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2024年9月24日、「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とするタスフィゴ錠(タスルグラチニブ)が承認されました!
エーザイ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | タスフィゴ錠35mg |
一般名 | タスルグラチニブコハク酸塩 |
製品名の由来 | 本剤の一般名であるタスルグラチニブコハク酸塩(Tasurgratinib Succinate)の「Tas」と FGFR阻害剤の「FG」より、「タスフィゴ(TASFYGO)」とした。 |
製造販売 | エーザイ(株) |
効能・効果 | がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん |
用法・用量 | 通常、成人には、タスルグラチニブとして1日1回140mgを 空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | |
発売日 |
タスフィゴは、がんの増殖に関与しているFGFR1/2/3を選択的に阻害する新規の経口FGFR阻害薬ですね。
同様の効能・効果、作用機序を有する薬剤として、既にペマジール(ペミガチニブ)とリトゴビ(フチバチニブ)が承認されています。
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ペマジール(ペミガチニブ)の作用機序【胆道がん】
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今回は胆管がんとタスフィゴ(タスルグラチニブ)の作用機序、そして類薬のペマジールおよびリトゴビとの違いについて解説していきます。
胆道がんとは
肝臓で生成される胆汁(主に脂肪を分解する消化液)は、肝臓内の管を通って十二指腸の乳頭部から放出されます。
この胆汁が通る管のことを「胆管」と呼んでいます。また、胆汁を一時的に貯留する器官が「胆のう」です。
胆道がんはその名の通り、胆道から発生する悪性腫瘍です。
初期にはほぼ無症状ですが、がんが進行すると、
- 黄疸
- 腹痛
- 体重減少、発熱、食欲不振、全身倦怠感
といった症状が発現してきます。1)
治療法
初期に発見できた場合、手術による切除が最も有効な治療になります。
しかし、発見時にがんが大きくて切除できない場合(局所進行)や、他の臓器に転移している場合(遠隔転移)、手術はできません。
この場合、抗がん剤による化学療法が第一選択です。初回治療(一次治療)として使用される化学療法には以下があります。2)
最近では一次治療に免疫チェックポイント阻害薬のイミフィンジ(デュルバルマブ)も併用可能になりました。
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イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】
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初回治療を行ったとしてもいずれは抵抗性が生じ、上記治療が不応となってきます。
その場合、二次治療が行われますが、残念ながら明確なエビデンスのある治療法がなく、5-FU系抗がん剤(例:S-1等)が選択されることが多いです。2)
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ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】
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がんの遺伝子検査でMSI-Hと診断された場合にはキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が二次治療に行われることもありますね。2)
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今回ご紹介するタスフィゴはFGFR2融合遺伝子が陽性の場合、二次治療として治療効果が期待されている薬剤です!
胆管がんでは10~14%にFGFR2融合遺伝子陽性が認められるとされています。3)
タスフィゴ(タスルグラチニブ)の作用機序|FGFR2融合遺伝子とは
FGFR(fibroblast growth factor receptor:線維芽細胞増殖因子受容体)は正常細胞にも存在している受容体で、因子(FGF等)が結合することで活性化して細胞の活性や増殖に関与しています。
FGFRにはサブタイプがあり、FGFR1、FGFR2、FRFR3が知られていて、それぞれFGFR1/2/3遺伝子から合成されます。
何らかの原因でFGFR2遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子を「FGFR2融合遺伝子」と呼んでいます。
FGFR2融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なFGFR2融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。
タスフィゴは異常なFGFR2融合タンパクを選択的に阻害するように設計された薬剤です!その他、FGFR1とFGFR3も阻害します。
上図のようにFGFR2融合タンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制すると考えられていますね。
エビデンス紹介:E7090-J000-201試験
根拠となったのは日本と中国で実施された第Ⅱ相試験のE7090-J000-201試験です。4)
現時点では論文未公表のため、学会発表時のデータです。
1つ以上の化学療法既往歴を有する局所進行・遠隔転移の胆道がん患者さんを対象に、タスフィゴの安全性と有効性を検討しました。
主要評価項目の「客観的奏効」は30%という結果で、主要評価項目を達成しています。
なお、無増悪生存期間の中央値は5.4か月、全生存期間の中央値は13.1か月との結果でした。
しかしながら、直接比較はできないものの、生存期間は類薬のリトゴビ(生存期間中央値21.7か月)よりも短い傾向です。
用法・用量
通常、成人には、タスルグラチニブとして1日1回140mgを空腹時に経口投与します。
なお、患者の状態により適宜減量します。
副作用:高リン血症に注意が必要
重大な副作用として、
- 高リン血症(82.6%)
- 網膜剥離:網膜剥離(8.7%)、漿液性網膜剥離(8.7%)等
が挙げられています。
特に類薬でも認められている高リン血症には注意が必要だと考えられます。
発現時にはリン制限食に加え、高リン血症治療剤を併用の上、場合によっては減量・休薬を検討します。参考までに、炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」は下線部の効能・効果を有しているため、タスフィゴの高リン血症に対しても使用可能です。
炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」
<効能・効果>
- 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
- FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善
食直後に投与されると、消化管において食物中に含まれるリン酸とランタンが極めて難溶性の塩を形成し、糞便中に排泄されることで、腸管からのリンの吸収を抑制すると考えられていますよ。
収載時の薬価
現時点では薬価未収載です。
ペマジール、リトゴビとの違い・比較
類薬のFGFR阻害薬として、既に以下の2製品が承認・販売されています。
現時点の情報を元に、一覧の比較表を作成してみました!
タスフィゴは肝・腎機能による制限や、併用注意などの相互作用に影響を及ぼさない点が良いと考えます!
まとめ・あとがき
タスフィゴはこんな薬
- FGFR2融合タンパクを阻害する(FGFR1,3も阻害)
- FGFR2融合遺伝子陽性胆管がんの二次治療として期待
- 高リン血症に注意
これまで切除不能な胆管がんの二次治療はエビデンスのある治療選択肢がなく、新たな治療が望まれていました。
FGFR2融合遺伝子は胆管がん全体の10~14%ですので、全員が対象となるわけではありませんが、治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。
以上、今回は胆管がんとタスフィゴ(タスルグラチニブ)の作用機序、そして類薬のペマジールおよびリトゴビとの違いについて解説しました!
引用文献・資料等
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