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ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序【多発性骨髄腫】

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2021年5月27日、ニンラーロ(イキサゾミブ)の効能・効果である「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」から“自家造血幹細胞移植後の”を削除することが承認されました!

その後、2024年8月16日には新規格の「0.5mg製剤」が承認されています。

基本情報

製品名 ニンラーロカプセル0.5mg/2.3mg/3mg/4mg
一般名 イキサゾミブクエン酸エステル
製品名の由来 特になし
製造販売 武田薬品工業(株)
効能・効果 〇再発又は難治性の多発性骨髄腫
〇多発性骨髄腫における維持療法

 

ニンラーロは2017年3月30日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果として登場した新規のプロテアソーム阻害剤です。その後、2020年3月25日に「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」を追加することが承認されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後は移植有無によらず維持療法としても使用可能ですね。

 

今回は多発性骨髄腫とニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序についてご紹介します。

 

多発性骨髄腫について

通常、人の体内では、異物(ウイルス・細菌など)が侵入した際、B細胞から免疫グロブリン(抗体)が作られることで体を異物から守って感染症等を抑えてくれています。

 

多発性骨髄腫では、この抗体を産生するB細胞が異常増殖(腫瘍化)することで引き起こされる疾患で、血液腫瘍に分類されています。

がん化したB細胞は、健康な血液の産生を妨げたり、骨をもろくするなどのさまざまな障害を引き起こします。

 

その結果、症状として、

  • 骨痛
  • 腎機能障害
  • 貧血
  • 易感染性
  • 出血傾向

などがみられます。

 

多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫の治療は造血幹細胞移植が可能かどうか、によって選択肢が異なります。1)

  • 移植が可能:ボルテゾミブ+デキサメタゾン等の導入療法を3~4回施行し、奏効すれば造血幹細胞移植
  • 移植が不能:Ld療法*やMPB療法*が標準治療。その他、MPT療法*等もある。

 

*参考

  • Ld療法:レナリドミド+デキサメタゾン
  • MPB療法:メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ
  • MPT療法:メルファラン+プレドニゾロン+サリドマイド

新規抗体薬のダラザレックス(ダラツムマブ)も上記療法と併用して使用可能。

ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】

続きを見る

 

 

移植が可能な場合、

  • 導入療法 ⇒ 大量の抗がん剤(例:メルファラン)投与 ⇒ 造血幹細胞移植

の順で腫瘍細胞を完全に根絶させ、正常な血液細胞を生着させていきます。

造血幹細胞移植の概要図

 

移植後は基本的には経過観察(無治療)ですが、場合によってはレナリドミドやサリドマイドによる維持療法が行われることもあります。

ただし、上記薬剤は未承認です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今回ご紹介するニンラーロは移植後の維持療法として使用することが可能ですね。

 

しかしながら、移植が成功したとしても一定数の患者さんは残念ながら再発してしまいます。また、移植が不能でMPB療法やMPT療法を行ったとしても不応(難治性)となる場合もあります。

 

この場合にもニンラーロが使用可能です。

 

それではここからニンラーロの関与するプロテアソームについて解説していきます。

 

がんの増殖とプロテアソーム

がん細胞は細胞分裂のいくつかのプロセス(DNA複製期⇒分裂⇒休止期)を経てどんどん増殖していきます。

 

このプロセスの中には様々なタンパク質が関与していますが、細胞分裂が完了すると、それらのタンパク質は不要となりますので、プロテアソームとよばれる酵素によって分解されます。

がんの増殖とプロテアソーム:不要なタンパク質を分解する

 

このように、プロテアソームが不要なタンパク質を除去することで、がん細胞の中には不要なタンパク質が蓄積しない仕組みになっています。

 

ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序

ニンラーロはこの“プロテアソーム”を阻害する「プロテアソーム阻害剤」と呼ばれる薬剤です。

 

がん細胞のプロテアソームを阻害することで、がん細胞は不要なタンパク質を除去することができず、がん細胞中には不要なタンパク質がどんどん蓄積します。

その結果、がん細胞は細胞分裂ができなくなり、細胞自死(アポトーシス)が引き起こされる、といった作用機序を有するのがニンラーロです。

ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序:プロテアソーム阻害薬

 

エビデンス紹介

根拠となった臨床試験は以下の2つがあります。

  • TOURMALINE-MM1試験2)再発又は難治性の多発性骨髄腫
  • TOURMALINE-MM3試験3):多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法

 

詳細は割愛しますが、いずれもプラセボと比較して有意に無増悪生存期間の延長が示されています。

 

まとめ・あとがき

ニンラーロはこんな薬

  • 初の経口投与可能なプロテアソーム阻害剤
  • プロテアソームを阻害することで腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する
  • 造血幹細胞移植後の維持療法として有効性が示されている

 

既に、同様のプロテアソーム阻害剤としては、

がありますが、いずれも注射剤でした。

 

今回ご紹介したニンラーロは初の経口プロテアソーム阻害剤ですので、利便性の向上が期待できますね。

 

また、多発性骨髄腫の造血幹細胞移植後の維持療法の適応を有する薬剤はニンラーロが初となります!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
患者さんにとっては治療選択肢が増えるため、朗報ではないかと考えます。

 

以上、今回は多発性骨髄腫とニンラーロの作用機序等をご紹介しました!

 

最近登場した多発性骨髄腫の新薬ダラザレックス(ダラツムマブ)も是非ご確認ください。

ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】

続きを見る

 

引用文献・資料等

  1. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版
  2. TOURMALINE-MM1試験:N Engl J Med 2016; 374:1621-1634
  3. TOURMALINE-MM3試験:Lancet 2019; 393: 253–64

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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