新薬承認・薬価収載

【新薬:薬価収載】11製品(2023年5月24日)

2023年5月24日、新薬11製品が薬価収載されました!

 

前回見送られていたヴィアレブ配合持続皮下注(ホスレボドパ/ホスカルビドパ)やネキソブリッド外用ゲル5g(パイナップル茎搾汁精製物)は、今回収載です♪

 

本来、このタイミングで薬価収載される見込みであったウゴービ皮下注(セマグルチド)やエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)は見送られています。ウゴービは肥満症治療薬として期待されているだけに動向が気になりますね。

ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】

続きを見る

 

その他、市場拡大再算定による薬価引き下げも了承され、2023年8月1日より薬価がダウンする薬剤もいくつかありました・・・。

 

木元 貴祥
今回は薬価収載の新薬一覧とその算定根拠について紹介していきます!

 

2023年5月24日:薬価収載の11製品

2023年5月24日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。

製品名
(一般名)
規格 薬価 効能・効果
(簡略)
ドプテレット錠
(アバトロンボパグ)
20mg1錠 7,106.60円 慢性肝疾患患者における
血小板減少症の改善
オファコルカプセル
(コール酸)
50mg1カプセル 12,596.00円 先天性胆汁酸代謝異常症
ヴィアレブ配合持続皮下注
(ホスレボドパ/ホスカルビドパ)
10mL1瓶 13,277円 パーキンソン病
エンタイビオ皮下注
(ベドリズマブ)
108mg0.68mL1キット
108mg0.68mL1筒
69,888円
69,888円
潰瘍性大腸炎
オンボー
(ミリキズマブ)
点滴静注300mg
100mgオートインジェクター
100mgシリンジ
192,332円
126,798円
126,798円
潰瘍性大腸炎
パリンジック皮下注
(ペグバリアーゼ)
2.5mg0.5mL1筒
10mg0.5mL1筒
20mg1mL1筒
61,606円
64,155円
65,468円
フェニルケトン尿症
ベスレミ皮下注
(ロペグインターフェロン)
250µg0.5mL1筒
500µg1mL1筒
297,259円
565,154円
真性多血症
アトガム点滴静注液
(抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン)
250mg5mL1管 75,467円 再生不良性貧血
アポハイドローション
(オキシブチニン)
20%1g 545.80円 原発性手掌多汗症
コムレクス耳科用液
(レボフロキサシン)
1.5%5mL1瓶 1,584.50円 外耳炎、中耳炎
ネキソブリッド外用ゲル
(パイナップル茎搾汁精製物)
5g1瓶(混合用ゲル付) 162,995.90円 熱傷における壊死組織の除去

 

薬価の算定方法

各薬剤の薬価算定方法は2023年5月18日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。

 

ドプテレット:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ムルプレタ)

ドプテレットは同じく「慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」に使用されるムルプレタ錠(ルストロンボパグ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

特に加算等はなく、以下の薬価に決定しました。

  • ムルプレタ錠3mg:13,382.50円(1日薬価:13,382.50)
  • ドプテレット錠20mg:7,106.60円(1日薬価:18,733円)

 

ピーク時の予測販売金額は0.7億円です。

 

オファコル:原価計算方式【加算あり】

オファコルの類似薬はケノデオキシコール酸ですが、10年以上前の薬価収載品かつ効能・効果が異なることから、算定上の比較薬として用いるには適当でないと判断されました。

算定方式は原価計算方式です。

 

また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)市場性加算(Ⅰ)(A=10%)が加算されていますね!その後、外国平均価格調整が行われ、以下の薬価に決定しました。

  • オファコルカプセル50mg:12,596.00円

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。海外では標準的治療法として位置づけられているためですね。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤は当該疾患に対して長年に亘る使用実績が蓄積されており、海外では標準的治療法とされていること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
  • 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。

 

ピーク時の予測販売金額は2.3億円です。

 

ヴィアレブ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(デュオドーパ)【加算あり】

ヴィアレブは同じくパーキンソン病に使用するレボドパ・カルビドパ配合剤のデュオドーパ配合経腸用液の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

加算前の薬価は10mL1瓶で12,070円でしたが、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)が加算(×1.1)され、以下の薬価に決定しました。

  • デュオドーパ配合経腸用液:15,282.20円(1日薬価:8,699.40円)
  • ヴィアレブ配合持続皮下注10mL1瓶:13,277円(1日薬価:9,570円)

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。デュオドーパと比較して侵襲性が低減しているからですね!

