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2019年8月22日、ロンサーフ配合錠(トリフルリジン/チピラシル)の効能・効果に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」が追加されました!
大鵬薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ロンサーフ配合錠T15/T20 |
一般名 | トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠 |
製品名の由来 | Long Surviving Fluorothymidine(ロングサバイバルをもたらす フルオロチミジン系薬剤という意)より合成用語としてロンサーフ(Lonsurf)と命名 |
製造販売 | 大鵬薬品工業(株) |
効能・効果 | ●治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん ●がん化学療法後に増蕪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん |
用法・用量 | 後述 |
ロンサーフは既に2014年3月24日、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能効果として承認されている薬剤ですが、2019年には胃がんの適応拡大が承認されましたね。
今回はがんのDNA複製メカニズムとロンサーフの作用機序についてご紹介します。
がん細胞の増殖とDNA複製
がん細胞が増殖する際、まずDNAの複製が行われます。
二本鎖DNAが解かれて一本鎖DNAになり、その後ポリメラーゼ等によって複製が行われて二本鎖DNAが完成します。
DNAを構成する単位として「塩基」が知られていますが、以下の4種類があります。
- アデニン(A)
- チミン(T)
- グアニン(G)
- シトシン(C)
DNA複製の際にはこれら4種類の塩基がDNA鎖内に取り込まれることで合成が行われていきます。
ロンサーフ配合錠の作用機序
ロンサーフ配合錠は以下の成分を含む配合剤です。
- トリフルリジン(FTD):主成分
- チピラシル(TPI):FTDの代謝抑制
FTDとTPIは1:0.5のモル比で配合されています。
トリフルリジン(FTD)の作用機序
有効成分のトリフルリジンはDNA塩基の「チミン」に類似した構造の物質ですが、DNA塩基としての働きはありません。
がん細胞のDNA複製時にチミンの代わりにDNA鎖内に取り込まれることで、その後の複製反応が中断されてしまいます。
また、トリフルリジンが取り込まれたDNAは、通常のDNAとは異なる構造になってしまうため、がん細胞のDNA機能が障害されて抗腫瘍効果を発揮します。
チピラシル(TPI)の作用機序
有効成分のトリフルリジンは肝臓に存在するチミジンホスホリラーゼと呼ばれる代謝酵素によってすぐに代謝・分解されてしまいます。
チピラシルは肝臓のチミジンホスホリラーゼを選択的に阻害することでFTDの代謝・分解を抑制し、トリフルリジンの血中濃度を高く保ちます。
その結果、FTDの効果持続時間の延長、抗がん作用の増強が期待できます!
このようにロンサーフ配合錠は抗がん作用のあるトリフルリジン、そしてその代謝・分解を抑制するチピラシルを組み合わせた経口抗がん剤です。
用法・用量
大腸がんも胃がんも同じです。
1日2回(朝食後と夕食後)、5日間連続経口投与したのち2日間休薬し、これを2回繰り返したのち14日間休薬します。これを1コースとして投与を繰り返すこととされています。
副作用
主な副作用としては、白血球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少、悪心・嘔吐、食欲減退、疲労、血小板減少、下痢、赤血球減少、などが報告されています。
大腸がんのエビデンス紹介(RECOURSE試験)
根拠となった第Ⅲ相臨床試験(RECOURSE試験)をご紹介します。1)
本試験は5-FU、カンプト(一般名:イリノテカン)、エルプラット(一般名:オキサリプラチン)、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)、アービタックス(一般名:セツキシマブ)等、2レジメン以上の前治療歴を有する進行・再発大腸がん患者さんを対象に、ロンサーフ群とプラセボ群を比較した臨床試験です。
主要評価項目は「全生存期間」でした。
試験群 | ロンサーフ群 | プラセボ群 |
全生存期間中央値 | 7.1か月 | 5.3か月 |
HR=0.68, P<0.001 | ||
無増悪生存期間中央値* | 2.0か月 | 1.7か月 |
HR=0.48, P<0.001 |
*無増悪生存期間:治療開始からがんが大きく(増悪)するまでの期間
このように、プラセボと比較してロンサーフでは生存期間の有意な延長が認められています。
胃がんのエビデンス紹介(TAGS試験)
根拠となった第Ⅲ相臨床試験(TAGS試験)をご紹介します。2)
本試験は5-FU、シスプラチン/オキサリプラチン、タキサン系薬剤、イリノテカン、HER2陽性の場合はハーセプチン等、2レジメン以上の治療歴を有する進行・再発胃がん患者さんを対象に、ロンサーフ群とプラセボ群を比較した臨床試験です。
主要評価項目は「全生存期間」でした。
試験群 | ロンサーフ群 | プラセボ群 |
全生存期間中央値 | 5.7か月 | 3.6か月 |
HR=0.69, 片側層別化P=0.00029 | ||
無増悪生存期間中央値 | 2.0か月 | 1.8か月 |
HR=0.57, P<0.0001 |
このように、プラセボと比較してロンサーフでは生存期間の有意な延長が認められています。
まとめ・あとがき
ロンサーフはこんな薬
- トリフルリジン(FTD)とチピラシル(TPI)の配合錠
- FTDがチミンの代わりにDNA鎖内に取り込まれる
- TPIはFTDの代謝・分解を抑制する
StageⅣや再発の大腸がんの標準的治療は5-FU、エルプラット(一般名:オキサリプラチン)、カンプト(一般名:イリノテカン)、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)、アービタックス(一般名:セツキシマブ)、等がありますが、これらの薬剤に耐性ができた場合に、ロンサーフ配合錠を使用することができます。
同じく、StageⅣや再発の胃がんの標準的治療は5-FU、5-FU、エルプラット(一般名:オキサリプラチン)、カンプト(一般名:イリノテカン)、ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)、等がありますが、これらの薬剤に耐性ができた場合に、ロンサーフ配合錠を使用することができます。
同様の治療選択肢としてはオプジーボ(一般名:ニボルマブ)があり、ロンサーフとの使い分けが気になるところですね。
このような患者さんにとって、ロンサーフ配合錠が貢献できるのでは、と思います。
以上、今回はロンサーフの作用機序と共に、根拠となったエビデンスについてご紹介しました。
引用文献・資料等
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