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2018年3月23日、「2型糖尿病」を効能・効果とするオゼンピック皮下注2mg(セマグルチド)が承認されました!
その後、2020年3月13日には週1回の単回使用製剤(SD製剤)が承認されましたが、暫くしてから出荷停止となり、そのままSD製剤は販売終了となります(経過措置期間は2025年3月末まで)。
なお、通常の2mg製剤は継続して販売されます。
ノボ ノルディスクファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オゼンピック皮下注2mg |
一般名 | セマグルチド(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | なし |
製造販売 | ノボ ノルディスクファーマ(株) |
効能・効果 | 2型糖尿病 |
用法・用量 | 記事内参照 |
オゼンピックは週1回投与のGLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)に分類されますが、類薬としては既に5製品が販売されています。2015年に登場したトルリシティ以来のGLP-1アナログ製剤ですね。
ちなみに、2020年には経口のセマグルチドも承認されています。気になる方はこちらの記事にお進みください。
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リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】
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また、2023年には肥満症治療薬としてのセマグルチドも承認されました。
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ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】
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今回は糖尿病治療とオゼンピック(セマグルチド)の作用機序、そして既存のGLP-1受容体作動薬との比較についてご紹介します。
生体内の血糖調節システム
通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。
<血糖を上昇させる生体内物質>
- グルカゴン
- アドレナリン
- ノルアドレナリン
- コルチゾール
- 成長ホルモン
<血糖を下降させる生体内物質>
- インスリン
このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。
インスリンの作用とGLP-1
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。
分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。
また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GLP-1」と呼ばれる生体内ホルモンがあります。
GLP-1は食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、以下のような働きを有します。
- インスリン分泌促進(血糖依存的)
- グルカゴン分泌抑制(血糖依存的)
- 胃排泄遅延
- 食欲抑制
血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません。
しかし、GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。
糖尿病とは
平成29年の厚労省調査(3年に1度)によると、糖尿病の総患者数は約328万人超であり、前回の調査から12万人以上増加しています。
糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。
健康診断等で
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。
糖尿病にはその原因や病態によって
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
に分類されています。
日本人では約95%が「2型糖尿病」に分類されており、遺伝因子と食生活・運動不足・肥満等の生活習慣が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。
- インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
- インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている
主にはインスリンの抵抗性増大によると考えられています。(インスリン分泌低下は軽度~中等度と様々)
一方、1型糖尿病は遺伝因子や自己免疫等によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が欠損・破壊されている状態です。(インスリンの分泌低下)
従って、治療の基本はインスリンの補充療法です。
2型糖尿病の治療
2型糖尿病治療は
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
を基本としますが、最も大切なのは食事療法と運動療法です。1)
食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。
2型糖尿病治療薬
2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。
まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。1)
経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。
<インスリン分泌低下を改善>
- スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
- グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
- DPP-4阻害薬:GLP-1分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
<インスリン抵抗性を改善>
- ビグアナイド薬:糖新生の抑制
- チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上
加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。
-
【糖尿病】SGLT2阻害薬の作用機序・副作用と一覧まとめ(単剤と配合剤)
続きを見る
これら経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらない場合、経口薬の増量や併用、そして注射剤(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)の使用が検討されます。
また、最近では経口血糖降下薬でコントロール不十分な場合、BOTやBPTと呼ばれれる治療が行われることもありますね。
- 持続型インスリン製剤+経口血糖降下薬:BOT(Basal Supported Oral Therapy)
- 持続型インスリン製剤+GLP-1受容体作動薬:BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 therapy)2)
-
ソリクア配合注(インスリングラルギン/リキシセナチド)の作用機序【糖尿病】
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オゼンピック(セマグルチド)の作用機序
通常、生体内のGLP-1はDPP-4によって速やかに分解されてしまいます。
そこでオゼンピック(セマグルチド)に代表されるGLP-1受容体作動薬は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させてDPP-4の分解を受けにくくした薬剤です!
別名、「GLP-1アナログ製剤」とも呼ばれています(アナログとは“類似の”という意味です)。
従って、投与されると生体内で長時間作用するのが特徴です。
また、GLP-1は血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、生体内に長時間滞留しても低血糖になる恐れがありません。
胃排泄遅延と食欲抑制によって、体重減少効果も示唆されています。
余談:GLP-1の発見
アメリカドクトカゲと呼ばれるトカゲが、小動物を大量に捕食しても血糖値が全然上昇しないことがきっかけで、体内を調べたところ、ヒトのGLP-1によく似たGLP-1アナログが発見されたようです。
副作用
主な副作用として悪心、下痢、リパーゼ増加、便秘などが報告されています。
重大な副作用として低血糖や急性膵炎もありますので注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射します。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量します。
なお、患者さんの状態に応じて適宜増減できますが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができるとされていますね。
用法・用量
- 導入期:0.25mgSD製剤を週1回、4週間投与
- 維持期:0.5mgSD製剤を週1回投与
- 維持期を4週間以上行っても効果不十分な場合:1.0mgSD製剤を週1回投与
オゼンピックとトルリシティの使い分け(エビデンス紹介)
オゼンピックは国内では6番手のGLP-1受容体作動薬ですが、週1回投与製剤としては3番手です。
また、オゼンピックはメトホルミン併用下でトルリシティ(一般名:デュラグルチド)との直接比較試験(SUSTAIN-7試験)において、オゼンピックの方がHbA1cの減少率と体重減少割合が有意に高かったことが示されています。2)
本試験ではオゼンピック(0.5mgまたは1mg)とトルリシティ(0.75mgまたは1.5mg)をそれぞれ40週投与し、低用量/高用量別で有効性を比較しています。
主要評価項目は「40週時点のHbA1cのベースラインからの変化率」でした。
試験名 | SUSTAIN-7試験 | |||
試験群 | オゼンピック 0.5mg |
トルリシティ 0.75mg |
オゼンピック 1mg |
トルリシティ 1.5mg |
40週時点の HbA1cの変化率 |
-1.5% | -1.1% | -1.8% | -1.4% |
p<0.0001 | p<0.0001 | |||
40週時点の 体重の変化量 |
-4.6kg | -2.3kg | -6.5kg | -3.0kg |
p<0.0001 | p<0.0001 |
まとめ・あとがき
オゼンピックはこんな薬
- 6番手のGLP-1受容体作動薬
- 週1回投与製剤としては3番手
- トルリシティとの直接比較試験あり(SUSTAIN-7試験)
オゼンピックが登場し、国内では6製品のGLP-1受容体作動薬が揃いました。一覧表については以下の記事で紹介しています。
-
【糖尿病】GLP-1受容体作動薬の作用機序と一覧まとめ
続きを見る
以上、今回は糖尿病と新規のGLP-1受容体作動薬のオゼンピック(セマグルチド)についてご紹介しました!
経口のセマグルチドが2020年に承認されましたので、是非こちらもご確認くださいませ。
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リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】
続きを見る
肥満症に使用するウゴービ(セマグルチド)も要チェックですね。
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ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】
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