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2021年9月27日、「アトピー性皮膚炎」を対象疾患とするサイバインコ(アブロシチニブ)が承認されました!
ファイザー|ニュースリリース
基本情報
製品名 | サイバインコ錠50mg/100mg/200mg |
一般名 | アブロシチニブ |
製品名の由来 | 海外に準じた。 |
製造販売 | ファイザー(株) コ・プロモーション:ヴィアトリス製薬株式会社 |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎 |
用法・用量 | 通常、成人及び12 歳以上の小児には、 アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与する。 なお、患者の状態に応じて200mgを1日1回経口投与することができる。 |
収載時の薬価 | 50mg:2,678.40円 100mg:5,221.40円 200mg:7,832.30円 |
発売日 | 2021年12月13日新発売(HP) |
新規の経口JAK阻害薬ですね。
アトピー性皮膚炎に使用する経口のJAK阻害薬としてはオルミエント(一般名:バリシチニブ)とリンヴォック(一般名:ウパダシチニブ)に次いで3製品目です。
ちなみに、リンヴォックとサイバインコは12歳以上の小児に使用可能です!
既に関節リウマチや乾癬領域では経口JAK阻害薬の5製品が承認・販売されています。また、アトピー性皮膚炎では初の外用JAK阻害薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)も承認されていますね。
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コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】
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今回はアトピー性皮膚炎とサイバインコ(アブロシチニブ)の作用機序とエビデンスについてご紹介します☆
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。
主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。
具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。
部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。
治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)
- 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
- スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
- 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く
ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。
その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服することもあります。
最近では新たな外用薬の新薬も登場してきました。
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モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の作用機序【アトピー性皮膚炎】
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一方で、外用薬等では改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服の他、抗IL-4受容体α(IL-4Rα)抗体薬のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が行われることもあります。
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デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】
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サイバインコを含む経口JAK阻害薬も外用薬等で改善が認められない場合に使用可能です!
アトピー性皮膚炎の原因:マクロファージやTh2細胞による炎症
アトピー性皮膚炎の明確な発症原因は不明確ですが、
- 家族歴・既往歴
- 外的要因
- 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)
などによって、炎症反応が引き起こされることで発症すると考えられています。
様々な原因によって、マクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22などのサイトカイン・ケモカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで痒みを誘発すると考えられています。1)
サイバインコ(アブロシチニブ)の作用機序
炎症性サイトカインであるTNFαやIL-6、IL-2等が炎症を引き起こす際、それらが各受容体に結合して刺激が核に伝えられます。
各受容体には「ヤヌスキナーゼ(JAK)」と呼ばれるタンパク質が付随していて、JAKを介してシグナルが核へと届けられます。
核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、関節リウマチや乾癬が進行してしまいます。
JAKにはJAK1~3までありますが、特にTNFαやIL-6の作用する受容体はJAK-1が関与していることが知られています。
サイバインコはJAKの中でもJAK1を選択的に阻害する薬剤です。
JAK1を阻害することで、TNFαやIL-6による刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑え、アトピー性皮膚炎の進行を抑制すると考えられています。
エビデンス紹介:JADE開発プログラム
根拠とされたのは7つの第Ⅲ相試験からなるJADE(JAK1 Atopic Dermatitis Efficacy and Safety)開発プログラムとのことです。
- JADE MONO-1試験2)
- JADE MONO-2試験3)
- JADE COMPARE試験4)
- JADE TEEN試験5)
- JADE REGIMEN試験
- JADE EXTEND試験
- JADE DARE試験
この中でも代表として、デュピクセント(デュピルマブ)またはプラセボと比較したJADE COMPARE試験4)についてご紹介します!
本試験は局所治療薬だけでは改善しない中等症から重症の成人アトピー性皮膚炎患者さんを対象に、サイバインコ(100mgまたは200mg)とデュピクセントとプラセボを比較した国際共同第Ⅲ相試験です。
主表評価項目は治療開始から12週時点における「IGA達成率」と「EASI-75達成率」とされ、結果は以下の通りでした。
サイバインコ 100mg |
サイバインコ 200mg |
デュピクセント | プラセボ | |
IGA達成率 | 36.6% | 48.4% | 36.5% | 14.0% |
プラセボとの差 p<0.0001 |
プラセボとの差 p<0.0001 |
- | - | |
EASI-75達成率 | 58.7% | 70.3% | 58.1% | 27.1% |
プラセボとの差 p<0.0001 |
プラセボとの差 p<0.0001 |
- | - |
IGA達成率:IGA(包括的重症度評価)スコアが0又は1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合
EASI-75達成率:EASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者さんの割合
サイバインコとプラセボの差を検証することを目的としていたため、いずれの用量においても有意な改善が認められていますね!デュピクセントとの直接的な有意差検定は行われていませんので、数値は参考程度です。
また、副次評価項目として2週時点の「掻痒反応達成率」の結果は以下の通りでした。
サイバインコ 100mg |
サイバインコ 200mg |
デュピクセント | プラセボ | |
掻痒反応達成率 | 31.8% | 49.1% | 26.4% | 13.8% |
プラセボとの差 p<0.0001 |
プラセボとの差 p<0.0001 |
- | - | |
デュピクセントとの差 p=0.20 |
デュピクセントとの差 p<0.001 |
サイバインコ200mg群ではデュピクセントと比較して有意な改善が認められているのは大きな点かと思います。
用法・用量
通常、成人及び12 歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与します。
患者の状態に応じて200mgを1日1回経口投与することができる。
副作用
重大な副作用として、
- 感染症:単純ヘルペス(3.2%)、帯状疱疹(1.6%)、肺炎(0.2%)等
- 静脈血栓塞栓症:肺塞栓症(0.1%未満)及び深部静脈血栓症(0.1%未満)を含む静脈血栓塞栓症
- 血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少0.9%、貧血0.6%)、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少(0.4%)
- 間質性肺炎(0.1%)
- 肝機能障害:ALT(0.8%)、AST(0.6%)の上昇等
- 消化管穿孔(頻度不明)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
他のJAK阻害薬一覧
関節リウマチや他疾患に使用するJAK阻害薬を以下の記事で比較・一覧表を作成していますので、是非ご参考くださいませ。
- ゼルヤンツ(一般名:トファシチニブ)
- オルミエント(一般名:バリシチニブ)
- スマイラフ(一般名:ペフィシチニブ)
- リンヴォック(一般名:ウパダシチニブ)
- ジセレカ(一般名:フィルゴチニブ)
- サイバインコ(一般名:アブロシチニブ)
- コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)
- リットフーロカプセル(リトレシチニブ)
-
JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ
続きを見る
収載時の薬価
収載時(2021年11月25日)の薬価は以下の通りです。
- サイバインコ錠50mg:2,678.40円
- サイバインコ 錠100mg:5,221.40円
- サイバインコ錠200mg:7,832.30円
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】12製品+再生医療等製品(2021年11月25日)
続きを見る
まとめ
サイバインコはこんな薬
- JAK1を選択的に阻害するJAK阻害薬
- 1日1回の経口投与
- 重篤な感染症には注意が必要
アトピー性皮膚炎では3製品目の経口JAK阻害薬です!JAK阻害薬同士の使い分けもキニナルところですので今後の検討を期待したいと思います。
同じ治療ラインで使用する注射剤のデュピクセント(デュピルマブ)と直接比較したJADE COMPARE試験の結果は、薬剤を使い分ける上で重要ではないでしょうか。
-
デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】
続きを見る
以上、今回はアトピー性皮膚炎に使用するJAK阻害薬のサイバインコ(アブロシチニブ)についてご紹介しました!
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