4.消化器系 12.悪性腫瘍

リトゴビ(フチバチニブ)の作用機序【胆道がん】

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2023年6月26日、「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とするリトゴビ錠(フチバチニブ)が承認されました!

大鵬薬品|ニュースリリース

基本情報

製品名 リトゴビ錠4mg
一般名 フチバチニブ
製品名の由来 Inspired by ''guiding patients,'' or a guiding light showing patients
the way out of the dark, to a better lifeより
「LYTGOBI」及び「リトゴビ」と命名
製造販売 大鵬薬品(株)
効能・効果 がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん
用法・用量 通常、成人には、フチバチニブとして1日1回20mgを空腹時に経口投与する。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価 10,252.50円
発売日 2023年9月7日(HP

 

リトゴビは、がんの増殖に関与しているFGFR1/2/3/4を選択的に阻害する新規の経口FGFR阻害薬ですね。

 

同様の効能・効果、作用機序を有する薬剤として、既にペマジール(ペミガチニブ)が承認されています。

ペマジール(ペミガチニブ)の作用機序【胆道がん】

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木元 貴祥
木元 貴祥
使い分け等については今後の課題でしょうか。そもそも患者さんの数が非常に限られていますね。

 

今回は胆管がんとリトゴビ(フチバチニブ)の作用機序について解説していきます。

 

胆道がんとは

肝臓で生成される胆汁(主に脂肪を分解する消化液)は、肝臓内の管を通って十二指腸の乳頭部から放出されます。

この胆汁が通る管のことを「胆管」と呼んでいます。また、胆汁を一時的に貯留する器官が「胆のう」です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
胆管・胆のう・十二指腸乳頭部をまとめて「胆道」と呼びますね。

 

胆道がんはその名の通り、胆道から発生する悪性腫瘍です。

 

初期にはほぼ無症状ですが、がんが進行すると、

  • 黄疸
  • 腹痛
  • 体重減少、発熱、食欲不振、全身倦怠感

といった症状が発現してきます。1)

 

治療法

初期に発見できた場合、手術による切除が最も有効な治療になります。

しかし、発見時にがんが大きくて切除できない場合(局所進行)や、他の臓器に転移している場合(遠隔転移)、手術はできません。

 

この場合、抗がん剤による化学療法が第一選択です。初回治療(一次治療)として使用される化学療法には以下があります。2)

  • ゲムシタビン+シスプラチン療法
  • ゲムシタビン+S-1療法
  • ゲムシタビン+シスプラチン+S-1療法

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ゲムシタビンを基本とする併用療法ですね。

 

最近では一次治療に免疫チェックポイント阻害薬のイミフィンジ(デュルバルマブ)も併用可能になりました。

イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺がん/胆道がん】

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初回治療を行ったとしてもいずれは抵抗性が生じ、上記治療が不応となってきます。

 

その場合、二次治療が行われますが、残念ながら明確なエビデンスのある治療法がなく、5-FU系抗がん剤(例:S-1等)が選択されることが多いです。2)

ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】

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がんの遺伝子検査でMSI-Hと診断された場合にはキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が二次治療に行われることもありますね。2)

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】

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今回ご紹介するリトゴビはFGFR2融合遺伝子が陽性の場合、二次治療として治療効果が期待されている薬剤です!

胆管がんでは10~14%にFGFR2融合遺伝子陽性が認められるとされています。3-4)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
国内におけるFGFR2融合遺伝子陽性の胆道がん患者さん数は、912~1,345人と推測されています。

 

リトゴビ(フチバチニブ)の作用機序|FGFR2融合遺伝子とは

FGFR(fibroblast growth factor receptor:線維芽細胞増殖因子受容体)は正常細胞にも存在している受容体で、因子(FGF等)が結合することで活性化して細胞の活性や増殖に関与しています。

 

