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今回は「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」を効能・効果とするプラザキサカプセル75mg/110mg(一般名:ダビガトラン)についてご紹介します。
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症とは「心原性脳塞栓症」と呼ばれる疾患です。
今回は、心原性脳塞栓症とプラザキサ(ダビガトラン)の作用機序についてご説明します。
心原性脳塞栓症とは
脳の血管が何らかの原因で詰まってしまう疾患を総称して「虚血性脳卒中(脳梗塞)」と呼んでします。
脳梗塞にはその原因から、以下に分類されています。
- 心原性脳塞栓症
- ラクナ梗塞
- アテローム血栓性脳梗塞
- その他の脳梗塞
心原性とは“心臓が原因”という意味です。
即ち、心臓で発生した血栓が脳の血管を塞栓してしまう疾患です。
心臓で血栓が発生しやすい疾患として、不整脈の一種の「心房細動」があります。
通常、心臓は規則正しいリズムで収縮と拡張を繰り返していますが、心房細動では心臓が不規則に小刻みに痙攣しまいます。
心房細動では、通常の心臓のポンプとしての役割ができなくなってしまい、心臓内に血液が長時間滞留してしまいます。
その結果、血栓が発生しやすいと考えられています。
このように心房細動の患者さんは、正常な人と比較して脳梗塞を発症する確率が約5倍高いと言われています。
それではここから血栓の形成メカニズムについてご紹介します。
止血と血栓形成のメカニズム
我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。
止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。
出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。
これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。
次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。
二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。
二次血栓に関与するフィブリンは様々な「凝固因子」が血液凝固反応(カスケード)を引き起すことで生成されます。
二次止血時の血液凝固反応(カスケード)とは
血液凝固反応では、全部で14種類の凝固因子が活性化することで引き起こされます。
一般的に凝固因子はローマ数字(例:Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)で表され、活性化した凝固因子はローマ数字の後ろに“a”を付けて(例:Ⅴa、Ⅶa、Ⅸa、Ⅹa)表されます。
体内の血液凝固反応は、反応の引き金となる因子の違いから「外因系」と「内因系」に分けられていますが、今回は内因系をメインにご紹介します。
内因系の血液凝固反応は第Ⅻ因子が活性化(Ⅻa)されることで開始されます。
ⅫaはⅪを活性化(Ⅺa)させ、Ⅺaが第Ⅸ因子を活性化(Ⅸa)します。
また、第Ⅷ因子が活性化したⅧaと、Ⅸaによって第Ⅹ因子が活性化(Ⅹa)されます。
Ⅹaはプロトロンビンをトロンビンに変換し、トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変換します。
このようにして完成したフィブリンが二次止血を行い、強固な血栓(二次血栓)を形成します。
心原性脳塞栓症は、心臓の血液が凝固して二次血栓を生じることで発症するため、血液凝固を阻害すれば発症抑制が可能となります。
プラザキサ(一般名:ダビガトラン)の作用機序
プラザキサは、血液凝固に関与するトロンビンを選択的に直接阻害する「トロンビン阻害薬」に分類されています。
トロンビンを直接阻害することでフィブリノゲンからフィブリンの変換が阻害されます。
フィブリンの生成が抑制されますので二次血栓の発生が抑えられ、心原性脳塞栓症の発症抑制が可能となります。
プラザキサ(一般名:ダビガトラン)の副作用
主な副作用として消化不良、下痢、上腹部痛、鼻出血、悪心などが報告されています。
稀に消化管出血や頭蓋内出血等を引き起こすことがありますので注意が必要です。
類薬とあとがき
経口投与で使用できる抗凝固薬としては、ワルファリンの他、以下の「DOAC」と呼ばれる薬剤が近年登場してきています。
各薬剤については以下の記事にまとめていますので是非ご覧ください。
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DOAC(直接経口抗凝固薬)の一覧表と作用機序のまとめ【心原性脳塞栓症】
続きを見る
以上、今回は心原性脳塞栓症とプラザキサ(ダビガトラン)の作用機序についてご紹介しました。
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