2.循環器系

ユバンシ配合錠(マシテンタン/タダラフィル)の作用機序【肺動脈性高血圧症】

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2024年8月26日、厚労省の薬事審議会医薬品第一部会にて、「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とするユバンシ配合錠(マシテンタン/タダラフィル)の承認が了承されました。

ヤンセンファーマ|申請ニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ユバンシ配合錠
一般名 マシテンタン/タダラフィル
製品名の由来
製造販売 ヤンセンファーマ(株)
効能・効果 肺動脈性肺高血圧症
用法・用量 通常、成人には1日1回1錠を経口投与する。
収載時の薬価
発売日

 

ユバンシ配合錠は、既に肺動脈性肺高血圧症で使用されている以下の2つの薬剤の合剤です。

 

今回は肺動脈性高血圧症とユバンシ配合錠の作用機序、エビデンスについてご紹介します★

 

心臓と血液循環

ご存知の通り、心臓は大きく4つの部位(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれています。

 

通常、成人の心臓は以下の図のような流れで血液が循環しています。

  1. 右心房に血液が流入(大静脈)
  2. 右心室から肺に血液を送る(肺動脈)
  3. 肺で酸素を受け取る
  4. 左心房に血液が流入(肺静脈)
  5. 左心室から全身に血液を送る(大動脈)

 

このように心臓は血液を肺や全身に送る際のポンプとしての役割を担っています。

 

肺動脈性肺高血圧症とは

心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいますが、この肺動脈の血圧が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)」と呼ばれる疾患です。1)

 

肺高血圧症になると肺への血液循環が悪くなり、肺から血液に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。

そのため、軽い動作で息切れや呼吸困難といった症状が現れます。

 

しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。

 

この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、肺動脈性肺高血圧症(PAH)は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。

 

肺高血圧症に関わる因子

肺高血圧症に関わる因子として、以下の3つの経路があります。

  • プロスタグランジンI2(PGI2)経路
  • 一酸化窒素(NO)経路
  • エンドセリン経路

肺高血圧症に関わる因子と3つの経路

 

PGI2経路で合成されるcAMPや、NO経路で合成されるcGMP血管拡張作用を有しています。

一方、エンドセリン経路ではエンドセリン受容体が刺激されることで血管収縮作用があります。

 

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療

根本的な治療薬はありませんが、肺動脈の血管を拡張させ、血圧を下げることが出来ればPAHの症状が軽減できます。

 

先ほどの3つの経路を標的にした以下のような薬剤が使用されています。2)

経路 分類 代表薬
PGI2経路 PGI2製剤 静注用フローラン(エポプロステノール)、
ベンテイビス吸入(イロプロスト)
トレプロスト注射用・吸入液(トレプロスチニル)
PGI2受容体作動薬 ウプトラビ(セレキシパグ)
NO経路 PDE5阻害薬 レバチオ(シルデナフィル)
アドシルカ(タダラフィル)
可溶性
グアニル酸シクラーゼ刺激薬
アデムパス(リオシグアト)
エンドセリン経路 エンドセリン受容体拮抗薬 オプスミット(マシテンタン)
トラクリア(ボセンタン)
ヴォリブリス(アンブリセンタン)

 

リスクに応じて基本的には上記を単剤から開始しますが、効果不十分な場合や中・高リスクの場合には併用することもあります。

 

今回ご紹介するユバンシ配合錠は、「エンドセリン受容体拮抗薬」のマシテンタンと、「PDE5阻害薬」のタダラフィルを配合した薬剤ですね。

 

ちなみに、オプスミットは3番目に登場したエンドセリン受容体拮抗薬で、

  • 組織移行性と組織親和性が高い。副作用が少なく効果が高い2)
  • トラクリアに比し肝機能検査値異常の発現が少ない3)
  • ヴォリブリスに比して浮腫に関連する有害事象の発現が少ない3)

という特徴が示唆されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
以下の記事で考察していますので、併せてご参考にしてみてください♪
【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け

続きを見る

 

ユバンシ(マシテンタン/タダラフィル)の作用機序

先ほどの図を用いて解説すると、マシテンタンによるエンドセリン受容体拮抗作用によって、血管収縮が抑制されます。

さらに、タダラフィルによるPDE5阻害作用によって、cGMPが増加し、血管拡張作用が促進されると考えられています。

ユバンシ(マシテンタン/タダラフィル)の作用機序

 

これら二つの異なる経路によって、PAHの症状緩和・進行抑制効果が得られると考えられていますね。

 

なお、欧州心臓病学会/欧州呼吸器学会 (ESC/ERS) のガイドライン4)では、心肺合併症のないPAH患者さんに対して、マシテンタンとタダラフィルによる初期併用療法が推奨されています。

 

エビデンス紹介:A DUE試験

根拠となった臨床試験をご紹介します(A DUE試験)5)

本試験は、未治療または一定用量のエンドセリン受容体拮抗薬もしくはPDE5阻害薬を3か月以上投与されているWHO FC Ⅱ/Ⅲの成人PAH患者さんを対象に、ユバンシ配合錠とマシテンタン単剤またはタダラフィル単剤の有用性を検証した国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。

 

主要評価項目は、「投与開始後16週に測定した肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの減少率」とされ、結果は以下の通りでした。

ユバンシ群 マシテンタン単剤群 ユバンシ群 タダラフィル単剤群
PVRの
ベースラインからの
減少率
-45% -23% -44% -22%
HR=0.71(95%CL: 0.61-0.82)
P<0.0001
HR=0.72(95% CL: 0.64-0.80)
P<0.0001

 

マシテンタン単剤群またはタダラフィル単剤群と比較して、ユバンシ群では有意なPVRの減少が認められていますね。

 

副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験では、貧血、低血圧、浮腫などの副作用が認められていました。

 

用法・用量

通常、成人には1日1回1錠(マシテンタンとして10mg及びタダラフィルとして40mg)を経口投与します。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
タダラフィルについては、軽度・中等度の腎・肝障害の場合、1日1回20mgに減量するため、そういった場合、ユバンシがどうなるのか気になります。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ユバンシ配合錠はこんな薬

  • エンドセリン受容体拮抗薬のマシテンタンと、PDE5阻害薬のタダラフィルを配合した配合剤
  • 二つの異なる経路に作用することで血管拡張作用を示す
  • 1日1回経口投与

 

肺動脈性肺高血圧症(PAH)では、エンドセリン受容体拮抗薬とPDE5阻害薬が併用されることもあります。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
そういったケースでは、ユバンシ配合錠によって服薬の負担軽減が期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回は肺動脈性高血圧症とユバンシ配合錠の作用機序、エビデンスについてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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