FGFRにはサブタイプがあり、FGFR1、FGFR2、FRFR3が知られていて、それぞれFGFR1/2/3遺伝子から合成されます。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今回はリトゴビが関与するFGFR2を中心に解説していきますね。

 

何らかの原因でFGFR2遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子を「FGFR2融合遺伝子」と呼んでいます。

FGFR2融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なFGFR2融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。

FGFR2融合遺伝子とがん細胞

 

リトゴビは異常なFGFR2融合タンパクを選択的に阻害するように設計された薬剤です!その他、FGFR1/3/4も阻害します。

リトゴビ(フチバチニブ)の作用機序

 

上図のようにFGFR2融合タンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制すると考えられていますね。

 

エビデンス紹介:FOENIX-CCA2試験

根拠となったのは日本を含む国際共同で実施された第Ⅱ相試験のFOENIX-CCA2試験です。4)

1つ以上の化学療法既往歴を有する局所進行・遠隔転移の胆道がん患者さんを対象に、リトゴビの安全性と有効性を検討しました。

 

主要評価項目の「客観的奏効」は42%という結果で、主要評価項目を達成しています。

なお、無増悪生存期間の中央値は9.0か月、全生存期間の中央値は21.7か月との結果でした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
類薬のペマジールと同程度の治療成績ですね!

 

用法・用量

通常、成人には、フチバチニブとして1日1回20mgを空腹時に経口投与します。

なお、患者の状態により適宜減量

 

類薬のペマジールは14日間経口して7日間休薬でしたが、リトゴビは連日の経口投与ですね。

 

副作用

20%以上に認められる副作用として、口内乾燥(30.1%)、下痢、口内炎、疲労、味覚異常、爪の異常(46.6%)、脱毛症(33.0%)、皮膚乾燥、手掌・足底発赤知覚不全症候群などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 網膜剥離:漿液性網膜剥離(1.0%)、網膜色素上皮剥離(1.0%)
  • 高リン血症(91.3%)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

特に高リン血症は、ペマジールでも認められていて、注意を要する副作用です。

 

発現時にはリン制限食に加え、高リン血症治療剤を併用の上、場合によっては減量・休薬を検討します。参考までに、炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」は下線部の効能・効果を有しているため、リトゴビの高リン血症に対しても使用可能です。

炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」

<効能・効果>

  • 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
  • FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善

 

木元 貴祥
木元 貴祥
カルシウム非含有リン吸着剤ですね!

 

食直後に投与されると、消化管において食物中に含まれるリン酸とランタンが極めて難溶性の塩を形成し、糞便中に排泄されることで、腸管からのリンの吸収を抑制すると考えられていますよ。

 

収載時の薬価

収載時(2023年8月30日)の薬価は以下の通りです。

  • リトゴビ錠4mg:10,252.50円(1日薬価:51,262.50円)

 

算定根拠については、以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】7製品(2023年8月30日)

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まとめ・あとがき

リトゴビはこんな薬

  • FGFR2融合タンパクを阻害する(FGFR1,3,4も阻害)
  • FGFR2融合遺伝子陽性胆管がんの二次治療として期待
  • 高リン血症に注意

 

これまで切除不能な胆管がんの二次治療はエビデンスのある治療選択肢がなく、新たな治療が望まれていました。

 

FGFR2融合遺伝子は胆管がん全体の10~14%ですので、全員が対象となるわけではありませんが、治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後はペマジールとの使い分けなども検討されると興味深いですね!

 

2024年にはタスフィゴ(タスルグラチニブ)も登場しています。以下の記事で比較一覧表を作成していますので、ご参照下さい。

タスフィゴ(タスルグラチニブ)の作用機序【胆道がん】

続きを見る

 

以上、今回は胆管がんとリトゴビ(フチバチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|胆管がん
  2. 日本肝胆膵外科学会|胆道癌診療ガイドライン
  3. Cytokine Growth Factor Rev. 2020 Apr;52:56-67.
  4. FOENIX-CCA2試験:N Engl J Med 2023; 388:228-239

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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