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2025年2月27日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「子宮頸がん」を対象疾患とするテブダック(チソツマブ ベドチン)の承認が了承されました!
ジェンマブ|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | テブダック点滴静注用40mg |
一般名 | チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | |
製造販売 | ジェンマブ(株) |
効能・効果 | がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸がん |
用法・用量 | 通常、成人にはチソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)として 1 回 2 mg/kg(体重)を 30 分以上かけて、3 週間間隔で点滴静注する。 ただし、1 回量として 200mg を超えないこと。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | |
発売日 |
テブダックは、国内初の抗TF(組織因子)抗体にモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させた新規のADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)ですね!

これまで子宮頸がんでの治療選択肢は限られていましたので、新規の治療薬の登場は朗報ですね。
今回は子宮頸がんとテブダック(チソツマブ ベドチン)の作用機序・エビデンスについて解説していきます。
子宮頸がんと治療
子宮は下部の筒状の「子宮頸部」と、上部の袋状の「子宮体部」に分けられますが、子宮頸部から発生するがんを「子宮頸がん」と呼んでいます。1)
発症にはヒトパピローマウイルス感染が関与しているため、HPVワクチンの積極的な接種が望まれていますね。
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子宮頸がんの治療の基本は手術です。手術後は進行度(ステージ)の決定を行い、再発リスクが高い場合には術後に抗がん剤(化学療法)や放射線治療が行われることもあります。
また、手術が不可能であったり、全身に転移している場合や、再発した場合には化学療法を行います。
一次治療として主に使用される化学療法としては、
- シスプラチン+パクリタキセル
- カルボプラチン+パクリタキセル±キイトルーダ(ペムブロリズマブ)
などが標準治療です。
また、アバスチン(ベバシズマブ)を上記に併用することもあります。
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一次治療を行ったとしても、いずれは不応・不耐となり、二次治療が行われます。しかしながら、二次治療以降で使用できる薬剤は限られてたため、新たな治療選択肢が望まれていました。
近年、新規の抗PD-1抗体薬のリブタヨ(セミプリマブ)が二次治療以降として承認されたものの、前治療でキイトルーダなどの抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体が使用されている場合には使用し辛いといった懸念点もありました。
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今回ご紹介するテブダックは、一次治療でプラチナ系抗がん剤(シスプラチンやカルボプラチン)や抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の治療歴がある場合の二次治療以降に単剤として使用可能です!!

テブダック(チソツマブ ベドチン)の構造・作用機序
子宮頸がんのがん細胞の表面には、しばしば組織因子(TF:Tissue Factor)と呼ばれる因子が発現していて、がんの増殖や転移、血管新生の活性化などに寄与していると考えられています。
テブダックは子宮頸がん細胞の組織因子(TF)を特異的に認識する抗体のチソツマブに、抗がん剤のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させた構造を有しています。
MMAEは微小管(チューブリン)阻害作用を有していて、強力な抗腫瘍活性を持つ抗がん剤ですが、そのまま体内に投与されると、正常細胞も傷つけてしまうため、副作用が強く発現してしまいます。
そこで、子宮頸がん細胞を特異的に認識する抗体であるチソツマブに、抗がん剤のMMAEを結合させることで、抗がん剤ががん細胞のみに作用するよう工夫した薬剤がテブダックです!

このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が登場してきています。ベドチン人気!(笑)
- マイロターグ(一般名:ゲムツズマブ オゾガマイシン):造血器腫瘍
- カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン):乳がん
- エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン):乳がん
- トロデルビ(一般名:サシツズマブ ゴビテカン):乳がん
- アドセトリス(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン):造血器腫瘍
- ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン):造血器腫瘍
- ポライビー(一般名:ポラツズマブ ベドチン):造血器腫瘍
- パドセブ(一般名:エンホルツマブベドチン):尿路上皮がん
テブダックは子宮頸がん細胞にある「TF」を認識して結合します。その後、テブダックはがん細胞内に取り込まれ、抗がん剤のMMAEが遊離されます。
そしてMMAEはがん細胞内の微小管(チューブリン)を阻害し、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序ですね!
エビデンス紹介:innovaTV 301試験
根拠となった臨床試験(innovaTV 301試験)をご紹介します。2)
本試験は、一次治療としてプラチナ系抗がん剤治療後に病勢進行した再発子宮頸がん患者さんを対象に、テブダック単剤群と医師選択の治療(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセドのいずれか)群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
抗PD-1抗体薬・抗PD-L1抗体薬の既治療例を含む
本試験の主要評価項目は「全生存期間」とされ、結果は以下の通りでした。
テブダック群 | 医師選択の治療群 | |
全生存期間中央値 | 11.5か月 | 9.5か月 |
HR=0.70(95%CI:0.54-0.89) P=0.004 |
テブダック群で生存期間の有意な延長が認められていますね!!
また、前治療としての抗PD-1抗体薬・抗PD-L1抗体薬の有無や、組織型として「扁平上皮がん」と「腺がん」におけるサブグループでも一貫した治療効果が確認されていました。
症例数は少ないため、明確ではないものの、前治療としてベバシズマブを使用していた場合、より効果が高いという結果でした。一方、前治療としてベバシズマブを使用していない場合、効果は低そうな印象です。
この理由については、論文中では「不明」とされていましたが、ベバシズマブが関与しているVEGFとテブダックの関与しているTFには相関関係が示唆3-4)されていることから、ベバシズマブの治療歴があるとTFの発現量が増えている可能性もあるかもしれませんね!
同様の治療ラインで使用するリブタヨの臨床試験5)では、抗PD-1抗体薬・抗PD-L1抗体薬の既治療例は除外されていましたので、前治療でキイトルーダ等を使用し、特にベバシズマブを併用していた場合にはテブダックの方が使用しやすいと考えられます。
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リブタヨ(セミプリマブ)の作用機序【子宮頸がん】
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副作用
後日更新予定です。
臨床試験では、特徴的な副作用として眼障害(結膜炎やドライアイなど)、末梢神経障害、出血などが認められていました。
用法・用量
後日更新予定です。
臨床試験では、1回2.0mg/kg(体重)を3週毎に点滴静注とされていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
テブダックはこんな薬
- 国内初のTFを標的とする抗体に、MMAEを結合させたADC
- 子宮頸がんの二次治療以降で使用する(抗PD-1/抗PD-L1抗体薬既治療例もOK)
- 眼障害(結膜炎やドライアイなど)、末梢神経障害には注意が必要
これまで、子宮頸がんは治療開発がなかなか進まず、治療選択肢が限られていました。

同治療ラインで使用するリブタヨとの使い分けについては、今後の検討が待たれるところでしょう。
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リブタヨ(セミプリマブ)の作用機序【子宮頸がん】
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以上、今回は子宮頸がんとテブダック(チソツマブ ベドチン)の作用機序・エビデンスについて解説しました。
参考資料・論文
- がん情報サービス|子宮頸がん
- innovaTV 301試験:N Engl J Med 2024;391:44-55
- Mol Cell Biol. 1999 Mar;19(3):2032–2043.
- Blood (2010) 116 (21): 5117.
- EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9試験:N Engl J Med 2022; 386:544-555
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