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2024年2月9日、オプジーボ(ニボルマブ)の効能・効果に「根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」を追加することが承認されました!
小野薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オプジーボ点滴静注20mg/100mg/240mg |
一般名 | ニボルマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | optimal(最適な)+PD-1+nivolumab(一般名)から命名 |
製薬会社 | 製造販売:小野薬品工業(株) プロモーション提携:ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株) |
効能・効果 | ●悪性黒色腫※ ●切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん※ ●非小細胞肺がんにおける術前補助療法 ●根治切除不能又は転移性の腎細胞がん※ ●再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫 ●再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん ●治癒切除不能な進行・再発の胃がん ●がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫 ●がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん※ ●根治切除不能な進行・再発の食道がん ●食道がんにおける術後補助療法 ●原発不明がん ●尿路上皮がんにおける術後補助療法 ●悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫を除く) ●根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍 |
「※」はヤーボイ併用療法も可な疾患
ヤーボイと併用可能な以下の効能・効果については別の記事で解説しています。
- 悪性黒色腫
- 非小細胞肺がん
- 腎細胞がん
- 結腸・直腸がん(大腸がん)
- 食道がん
-
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺/食道がん】
続きを見る
今回の記事では胃がん・尿路上皮がんの疾患と共に、オプジーボの作用機序・エビデンスを解説しています。
胃がんと治療
胃がんの治療は発見時のStageによって異なります。
最近では胃がん検診受診率の向上により、より早期で発見できることが多いとされています。
発見時に遠隔臓器に転移がある場合(StageⅣ)や、再発した胃がんの場合、手術によって取り除くことができないため、抗がん剤併用(化学療法)による治療が原則です。
StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%は「HER2」と呼ばれる受容体が発現していることが知られています。
HER2が陽性の場合、HER2を阻害するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)を併用した以下のような化学療法が行われます。
- XP(カペシタビン+シスプラチン)+トラスツズマブ
- SP(S-1+シスプラチン)+トラスツズマブ
- SOX(S-1+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
- CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
ハーセプチンの作用機序については以下の記事をご確認ください。
-
ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】
続きを見る
一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。
- SOX(S-1+オキサリプラチン)
- SP(S-1+シスプラチン)
- DS(S-1+ドセタキセル)
- XP(カペシタビン+シスプラチン)
- CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
- FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート)
今回、オプジーボはHER2陰性の場合、SOXやCAPOXやFOLFOXと併用して使用可能となりました!
【参考】最適使用推進ガイドライン(医薬品)|ニボルマブ(遺伝子組換え)>胃癌
ただし、上記の最適使用推進ガイドラインではこのような限定もあるため、HER2陰性例全員にというわけではなさそうです。まずはHER2陰性でPD-L1発現率が5%以上の患者さんから使用されると思われます。
また、PD-L1発現状況(CPS)により本剤の上乗せ効果が異なる傾向が示唆されている。原則として、これらを踏まえ、PD-L1発現率が5%未満(CPS5未満)であることが確認された患者においては、化学療法単独による治療についても考慮する。
上記の初回治療(一次化学療法)で増悪が認められた場合、二次治療としてはタキソール+サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)による併用療法が行われます。
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サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】
続きを見る
尿路上皮がんと治療
腎臓から続く「腎盂→尿管→膀胱→尿道」のことを尿路と呼んでいますが、ここは上皮粘膜に覆われています。そして、尿路の上皮粘膜から発生するがんが尿路上皮がんです。
尿路上皮がんのうち、最も頻度が高いのが膀胱がんであり、全体の約95%を占めています。
初期の尿路上皮がんの場合、開腹手術やTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)などによって根治が可能ですが、根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がんでは再発の可能性が高く、新たな治療が望まれていました。
オプジーボは再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がんの術後に投与(術後補助療法)することで再発リスクの低下が期待されています!
