5.内分泌・骨・代謝系

マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序・特徴【糖尿病】

2022年8月25日、厚労省の薬食審・医薬品第一部会にて、「2型糖尿病」を対象疾患とするマンジャロ(チルゼパチド)の承認可否が審議される予定です!

日本イーライリリー|提携のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名マンジャロ皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス
一般名チルゼパチド
製品名の由来
製薬会社製造販売:日本イーライリリー(株)
販売:田辺三菱製薬(株)
効能・効果海外では「成人2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」
用法・用量週1回皮下注射?
収載時の薬価
発売日

 

マンジャロは、

  • GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)と
  • GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)

の両インクレチンの作用を単一分子に統合した国内初のGIP/GLP-1受容体作動薬に分類されています!

 

木元 貴祥
一つの分子でGIP作用とGLP-1作用!すごいですねー。

 

GLP-1については馴染みがあると思いますが、GIPはあまり馴染みがないのではないでしょうか。

 

今回は2型糖尿病と共に、GIPやGLP-1の作用、そしてマンジャロ(チルゼパチド)の作用機序やエビデンスについて解説していきます。

 

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生体内の血糖調節システム

通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。

 

<血糖を上昇させる生体内物質>

  • グルカゴン
  • アドレナリン
  • ノルアドレナリン
  • コルチゾール
  • 成長ホルモン

 

<血糖を下降させる生体内物質>

  • インスリン

 

このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。

 

インスリンの作用とGIP/GLP-1

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。

分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。

インスリンの働き

 

木元 貴祥
この働きによって、血中のブドウ糖を下げる(血糖値の降下)作用を発揮します。

 

 

また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GIP」や「GLP-1」と呼ばれる生体内ホルモンがあります。

  • GIP:グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
  • GLP-1:グルカゴン様ペプチド-1

 

いずれも食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、膵臓や全身の臓器に対して図のような働きを有します。

インスリンの作用とGIP/GLP-1:GIPはGLP-1よりも作用が強力

 

主な作用としては、膵臓におけるインスリンの分泌による血糖降下作用ですね。その他にも、GIPはインスリン感受性亢進、食欲減退などの作用が示唆されています。1)

 

血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません。しかし、GIP/GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。

 

木元 貴祥
まずは体内の血糖調節とそれに関わるホルモンについて解説しました!ここからは糖尿病について解説します。

 

糖尿病とは

平成29年の厚労省調査(3年に1度)によると、糖尿病の総患者数は約328万人超であり、前回の調査から12万人以上増加しています。

厚生労働省平成29年(2017)患者調査の概況

 

糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。

 

健康診断等で

  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上
  • HbA1cが6.5%以上

の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。

 

糖尿病にはその原因や病態によって

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病

に分類されています。

 

日本人では約95%が「2型糖尿病」に分類されており、遺伝因子と食生活・運動不足・肥満等の生活習慣が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。

  • インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
  • インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている

2型糖尿病の発症要因

 

 

主にはインスリンの抵抗性増大によると考えられています。(インスリン分泌低下は軽度~中等度と様々)

 

 

一方、1型糖尿病遺伝因子自己免疫等によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が欠損・破壊されている状態です。(インスリンの分泌低下

従って、治療の基本はインスリンの補充療法です。

 

木元 貴祥
1型・2型、いずれも遺伝因子が関与していますが、その関与の程度は1型糖尿病の方が強いと言われています。

 

2型糖尿病の治療

2型糖尿病治療は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

を基本としますが、最も大切なのは食事療法運動療法です。2)

 

食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。

 

2型糖尿病治療薬

2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。

まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。2)

 

経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。

 

<インスリン分泌低下を改善>

  • スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
  • グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
  • DPP-4阻害薬:GLP-1分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制

 

<インスリン抵抗性を改善>

  • ビグアナイド薬:糖新生の抑制
  • チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上

 

加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。

 

これら経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらない場合、経口薬の増量や併用、そして注射剤(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)の使用が検討されます。

 

マンジャロは、海外において「2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」を効能・効果として承認されているため、通常のGLP-1受容体作動薬よりもより早期に使用が見込まれます。

 

木元 貴祥
実際には国内でどういった適応症で承認されるかによりますね!

 

また、最近では経口血糖降下薬でコントロール不十分な場合、BOTBPTと呼ばれれる治療が行われることもありますね。

  • 持続型インスリン製剤+経口血糖降下薬:BOT(Basal Supported Oral Therapy)
  • 持続型インスリン製剤+GLP-1受容体作動薬:BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 therapy)2)
ゾルトファイ配合注(インスリンデグルデク/リラグルチド)の作用機序【糖尿病】

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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序:GIP/GLP-1受容体作動

マンジャロは、GIP/GLP-1受容体に対する作動薬で、特にGIPに対する作用が強いとされています。また、DPP-4による分解を受けにくいため、長時間血中で作用すると考えられています。

マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序:GIP/GLP-1受容体作動

 

マンジャロのGIP/GLP-1作用によって、血糖降下作用および、食欲減退や満腹感亢進による体重増加抑制作用が期待されています。

海外でも体重減少の効能・効果は有していないため、ご注意ください。

 

木元 貴祥
ちなみに、GIP作用にはグルカゴン分泌作用もありますが、それ以上にインスリン分泌促進と感受性亢進で血糖降下作用の方が強く出ると予想しています。

 

エビデンス紹介:SURPASS試験

マンジャロは日本を含む国際共同臨床開発プログラム「SURPASS」に基づいています。

SURPASSは10個ほどの第Ⅲ相試験から構成されているようですが、今回は代表的なSURPASS-2試験について解説します。3)

 

SURPASS-2試験は、メトホルミン単剤投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者さん(18歳以上、HbA1c 7.0~15.0%、BMI≧25.0 kg/m2)を対象に、以下の4群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「ベースラインから40週後までのHbA1cの変化量」とされ、結果は以下の通りでした。

マンジャロオゼンピック
5mg10mg15mg
ベースラインから40週後までの
HbA1cの変化量
-2.01%-2.24%-2.30%-1.86%
オゼンピックとマンジャロの比較:
いずれの群間でも非劣性と優越性が証明
(P<0.001)
体重減少
(オゼンピックとの差)
-1.9kg-3.6kg-5.5kg-
オゼンピックとマンジャロの比較:
いずれもP<0.001

 

オゼンピックと比較して有意なHbA1cの低下が認められていますね!体重減少も!

 

その他、メトホルミンまたはSGLT2阻害薬による治療下(インスリン未投薬)の患者さんを対象に、マンジャロとトレシーバ(インスリン デグルデク)を比較したSURPASS-3試験でも同様にマンジャロの優越性が認められています。4)

 

副作用

後日更新予定です。

主な副作用としては、胃腸障害(悪心、嘔吐、下痢など)が報告されています。

 

用法・用量

後日更新予定です。

臨床試験では1週間毎の皮下注とされていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

マンジャロはこんな薬

  • 国内初のGIP/GLP-1受容体作動薬
  • GIP/GLP-1作用によって血糖降下作用を示す
  • オゼンピックとの直接比較試験で、有意な血糖降下作用を示した

 

マンジャロは国内初のGIP/GLP-1受容体作動薬として登場する見込みです。

 

これまでの糖尿病治療薬で中心的な位置付けであったGLP-1受容体作動薬のオゼンピックよりも治療効果が高いと期待されていることから、正式承認されればより広く使用されるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
現在申請中のため、正式承認まで楽しみに待ちましょう!

 

以上、今回は2型糖尿病と共に、GIPやGLP-1の作用、そしてマンジャロ(チルゼパチド)の作用機序やエビデンスについて解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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