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤は24時間持続皮下投与が可能であり、既存治療では効果が不十分な症状の改善や安全性の観点で既存治療の適用とならない患者への使用が見込まれること、侵襲性が低く入院期間も短縮する利便性があることから、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は96億円です。

 

作用機序とエビデンスについては以下で解説しています。

ヴィアレブ配合持続皮下注(ホスレボドパ/ホスカルビドパ)の作用機序【パーキンソン病】

続きを見る

 

当日の中医協総会では、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤とすることも了承されましたので、発売と同時に在宅自己注射が可能になる見込みです。

 

エンタイビオ皮下注:類似薬効比較方式(Ⅰ)(エンタイビオ点滴静注)【加算あり】

エンタイビオ皮下注は、既に承認されているエンタイビオ点滴静注の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

特に加算はなく、以下の薬価に決定しています。

  • エンタイビオ点滴静注用300mg:279,573円(1日薬価:4,992円)
  • エンタイビオ皮下注108mgペン:69,888円(1日薬価:4,992円)
  • エンタイビオ皮下注108mgシリンジ:69,888円(1日薬価:4,992円)

 

ピーク時の予測販売金額は185億円です。

 

作用機序については以下の記事で解説しています。

エンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎/クローン病】

続きを見る

 

オンボー:類似薬効比較方式(Ⅰ)(スキリージ)【加算あり】

オンボーは、他疾患のクローン病で同様の作用機序を有するスキリージ(リサンキズマブ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

特に加算はなく、以下の薬価に決定しています。

 

  • スキリージ点滴静注600mg:192,321円(1日薬価:6,869円)
  • スキリージ皮下注360mgオートドーザー508,169円(1日薬価:9,057円)
  • オンボー点滴静注300mg:192,332円(1日薬価:6,869円)
  • オンボー皮下注100mgオートインジェクター:126,798円(1日薬価:9,057円)
  • オンボー皮下注100mgシリンジ:126,798円(1日薬価:9,057円)

 

ピーク時の予測販売金額は点滴静注製剤で24億円、皮下注製剤で291億円です。

 

作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。

オンボー(ミリキズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎】

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パリンジック:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ビオプテン)【加算あり】

パリンジックは同じくフェニルケトン尿症に使用されるビオプテン(サプロプテリン塩酸塩)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)市場性加算(Ⅰ)(A=10%)が加算され、キット特徴部位の原材料費の加算および外国平均価格調整が行われて以下の薬価に決定しました。

  • ビオプテン顆粒10% :37,360.50円(1日薬価:186,802.50円)
  • パリンジック皮下注2.5mg:61,606円
  • パリンジック皮下注10mg:64,155円
  • パリンジック皮下注20mg:65,468円(1日薬価::196,404円)

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。新規作用機序のためですね!

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤はフェニルアラニンアンモニアリアーゼ酵素作用を有する新規作用機序医薬品であり、臨床上の有用性が一定程度評価されていると考えられることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は36億円です。

 

ベスレミ:原価計算方式

ベスレミと同様の効能・効果を有する既収載品としてはルキソリチニブリン酸塩が存在しますが、構造・薬理作用及び投与方法が異なることから、新薬算定最類似薬はないと判断されています。

よって、算定方式は原価計算方式です。

 

特に加算はなく、以下の薬価に決定しました。

  • ベスレミ皮下注250µgシリンジ:297,259円
  • ベスレミ皮下注500µgシリンジ:565,154円

 

ピーク時の予測販売金額は163億円です。

 

作用機序とエビデンスについては以下で解説しています。2週間に1度の投与で治療が可能ですね。

ベスレミ皮下注(ロペグインターフェロン)の作用機序【真性多血症】

続きを見る

 

アトガム:原価計算方式【加算あり】

アトガムと類似性のある抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン製剤及びロミプレート(ロミプロスチム)は10年以上前の収載品であるため、算定上の比較薬として用いるには適当でないと判断されました。

よって、算定方式は原価計算方式です。

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)市場性加算(Ⅰ)(A=10%)の対象でしたが、原価の開示度が50%を下回ったため加算係数がゼロに。

