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2021年1月22日、「がん悪液質」を対象疾患とするエドルミズ錠(アナモレリン)が承認されました!
元々、2019年8月29日の同部会にて審議される予定でしたが、残念ながら継続審議となり、ようやくの承認です。
小野薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | エドルミズ錠50mg |
一般名 | アナモレリン塩酸塩 |
製品名の由来 | 体重増加(Add)、光を照らす(Illuminate)を連想させることから命名 |
製造販売 | 小野薬品工業(株) |
効能・効果 | 下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質 ●非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がん |
用法・用量 | 通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として 100mgを1日1回、空腹時に経口投与する。 |
収載時の薬価 | 246.40円 |
元々はがんの種類によらず申請されていましたが、臨床試験の結果を踏まえ、以下のがんにおける悪液質に限定されました。
- 非小細胞肺がん
- 胃がん
- 膵がん
- 大腸がん
アナモレリンは生体内ペプチドであるグレリンと同様の働きをする「グレリン様作用薬」です。
今回はがん悪液質とグレリンの作用、そしてエドルミズ(アナモレリン)の作用機序についてご紹介します。
がん悪液質とは
“悪液質”という言葉は、がんに限った用語ではなく、様々な慢性消耗性疾患の栄養不良による終末を意味しています。
がんが進行すると、正常細胞に使われるはずだった栄養素や酸素が、がん細胞に過剰に使用されてしまい、正常細胞の栄養失調が起こります。
そのため、目に見えてどんどんと体が衰弱していき、体重減少や筋肉量の減少、食欲不振といった症状が進行性に見られます。
また、食物の摂取量の減少、代謝バランス異常も起こるため、がん悪液質は複合的な代謝障害症候群とされています。
がん悪液質の状態になると通常の栄養サポートで改善することが困難で、QOLの低下や予後にも影響しますが、有効な治療手段はありませんでした。
グレリンの生体内の働き
グレリンは主に胃から分泌される生体内ペプチドホルモンです。
その作用は様々1)ですが、一例としては
- 成長ホルモンの分泌促進作用
- 摂食亢進作用
があります。
グレリンが胃のグレリン受容体に作用すると、迷走神経を介して視床下部の
- GHRHニューロン
- NPY/AgRPニューロン(弓状核に存在)
を活性化します。
※GHRH:成長ホルモン放出ホルモン
※NPY/AgRP:ニューロペプチドY/アグーチ関連ペプチド
GHRHニューロンが活性化されると下垂体からの成長ホルモン分泌が亢進され、NPY/AgRPニューロンが活性化されると摂食が亢進されると考えられています。
エドルミズ(アナモレリン)の作用機序
エドルミズは選択的な経口グレリン様作用薬です。
グレリンと同様に胃のグレリン受容体に作用し、
- 成長ホルモン分泌亢進
- 摂食亢進
によって、体重・筋肉量の増加、食欲・代謝が亢進してがん悪液質を改善すると考えれます。
エビデンス紹介:ONO-7643-04試験、ONO-7643-05試験
根拠となった国内の第Ⅱ相試験(ONO-7643-04試験)をご紹介します。2)
本試験は日本人の悪液質を合併している非小細胞肺がん患者さんに対して、エドルミズとプラセボを比較した第Ⅱ相試験です。
共に12週間連日経口投与されています。
本試験の主要評価項目は12週時点の「除脂肪体重のベースラインから変化」です。下表は12週時点における結果です。
試験群 | プラセボ群 | エドルミズ群 |
除脂肪体重のベースラインから変化 | -0.17±0.17kg | 1.38±0.18kg |
p<0.0001 | ||
体重のベースラインから変化 | -0.50±0.19kg | 1.06±0.20kg |
p<0.0001 |
その他、消化器がん(大腸がん、胃がん、膵臓がん)で、6か月以内に5%以上の体重減少が認められ、食欲不振を示す患者さんを対象に、エドルミズ1日1回投与の有効性と安全性を確認した国内第Ⅱ相試験(ONO-7643-05試験)も報告されています。3)
主要評価項目の「除脂肪体重の維持・向上率」は 63.3%(95% CI, 48.3%-76.6%)で、試験結果としては達成していました!
用法・用量
通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100mgを1日1回、空腹時に経口投与します。
また、投与開始から3週間をめどに効果が認められない場合は原則、投与を中止するとされています。漫然と投与しないことが大事ですね。
副作用
主な副作用として、γ-GTP増加12例(6.4%)、グリコヘモグロビン増加11例(5.9%)が報告されています。
また、重大な副作用としては、
- 刺激伝導系抑制(10.7%)
- 高血糖(4.3%)、糖尿病の悪化(4.3%)
- 肝機能障害(6.4%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
心機能系の副作用が気になるところですね。添付文書でも「心筋梗塞又は狭心症のある患者」、「高度の刺激伝導系障害(完全房室ブロック等)のある患者」、「うっ血性心不全のある患者」などは禁忌とされています。
収載時の薬価
収載時(2021年4月21日)の薬価は以下の通りです。
- エドルミズ錠50mg:246.40円
算定方法については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2021年4月21日)
続きを見る
まとめ・あとがき
エドルミズはこんな薬
- 選択的な経口グレリン様作用薬
- グレリン受容体に作用することでがん悪液質を改善する
- 心機能系の副作用には注意が必要
これまで、がん悪液質に対して有効な治療薬がありませんでしたが、エドルミズは新たな治療選択肢として期待されます。
以上、今回はがん悪液質とエドルミズ(アナモレリン)の作用機序についてご紹介しました☆
引用文献・資料等
- Int J Mol Sci. 2017 Apr; 18(4): 798.
- ONO-7643-04試験(肺がん):Cancer. 2018 Feb 1;124(3):606-616.
- ONO-7643-05試験(消化器がん):Cancer . 2019 Dec 1;125(23):4294-4302
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