の安全性も確認されています。4)
なお、2~15歳を対象にした国内第Ⅱ相臨床試験5)でもコレクチムの治療効果が認められていますね!
副作用
主な副作用として、適用部位毛包炎(2.4%)、カポジ水痘様発疹(1%以上)、接触皮膚炎(1%以上)、適用部位ざ瘡(2.2%)、適用部位刺激感(1%以上)、適用部位紅斑(1%以上)が認められています。
関節リウマチに使用される経口のJAK阻害薬では、稀に結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が発現する可能性もあります。
一方で、コレクチム軟膏は外用のJAK阻害薬ですので、全身性の感染症等の発現率は低いですね!前述の臨床試験3)でも重篤な有害事象の発現はなかったとされています。
用法・用量
通常、成人には、0.5%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します(1回あたりの塗布量は5gまで)。
また、小児については、0.25%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。症状に応じて、0.5%製剤を1日2回塗布も可能です(1回あたりの塗布量は5gまでとするが、体格を考慮)。
1FTUの重さは約0.5gだそうです6)ので、1回あたり10FTUまでですね!
FTU:第2指の先端から第1関節部への押し出し量
タクロリムス、シクロスポリン、デュピルマブ、光線療法との併用
タクロリムス軟膏との併用や、シクロスポリンやデュピルマブ等の全身療法との併用、光線療法との併用については日本皮膚科学会から発出されている「安全使用マニュアル」に記載があります。7)
- 同一部位へのタクロリムス軟膏との併用,シクロスポリンやデュピルマブ等の全身療法との併用は使用経験がないためデータが無く,安全性が不明である.
- 同一部位への光線療法との併用は,データがないため安全性が不明である.紫外線による皮膚悪性腫瘍の発生リスクが増える可能性は否定できない.
添付文書上、併用禁忌や併用注意には該当していませんが、いずれも安全性が確認されていませんので、慎重な使用が望まれますね。
収載時の薬価
収載時の薬価は以下の通りです。
- コレクチム軟膏0.5%1g:139.70円(2020年4月22日)
- コレクチム軟膏0.25%1g:141.40円(2021年5月26日)
算定根拠については以下の記事をご確認ください。
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【新薬:薬価収載】8製品(2020年4月22日)
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まとめ・あとがき
コレクチム軟膏はこんな薬
- アトピー性皮膚炎に対する初のJAK阻害薬
- JAK阻害薬の外用薬も国内初
- 炎症性サイトカインの伝達を抑制し、症状を緩和する
アトピー性皮膚炎ではこれまでステロイド外用薬が中心でしたが、2020年に登場したコレクチム軟膏を皮切りに、モイゼルト軟膏やブイタマークリーム(タピナロフ)も登場しました。
一方で、ステロイド外用薬がよいのか、コレクチム軟膏・モイゼルト軟膏・ブイタマークリームがよいのか、については今後の検討課題かと思います。以下の記事でプロトピック、コレクチム、モイゼルト、ブイタマーの比較一覧表についてまとめていますので、ご参考ください。
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ブイタマー(タピナロフ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/乾癬】
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経口薬のJAK阻害薬については以下の記事でまとめています♪
-
JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ
続きを見る
以上、今回はアトピー性皮膚炎と新規の外用JAK阻害薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)についてご紹介しました!
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