ちなみに、発見時に他の臓器に転移のある場合(StageⅣ)、抗がん剤(化学療法)による治療が基本ですね。パドセブ(エンホルツマブベドチン)の記事で概要を解説していますので併せてご確認くださいませ♪
-
パドセブ(エンホルツマブベドチン)の作用機序【尿路上皮がん】
続きを見る
それではここからオプジーボの関与する免疫チェックポイントについて解説していきます。
がんと免疫チェックポイント
通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。
その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。
PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。
これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。
オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序
今回紹介するオプジーボは、「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体薬」と呼ばれる、がん免疫療法薬です。
オプジーボはT細胞の「PD-1」を特異的に抑制することで、がん細胞からのブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。
その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆
T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。
ただし、免疫活性化に伴い、自己免疫疾患(例:甲状腺機能異常、腸炎、一型糖尿病、肝炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。
胃がんのエビデンス紹介
胃がんのエビデンスとしては、最初に承認された三次治療以降を対象としたATTRACTION-2試験、そして一次治療を対象としたCheckMate-649試験とATTRACTION-4試験があります。
三次治療以降:ATTRACTION-2試験
本試験は一次・二次治療で増悪した胃がん患者さんを対象にオプジーボ投与群とプラセボ投与群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。1)
主要評価項目は「全生存期間(OS)」でした。
試験群 | プラセボ群 | オプジーボ群 |
全生存期間中央値 | 4.14か月 | 5.26か月 |
HR=0.63, p<0.001 | ||
PFS中央値* | 1.45か月 | 1.61か月 |
HR=0.60, p<0.001 | ||
奏効率† | 30% | 0% |
p<0.0001 |
*無増悪生存期間(PFS):治療開始から、がんが増悪(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
このようにプラセボと比較して、オプジーボは有意に生存期間を延長することが示されました。
一次治療:CheckMate-649試験とATTRACTION-4試験
一次治療の根拠とされた臨床試験は以下の2つで、いずれもHER2陰性の胃がんの一次治療(化学療法 vs. 化学療法+オプジーボ)を対象にしていますが、実施された国や併用する化学療法などが異なっています。
- CheckMate-649試験2):日本・韓国・台湾・米国・欧州・カナダなど全世界規模で実施され、併用する化学療法はFOLFOXもしくはCAPOX
- ATTRACTION-4試験3):日本・韓国・台湾で実施され、併用する化学療法はCAPOXもしくはSOX
CheckMate-649試験の主要評価項目は「CPSが5以上の患者さんに対する全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
※CPS:combined positive scoreのことで、PD-L1の陽性具合を表している
試験群 | 化学療法群 | 化学療法+ オプジーボ群 |
CPSが5以上の患者さんに対する 全生存期間中央値 |
11.1か月 | 14.4か月 |
HR=0.71 [98.4% CI 0.59-0.86] p<0·0001 |
||
CPSが5以上の患者さんに対する PFS中央値 |
6.05か月 | 7.7か月 |
HR=0.68 [98% CI 0.56-0.81] p<0·0001 |
||
登録された全例(PD-L1陰性も含む)に対する 全生存期間中央値 |
11.6か月 | 13.8か月 |
HR=0.80 [99.3% CI 0.68-0.94] p=0.0002 |
PD-L1陽性(CPS≧5)の患者さんだけでなく、全例でも有意なOSの延長が認められているのはスゴイ!
一方、ATTRACTION-4試験の主要評価項目は「全例における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りです。
試験群 | 化学療法群 | 化学療法+ オプジーボ群 |
全生存期間中央値 | 17.15か月 | 17.45か月 |
HR=0.90 [95% CI: 0.75-1.08] p=0.26 |
||
PFS中央値 | 8.34か月 | 10.45か月 |
HR=0.68 [98.51% CI: 0.51-0.90] p=0.0007 |
PFSは有意に延長していましたが、残念ながらOSの延長効果は認められませんでしたね・・・。
以上、2つの臨床試験が承認審査の際に評価されましたので、
- 併用する化学療法はFOLFOX or CAPOX or SOXのうちどれか
- PD-L1陽性例(CPS≧5)への使用が推奨される
と最適使用推進ガイドラインで書かれていました。
尿路上皮がん術後補助療法のエビデンス:CheckMate-274試験
尿路上皮がん術後補助療法の根拠となった試験(CheckMate-274試験)をご紹介します。4)
本試験は根治切除後の再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者さんを対象に、オプジーボ単剤療法とプラセボを比較評価した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「PD-L1発現レベルが1%以上の患者におけるDFS*」とされ、結果は以下の通りでした。
オプジーボ単剤 | プラセボ | |
PD-L1発現レベルが1%以上の 患者における6か月時点のDFS率 |
74.5% | 55.7% |
HR=0.55(98.72%CI:0.35~0.85) P<0.001 |
*DFS(無病生存期間):再発・二次がん発生の無く生存している期間
PD-L1が1%未満の患者さんも含めた全体でもオプジーボ群で有意な改善が認められていました!すごい。
あとがき
今までのがん治療は、
- 手術
- 薬物治療(抗がん剤や分子標的薬)
- 放射線治療
が主な治療でしたが、近年はオプジーボのような「免疫療法」もがん領域の新たな治療法の一つとして確立されてきています!
今後は抗がん剤との併用療法や、分子標的治療薬との併用療法などが色々ながんで開発が進んで行くものと予想されます。
例:抗がん剤+テセントリク(アテゾリズマブ)の併用
-
テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】
続きを見る
例:免疫チェックポイント阻害薬+分子標的薬の併用
-
バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】
続きを見る
以上、今回はオプジーボの作用機序と胃がん・食道がん・尿路上皮がんについて解説しました!
参考論文・資料等
- ATTRACTION-2試験(胃がんの三次治療):Lancet. 2017 Dec 2;390(10111):2461-2471.
- CheckMate-649試験(胃がんの一次治療):Lancet. 2021 Jul 3;398(10294):27-40.
- ATTRACTION-4試験(胃がんの一次治療):Lancet Oncol. 2022 Feb;23(2):234-247.
- CheckMate-274試験(尿路上皮がんの術後補助療法):N Engl J Med 2021; 384:2102-2114
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