 

出ましたね、加算係数ゼロ・・・。

2022年の診療報酬改定で開示度に応じた加算係数ですが、これまでには2023年3月15日に原価計算方式で算定されたアーウィナーゼ以外、全て加算係数がゼロになっています(2022年4月薬価収載同年5月薬価収載同年8月薬価収載)。

 

木元 貴祥
あまり加算を取らせる気がないんでしょうか・・・。

 

従って、加算はなくなり、以下の薬価に決定しました。

  • アトガム点滴静注液250mg:75,467円

 

加算の根拠は以下の通りです。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン治療後の再発患者に対しても効果が期待されることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
  • 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。

 

ピーク時の予測販売金額は8.1億円です。

 

アポハイド:類似薬効比較方式(Ⅰ) (エクロック)

アポハイドは同じく多汗症に使用する外用抗コリン薬のエクロックゲル(ソフピロニウム)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

アポハイドは「手掌」、エクロックは「腋窩」の多汗症に使用しますね。

 

特に加算はなく、以下の薬価に決定しました。

  • エクロックゲル5%1g:242.60円(1日薬価:242.60円)
  • アポハイドローション20% 1g:545.80円(1日薬価:242.60円)

 

ピーク時の予測販売金額は9.4億円です。

 

作用機序や類薬のエクロック・ラピフォートとの違いについては、以下の記事で解説しています。

アポハイドローション(オキシブチニン)の作用機序【手掌多汗症】

続きを見る

 

コムレクス:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ラスビック)

コムレクスは同じくニューキノロン系抗菌薬のラスビック錠(ラスクフロキサシン)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

特に加算等は無く、以下の薬価に決定しました。

  • ラスビック錠75mg:316.90円(1日薬価:316.90円)
  • コムレクス耳科用液1.5%5mL1瓶:1,584.50円(1日薬価:316.90円)

 

ピーク時の予測販売金額は8.8億円です。

 

ネキソブリッド:原価計算方式【加算あり】

ネキソブリッドと類似性のあるブロメライン製剤は、昭和49年の薬価収載品であることから、本剤の算定上の比較薬として用いるには適当でないと判断されました。

よって、算定方式は原価計算方式です。

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)市場性加算(Ⅰ)(A=10%)の対象でしたが、原価の開示度が50%を下回ったため加算係数はゼロです。はい、ゼロです。

  • ネキソブリッド外用ゲル5g1瓶(混合用ゲル付):162,995.90円

 

加算の根拠は以下の通りです。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:臨床試験において、標準治療群と比較して本剤群でより早期に壊死組織が除去されること、出血量が少ないことが確認されていること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
  • 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。

 

ピーク時の予測販売金額は8.8億円です。

 

市場拡大再算定:タリージェ、リリカ、エンレスト、ベージニオ、イブランス

効能変更等が承認された既収載品及び2年度目以降の予想販売額が350億円を億円を超える既収載品について、一定規模以上の市場拡大のあった場合、新薬収載の機会(年4回)を活用して、薬価を見直すこととされています。

 

タリージェ錠(ミロガバリン)は、2022年3月28日に「中枢性神経障害性疼痛」の適応拡大が承認され、リリカはその類似品として道連れの薬価ダウンです。

タリージェ(ミロガバリン)の作用機序:リリカ/サインバルタとの違い【神経障害性疼痛】

続きを見る

 

また、ベージニオ錠(アベマシクリブ)は2021年12月24日に「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の再発高リスク乳がんにおける術後薬物療法」の適応拡大が承認され、イブランスはその類似品として道連れの薬価ダウンです。

ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】

続きを見る

 

その結果、2023年8月1日より、現在販売されている上記医薬品の薬価は以下に減額されます。

 

あとがき

今回は11製品中5製品が加算品目でしたね!

 

また、ピーク時の予測販売金額が100億円を超えたのは以下の3製品です。

 

本来、このタイミングで薬価収載される見込みであったウゴービ皮下注(セマグルチド)エムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)は見送られましたので、次回以降の薬価収載が期待されますね。

 

木元 貴祥
ウゴービは、肥満症の医療用医薬品としてサノレックス(マジンドール)以来の登場のため、非常に期待されています。

 

以上、今回は2023年5月24日に薬価収載された新薬11製品についてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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