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2020年11月27日、ラスビック(ラスクフロキサシン)の点滴静注製剤が承認されました。
杏林製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ラスビック錠75mg/点滴静注キット150mg |
一般名 | ラスクフロキサシン塩酸塩 |
製造販売 | 杏林製薬(株) |
適応症 | <錠剤> 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、 急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎 <点滴静注> 肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染 |
用法・用量 | <錠剤> 通常、成人に対して、ラスクフロキサシンとして1回75mgを1日1回経口投与する。 <点滴静注> 通常、成人にはラスクフロキサシンとして、 投与初日に300mg を、投与2日目以降は150mg を1日1回点滴静注する。 |
収載時の薬価 | 錠剤:361.40円(1日薬価:361.40円) 点滴静注:4,034円 |
ラスビックは新規ニューキノロン系抗菌薬として錠剤製剤が2019年9月20日に承認されています。
今回は細菌とラスビック(ラスクフロキサシン)の作用機序についてご紹介します。
細菌の構造と分類(グラム染色)
細菌はヒトを含む真核生物と比較して非常に単純な構造から成り立っています。
主には、鞭毛、莢膜、細胞壁、細胞膜、細胞質などから構成されており、DNAは核膜に覆われていません。(真核生物のDNAは核膜に覆われている)
特に細胞壁の合成では「ペニシリン結合タンパク質(PBP)」が関与しており、細菌の細胞壁内に存在していますが、これはヒトには存在していません。
また、細菌を分類する手法としてグラム染色が知られており、以下に大別されます。
- グラム陽性菌(例:黄色ブドウ球菌、MRSA)
- グラム陰性菌(例:大腸菌)
グラム陽性菌では細胞壁が厚いため色素が抜けずに染色されたままになります。
一方、グラム陰性菌は細胞壁が薄いため、染色しても色素が抜けてしまいます。
臨床的にもグラム陽性か陰性かによって薬剤の感受性や耐性機序等が異なるため、重要な分類法となります。
ちなみに、PBPに関与する抗菌剤としてはセフェム系がありますね。ご興味があれば以下の記事をご覧ください。
-
ザバクサ配合点滴静注(セフトロザン/タゾバクタム)の作用機序と副作用【細菌感染】
続きを見る
細菌の増殖:DNAの複製
細菌は細胞分裂によって増殖していきますが、その準備段階として自身のDNAを2倍量に増やします。この過程を「複製」と呼んでいます。
通常、細菌のDNAは二本鎖の二重らせん構造をとっていますが、複製過程においてはヘリカーゼと呼ばれるタンパク質によって一本鎖に分離されます。
解かれた一本鎖DNAに「DNAポリメラーゼ」が作用することで二本鎖DNAが新たに合成され、DNAの複製が完了するといった流れですね。
しかし二本鎖を解いていく時に、元の二本鎖DNAには過剰なねじれ(超らせん構造)が生じてしまいます。
Ⅱ型トポイソメラーゼには細菌の種類によって
- DNAジャイレース
- トポイソメラーゼⅤ
の二種類がありますが、作用としては同じで、DNAの二本鎖を切断することで超らせん構造を解消していきます。
このように様々なタンパク質が関与してDNAの複製が行われていきますが、ラスビックの作用に関与しているのはⅡ型トポイソメラーゼ(DNAジャイレース、トポイソメラーゼⅤ)ですね!
ラスビック(ラスクフロキサシン)の作用機序と特徴
ラスビックはDNA複製の際の超らせん構造を解消するⅡ型トポイソメラーゼを選択的に阻害する薬剤で、ニューキノロン系(フルオロキノロン系)抗菌薬に分類されています。
DNAジャイレースやトポイソメラーゼⅤが阻害されることで、細菌のDNA複製が途中でストップしてしまい、殺菌的に作用すると考えられています。
また、ラスビックは肺への移行性が高い1)とされているため、呼吸器系の細菌感染症に期待されているといった特徴があります!
副作用
主な副作用として、下痢、好酸球数増加(各1.3%)、ALT上昇(0.9%)が報告されています。
重大な副作用としては、
- ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
- 白血球減少症(0.19%)
- 間質性肺炎(0.19%)
- QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)(頻度不明)
- 低血糖(頻度不明)
- 偽膜性大腸炎(頻度不明)
- アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害(頻度不明)
- 肝機能障害(頻度不明)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 痙攣(頻度不明)
- 錯乱、せん妄等の精神症状(頻度不明)
- 重症筋無力症の悪化(頻度不明)
- 大動脈瘤、大動脈解離(頻度不明)
などが挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
錠剤の場合、1回1錠(75mg)を1日1回経口投与します。
点滴静注の場合、投与初日に2キット(300mg)を、投与2日目以降は1キット(150mg)を1日1回点滴静注します。
収載時の薬価
錠剤の収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。
- ラスビック錠75mg 1錠:361.40円(1日薬価:361.40円)
収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)
続きを見る
点滴静注キットについては2021年2月18日に薬価収載されました。
- ラスビック点滴静注キット150mg:4,034円
まとめ・あとがき
ラスビックはこんな薬
- ニューキノロン系抗菌薬に分類されている
- DNAジャイレースやトポイソメラーゼⅤを阻害することで超らせん構造の解消を阻害し、殺菌的に作用する
- 肺組織への移行性が高い
審査報告書2)によると、
- 呼吸器感染症患者
- 耳鼻咽喉科領域感染症患者
に対する治療選択肢の一つとなるとされています。
しかし、抗菌薬を使用しなくても自然軽快する感染症に対しては、耐性菌の出現も懸念されることから抗菌薬の使用が推奨されていないため、他剤と同様の位置づけとされていますね。
以上、今回は細菌感染症とラスビック(ラスクフロキサシン)の作用機序についてご紹介しました!
引用文献・資料等
- Antimicrob Agents Chemother. 2018 Mar 27;62(4).
- ラスビック錠 審査報告書
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