4.消化器系 12.悪性腫瘍

オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序【胃・食道・頭頸部がん】

2021年11月25日オプジーボ(ニボルマブ)

  • HER2陰性の切除不能な進行・再発の胃がん」の一次治療
  • 食道がん」における術後補助化学療法

に関する適応拡大が承認されました!

小野薬品|ニュースリリース

基本情報

製品名オプジーボ点滴静注20mg/100mg/240mg
一般名ニボルマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来optimal(最適な)+PD-1+nivolumab(一般名)から命名
製薬会社製造販売:小野薬品工業(株)
プロモーション提携:ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株)
効能・効果●悪性黒色腫
●切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
●根治切除不能又は転移性の腎細胞がん
●再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
●再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん
●治癒切除不能な進行・再発の胃がん
●がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん
●切除不能な進行・再発の食道がん
●食道がんにおける術後補助療法

「※」はヤーボイ併用療法も可な疾患

 

木元 貴祥
胃がんの一次治療、食道がんの術後補助療法、共に免疫チェックポイント阻害薬では初です!

 

ヤーボイと併用可能な以下の効能・効果については別の記事で解説しています。

  • 悪性黒色腫
  • 非小細胞肺がん
  • 腎細胞がん
  • 結腸・直腸がん(大腸がん)
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺がん】

続きを見る

 

今回の記事では胃がん・食道がんのオプジーボ単剤療法とそのエビデンス等について解説していきます。

 

胃がんと治療

胃がんの治療は発見時のStageによって異なります。

最近では胃がん検診受診率の向上により、より早期で発見できることが多いとされています。

 

発見時に遠隔臓器に転移がある場合(StageⅣ)や、再発した胃がんの場合、手術によって取り除くことができないため、抗がん剤併用(化学療法)による治療が原則です。

StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%は「HER2ハーツー」と呼ばれる受容体が発現していることが知られています。

胃がんの20%はHER2が陽性である

 

HER2が陽性の場合、HER2を阻害するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)を併用した以下のような化学療法が行われます。

  • XP(カペシタビン+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SP(S-1+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SOX(S-1+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
  • CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)+トラスツズマブ

 

ハーセプチンの作用機序については以下の記事をご確認ください。

ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】

続きを見る

 

一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。

  • SOX(S-1+オキサリプラチン)
  • SP(S-1+シスプラチン)
  • DS(S-1+ドセタキセル)
  • XP(カペシタビン+シスプラチン)
  • CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
  • FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート)

 

今回、オプジーボはHER2陰性の場合、SOXCAPOXFOLFOXと併用して使用可能となりました!

【参考】最適使用推進ガイドライン(医薬品)|ニボルマブ(遺伝子組換え)>胃癌

 

ただし、上記の最適使用推進ガイドラインではこのような限定もあるため、HER2陰性例全員にというわけではなさそうです。まずはHER2陰性でPD-L1発現率が5%以上の患者さんから使用されると思われます。

また、PD-L1発現状況(CPS)により本剤の上乗せ効果が異なる傾向が示唆されている。原則として、これらを踏まえ、PD-L1発現率が5%未満(CPS5未満)であることが確認された患者においては、化学療法単独による治療についても考慮する。

 

上記の初回治療(一次化学療法)で増悪が認められた場合、二次治療としてはタキソール+サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)による併用療法が行われます。

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】

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木元 貴祥
ちなみに、これまでオプジーボは三次治療での使用に限られていました。

 

食道がんと治療

食道がんはその名の通り、食道に発生するがんです。日本人の食道がんは約半数が食道の中央付近からでき、次に食道の下部に多くできると言われています。

 

治療の基本は手術と放射線治療ですが、がんが進行している場合、適宜、抗がん剤(化学療法)が併用して行われます。

 

特に発見時に他の臓器に転移の有る場合(StageⅣ)、5-FUとシスプラチンの併用療法が初回治療(一次治療)として行われますが、その後の治療選択肢は限られていました。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するオプジーボは初回治療後の二次治療として効果が期待されています。

 

ちなみに、類薬のキイトルーダ(ペムブロリズマブ)は2021年11月25日より一次治療から使用可能となりました。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】

続きを見る

 

それではここからオプジーボの関与する免疫チェックポイントについて解説していきます。

 

がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1ピーディーエルワン」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

がん細胞とPD-L1

 

PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

木元 貴祥
本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

 

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序

今回紹介するオプジーボは、「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体薬」と呼ばれる、がん免疫療法薬です。

 

オプジーボはT細胞の「PD-1」を特異的に抑制することで、がん細胞からのブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

ただし、免疫活性化に伴い、自己免疫疾患(例:甲状腺機能異常、腸炎、一型糖尿病、肝炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。

 

胃がんのエビデンス紹介

胃がんのエビデンスとしては、最初に承認された三次治療以降を対象としたATTRACTION-2試験、そして一次治療を対象としたCheckMate-649試験とATTRACTION-4試験があります。

 

木元 貴祥
まずは最初のATTRACTION-2試験から解説していきますね~。

 

三次治療以降:ATTRACTION-2試験

本試験は一次・二次治療で増悪した胃がん患者さんを対象にオプジーボ投与群とプラセボ投与群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。1)

 

主要評価項目は「全生存期間(OS)」でした。

試験群プラセボ群オプジーボ群
全生存期間中央値4.14か月5.26か月
HR=0.63, p<0.001
PFS中央値*1.45か月1.61か月
HR=0.60, p<0.001
奏効率30%0%
p<0.0001

*無増悪生存期間(PFS):治療開始から、がんが増悪(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

このようにプラセボと比較して、オプジーボは有意に生存期間を延長することが示されました。

 

