1.中枢神経系

イーケプラ(レベチラセタム)の作用機序と副作用【てんかん】

今回はてんかんイーケプラ(一般名:レベチラセタム)の作用機序についてご紹介します。

 

イーケプラには現在、

  • イーケプラ錠250/500mg
  • イーケプラドライシロップ50%
  • イーケプラ点滴静注500mg

が承認・販売されています。2022年12月23日には点滴静注製剤に「てんかん重積状態」の適応拡大が承認されました。

 

効能・効果は以下の通りですが、点滴静注製剤経口投与が不可な場合のみに使用できます。

錠/
ドライシロップ
点滴静注
てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない
てんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
てんかん重積状態 -

 

2023年6月26日にはドライシロップと点滴静注製剤の「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」における小児用量(生後1月以上)を追加することが承認されました。

 

木元 貴祥
これまでは4歳以上の小児に限定されていましたね。

 

てんかんとは

日本におけるてんかん患者は約100万人と報告されています。

通常、脳の神経は興奮抑制がバランスよく働くことで正常な状態を保っています。

 

しかし、何らかの原因で興奮系の神経が強く働いたり、抑制系の神経の力が弱まることで、激しい電気的乱れ(過剰興奮)が生じます。

そうすると脳は適切に情報を受け取ることや、命令ができなくなり、体の動きをコントロールできなくなります。

これが、てんかんによる発作の発生機序です。

 

てんかんの種類

てんかんは、発作のタイプによって、「部分てんかん」(約60%)と、「全般てんかん」(約40%)に大別されています。

部分てんかんは、脳の一部が興奮することで引き起こされ、全般てんかんは脳の全体もしくは大部分が興奮することで引き起こされます。

 

特に、全般てんかんの中でも重篤な発作型の一つでもある“強直間代発作”は、突然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その発作頻度は「てんかん患者の予期せぬ突然死」の最も重要な危険因子とされ、てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。

 

また、てんかんの発作症状が持続したり、意識障害があるまま短時間で反復したりする状態を「てんかん重積状態」と呼んでいます。

 

てんかん診療ガイドライン2018年1)には、「けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで、30分以上持続すると後遺障害の危険性がある」と記載があるため、できるだけ早期の治療開始が必要です。

 

そして「第1段階での治療薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパムないしロラゼパムの静注射である」1)とされてますが、しばしば静脈確保が困難となることもあります。

ロラピタ(ロラゼパム)の作用機序と副作用【てんかん】

続きを見る

 

同ガイドラインでは静脈確保が困難な場合、いずれも保険適応外として以下の治療選択肢が掲載されています。

  • ジアゼパム注射液注腸
  • ミダゾラム鼻腔・口腔内、筋注投与
ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】

続きを見る

 

第1段階で効果不十分な場合、第2段階の治療選択肢としてイーケプラが使用できます。1)

 

脳の興奮系と抑制系

脳の興奮系と抑制系のバランスは以下の神経によって調整されています。

  • 興奮系神経:グルタミン神経
  • 抑制系神経:GABA(γ-アミノ酪酸)神経

 

グルタミン神経から分泌されるグルタミン酸が「NMDA受容体」や「AMPA受容体」に結合することで脳が興奮します。

 

一方、GABA神経から分泌されるGABAが「GABA受容体」に結合することで脳の興奮が抑制されます。

 

通常、てんかん発作時には興奮系の神経(グルタミン神経)が強く働いているため、

  • 興奮系神経を抑制する
  • 抑制系神経の働きを亢進する

といった治療が必要になります。

 

イーケプラ(レベチラセタム)の作用機序

グルタミン神経内のグルタミン酸は、SV2A(シナプス小胞タンパク質2A)と呼ばれる箇所から放出されます。

イーケプラは、SV2Aに結合してグルタミン酸の放出を抑制するといった作用機序を有する薬剤です。

イーケプラ(レベチラセタム)の作用機序

 

グルタミン酸の放出が抑制される結果、神経の異常興奮が抑えられ、てんかんの症状緩和に繋がると考えられます。

 

副作用

主な副作用として、傾眠、ALT増加、γ-GTP増加、好中球数減少などが報告されています。

 

あとがき

イーケプラは2010年に錠剤が、2013年にはドライシロップ剤が承認され、2014年に点滴静注製剤(注射剤)が承認されました。

注射剤は消化管の手術時など一時的に経口剤の投与ができない場合に使用が想定されます。

 

てんかんに使用できる薬剤には、様々ありますので、今後は薬剤の使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。

以上、今回はてんかんとイーケプラ(レベチラセタム)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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