PASSMED公式LINEの登録者特典|当サイトに掲載している図表の元データ&学習支援AI 薬科GPTをプレゼント♪
2025年4月21日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、「多発性骨髄腫」を対象疾患とするブーレンレップ点滴静注用(ベランタマブ マホドチン)の承認可否が審議される予定です!
グラクソ・スミスクライン|申請のニュースリリース
基本情報
製品名 | ブーレンレップ点滴静注用100mg |
一般名 | ベランタマブ マホドチン(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | |
製造販売 | グラクソ・スミスクライン(株) |
効能・効果 | 再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)? |
用法・用量 | 3週間毎 |
収載時の薬価 | |
発売日 |

ADCでは、ペイロード(結合している薬物)としてMMAE(ベドチン)を用いることが多いのですが、ブーレンレップはMMAF(マホドチン)と呼ばれる新たなペイロードを使用しています。
近年、多発性骨髄腫では二重特異性抗体薬やCAR-T細胞療法薬などの新規作用機序を有する薬剤が多く登場していますね!
今回は多発性骨髄腫の概要と共に、ブーレンレップ(ベランタマブマホドチン)の作用機序・特徴について解説します。
多発性骨髄腫について
通常、人の体内では、異物(ウイルス・細菌など)が侵入した際、B細胞から免疫グロブリン(抗体)が作られることで体を異物から守って感染症等を抑えてくれています。
多発性骨髄腫では、この抗体を産生するB細胞が異常増殖(腫瘍化)することで引き起こされる疾患で、血液腫瘍に分類されています。
がん化したB細胞(“骨髄腫細胞”と呼ばれます)は、健康な血液の産生を妨げたり、骨をもろくするなどのさまざまな障害を引き起こします。
その結果、症状として、
- 骨痛
- 腎機能障害
- 貧血
- 易感染性
- 出血傾向
などがみられます。
またこの骨髄腫細胞の表面には、「BCMA」と呼ばれるシグナル伝達分子が過剰に発現していることも知られています。
BCMA:B Cell Maturation Antigen(B細胞成熟抗原)
多発性骨髄腫の治療
多発性骨髄腫の治療は造血幹細胞移植が可能かどうか、によって選択肢が異なります。1)
- 移植が可能:ボルテゾミブ+デキサメタゾン等を3~4回施行し、奏効すれば造血幹細胞移植
- 移植が不能:Ld療法*やMPB療法*が標準治療。その他、MPT療法*等もある。
*参考
- Ld療法:レナリドミド+デキサメタゾン
- MPB療法:メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ
- MPT療法:メルファラン+プレドニゾロン+サリドマイド
移植が不能な場合、上記の治療と併用して抗CD38抗体のダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)やサークリサ(イサツキシマブ)が使用可能ですね。
-
-
ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
続きを見る
造血幹細胞移植やその後の維持療法については以下の記事をご覧ください。
-
-
ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
続きを見る
移植が成功したとしても一定数の患者さんは残念ながら再発してしまいます。また、移植が不能でMPB療法やMPT療法を行ったとしても不応(難治性)となる場合もあります。
その場合、プロテアソーム阻害薬(例:ボルテゾミブ、イキサゾミブ)もしくは免疫調整薬(例:レナリドミド、ポマリドミド)を単独または併用した治療法が行われます。
今回ご紹介するブーレンレップは、1つ以上の多発性骨髄腫治療歴がある場合に対して、以下との併用で使用します。
- BD療法:ボルテゾミブ+デキサメタゾン
- ポマリドミド+デキサメタゾン
それ以降の治療については、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体を含むレジメンを少なくとも3種類以上受けたことのある多発性骨髄腫に対して、二重特異性抗体薬のテクベイリ(テクリスタマブ)やエルレフィオ(エルラナタマブ)が使用可能です。
また、同様の治療治療ラインに対しては、CAR-T細胞療法のアベクマ(イデカブタジェン ビクルユーセル)も使用可能です。
-
-
アベクマ(イデカブタジェン ビクルユーセル)の作用機序【多発性骨髄腫】
続きを見る
ブーレンレップ(ベランタマブ マホドチン)の構造・作用機序
ブーレンレップはBCMAを特異的に認識する抗体医薬品のベランタマブに、微小管阻害作用を有する抗がん剤のMMAF(マホドチン)を結合させた構造を有しています。

このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が既に承認・販売されていますね。
- マイロターグ(一般名:ゲムツズマブ オゾガマイシン):造血器腫瘍
- カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン):乳がん
- アドセトリス(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン):造血器腫瘍
- ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン):造血器腫瘍
- エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン):乳がん、胃がん
- トロデルビ(サシツズマブ ゴビテカン):乳がん
- パドセブ(一般名:エンホルツマブベドチン):尿路上皮がん
- ダトロウェイ(一般名:ダトポタマブ デルクステカン):乳がん
- テブダック(一般名:チソツマブ ベドチン):子宮頸がん
多発性骨髄腫では初のADCですね。
ブーレンレップは骨髄腫細胞のBCMAを認識して結合した後、細胞質内に侵入していきます。
その後、ブーレンレップは骨髄腫細胞内に取り込まれ、抗がん剤のマホドチンが遊離されます。
そして、マホドチンは骨髄腫細胞内の微小管(チューブリン)を阻害し、骨髄腫細胞の増殖を抑制するといった作用機序ですね!
エビデンス紹介:DREAMM-7試験
根拠となった代表的な臨床試験(DREAMM-7試験)をご紹介します。2)
本試験は1ライン以上の多発性骨髄腫治療歴を有するた再発・難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、ブーレンレップ+BD療法(ボルテゾミブ+デキサメタゾン)と、ダラツムマブ+BD療法を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
試験群 | ブーレンレップ+BD療法 | ダラツムマブ+BD療法 |
無増悪生存期間中央値 | 36.6か月 | 13.4か月 |
HR=0.41(95%CI:0.31~0.53) P<0.001 |

参考までに、同治療ラインにおいて、ブーレンレップ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法とボルテゾミブ+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法を比較したDREAMM-8試験でも同様の結果が報告されています。3)
用法・用量
後日更新予定です。
副作用
後日更新予定です。
前述の臨床試験では、特徴的な副作用として角膜症や視力低下などの眼関連の有害事象が報告されていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ブーレンレップはこんな薬
- 多発性骨髄腫では初のADC(抗体薬物複合体)
- 1つ以上の治療歴を有する多発性骨髄腫に使用する
- ボルテゾミブ+デキサメタゾン または ポマリドミド+デキサメタゾンと併用する
- 眼関連の有害事象には注意が必要
多発性骨髄腫は、抗CD38抗体薬のダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)やサークリサ(イサツキシマブ)、二重特異性抗体のエルレフィオ、CAR-T細胞療法のアベクマなど、新規の薬剤が続々と登場しています。
-
-
ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
続きを見る

今後は既存薬との使い分け等が検討されれば興味深いですね!
以上、今回は多発性骨髄腫とブーレンレップ(ベランタマブ マホドチン)の作用機序等について解説しました!
引用文献・資料等
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン 2024年版
- DREAMM-7試験:N Engl J Med 2024;391:393-407
- DREAMM-8試験:N Engl J Med 2024;391:408-421
\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /
薬剤師におススメの記事
失敗しない薬剤師の転職とは?
数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト。
どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。
- 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
- 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
- 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!
上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!
-
-
薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較
続きを見る
日々の情報収集に最適
-
-
薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選