一次治療:CheckMate-649試験とATTRACTION-4試験

一次治療の根拠とされた臨床試験は以下の2つで、いずれもHER2陰性の胃がんの一次治療(化学療法 vs. 化学療法+オプジーボ)を対象にしていますが、実施された国や併用する化学療法などが異なっています。

  • CheckMate-649試験2):日本・韓国・台湾・米国・欧州・カナダなど全世界規模で実施され、併用する化学療法はFOLFOXもしくはCAPOX
  • ATTRACTION-4試験3):日本・韓国・台湾で実施され、併用する化学療法はCAPOXもしくはSOX

ATTRACTION-4の第Ⅲ相部分は論文未公表のため、学会のデータを参照しています

 

CheckMate-649試験の主要評価項目は「CPSが5以上の患者さんに対する全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。

※CPS:combined positive scoreのことで、PD-L1の陽性具合を表している

試験群化学療法群化学療法+
オプジーボ群
CPSが5以上の患者さんに対する
全生存期間中央値
11.1か月14.4か月
HR=0.71 [98.4% CI 0.59-0.86]
p<0·0001
CPSが5以上の患者さんに対する
PFS中央値
6.05か月7.7か月
HR=0.68 [98% CI 0.56-0.81]
p<0·0001
登録された全例(PD-L1陰性も含む)に対する
全生存期間中央値
11.6か月13.8か月
HR=0.80 [99.3% CI 0.68-0.94]
p=0.0002

 

PD-L1陽性(CPS≧5)の患者さんだけでなく、全例でも有意なOSの延長が認められているのはスゴイ!

 

 

一方、ATTRACTION-4試験の主要評価項目は「全例における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群化学療法群化学療法+
オプジーボ群
全生存期間中央値17.15か月17.45か月
HR=0.90 [95% CI: 0.75-1.08]
p=0.257
PFS中央値8.34か月10.45か月
HR=0.68 [98.51% CI: 0.51-0.90]
p=0.0007

 

PFSは有意に延長していましたが、残念ながらOSの延長効果は認められませんでした。

 

以上、2つの臨床試験が承認審査の際に評価されましたので、

  • 併用する化学療法はFOLFOX or CAPOX or SOXのうちどれか
  • PD-L1陽性例(CPS≧5)への使用が推奨される

最適使用推進ガイドラインで書かれていました。

 

木元 貴祥
まずはPD-L1陽性(CPS≧5)でCAPOXやSOXとの併用で使用されていきそうですね。現状、FOLFOXは未承認ですからね…。

 

食道がんのエビデンス紹介:ATTRACTION-3試験

本試験は一次治療の5-FU+プラチナ製剤(例:シスプラチン)で増悪した食道がん患者さんを対象に、オプジーボ投与群とタキサン系薬剤投与群(パクリタキセル or ドセタキセル)を比較した第Ⅲ相臨床試験です。4)

 

主要評価項目は「全生存期間」でした。

試験群タキサン群オプジーボ群
全生存期間中央値8.4か月10.9か月
HR=0.77(95% CI: 0.62-0.96)
p=0.019
PFS中央値3.4か月1.7か月
HR=1.08(95% CI: 0.87-1.34)
奏効率22%19%

 

このようにこれまで標準治療であったタキサン系薬剤と比較して、オプジーボは有意に生存期間を延長することが示されました。

 

木元 貴祥
タキサン系薬剤については以下の記事で解説しています。
タキソールとタキソテールの作用機序と副作用【抗がん剤】

続きを見る

 

 

食道がんの術後補助化学療法については疾患解説を割愛しましたが、根拠となった臨床試験はCheckMate-577試験です。5)

本試験は術前補助化学放射線療法(CRT)を受け、病理学的に完全奏効が得られなかった食道がんまたは食道胃接合部がん切除後患者さんの術後補助療法として、プラセボとオプジーボ(1年間)を比較する第Ⅲ相臨床試験です。

結果は割愛しますが、主要評価項目の「無病生存期間」はオプジーボ群で有意に延長が認められていました。

 

木元 貴祥
食道がんの術後補助化学療法で免疫チェックポイント阻害薬は初ですね!キイトルーダとのシェア争いが激化の予想!(笑)

 

あとがき

今までのがん治療は、

  1. 手術
  2. 薬物治療(抗がん剤や分子標的薬)
  3. 放射線治療

が主な治療でしたが、近年はオプジーボのような「免疫療法」もがん領域の新たな治療法の一つとして確立されてきています!

 

今後は抗がん剤との併用療法や、分子標的治療薬との併用療法などが色々ながんで開発が進んで行くものと予想されます。

 

木元 貴祥
もし気になる方は以下の記事をご覧くださいませ~。

 

例:抗がん剤+テセントリク(アテゾリズマブ)の併用

テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】

続きを見る

 

例:免疫チェックポイント阻害薬+分子標的薬の併用

バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】

続きを見る

 

以上、今回はオプジーボの作用機序と胃がん・食道がんについて解説しました!

 

参考論文・資料等

  1. ATTRACTION-2試験(胃がんの三次治療):Lancet. 2017 Dec 2;390(10111):2461-2471.
  2. CheckMate-649試験(胃がんの一次治療):Lancet. 2021 Jul 3;398(10294):27-40. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00797-2.
  3. ATTRACTION-4試験(胃がんの一次治療):Annals of Oncology (2020) 31 (suppl_4): S1142-S1215. 10.1016/annonc/annonc325
  4. ATTRACTION-3試験(食道がんの二次治療):Lancet Oncol. 2019 Nov;20(11):1506-1517.
  5. CheckMate-577試験(食道がんの術後補助療法):N Engl J Med 2021; 384:1191-1203

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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