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「てんかん重積状態」を効能・効果とするロラピタ静注2mg(一般名:ロラゼパム)が2018年9月21日に承認されました。
製薬会社
- 製造販売:ファイザー(株)
有効成分のロラゼパムはベンゾジアゼピン系の薬剤で、製品名ワイパックスが抗不安薬として承認・販売されています。
海外のガイドライン等では、てんかん重積状態の第一選択薬として用いられていますが、国内では適応がありませんでした。
今回はてんかんとロラピタ(ロラゼパム)の作用機序についてご紹介します。
てんかんとは
日本におけるてんかん患者は約100万人と報告されています。
通常、脳の神経は興奮と抑制がバランスよく働くことで正常な状態を保っています。
しかし、何らかの原因で興奮系の神経が強く働いたり、抑制系の神経の力が弱まることで、激しい電気的乱れ(過剰興奮)が生じます。
そうすると脳は適切に情報を受け取ることや、命令ができなくなり、体の動きをコントロールできなくなります。
これが、てんかんによる発作の発生機序です。
てんかんの種類とてんかん重積状態
てんかんは、発作のタイプによって、「部分てんかん」(約60%)と、「全般てんかん」(約40%)に大別されています。
部分てんかんは、脳の一部が興奮することで引き起こされ、全般てんかんは脳の全体もしくは大部分が興奮することで引き起こされます。
また、てんかんの発作症状が持続したり、意識障害があるまま短時間で反復したりする状態を「てんかん重積状態」と呼んでいます。
てんかん診療ガイドライン2018年1)には、「けいれん発作が5分以上持続すれば治療を開始すべきで、30分以上持続すると後遺障害の危険性がある」と記載があるため、できるだけ早期の治療開始が必要です。
そして「第1段階での治療薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパムないしロラゼパムの静注射である」1)とされてますが、しばしば静脈確保が困難となることもあります。
同ガイドラインでは静脈確保が困難な場合、いずれも保険適応外として以下の治療選択肢が掲載されています。
- ジアゼパム注射液注腸
- ミダゾラム鼻腔・口腔内、筋注投与
-
ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】
続きを見る
脳の興奮系と抑制系
脳の興奮系と抑制系のバランスは以下の神経伝達物質によって調整されています。
- 興奮系神経伝達物質:グルタミン酸
- 抑制系神経伝達物質:GABA(γ-アミノ酪酸)
グルタミン酸が「NMDA受容体」や「AMPA受容体」に結合することで脳が興奮します。
一方、GABAが「GABAA受容体」に結合することで脳の興奮が抑制されます。
通常、てんかん発作時には興奮系の神経伝達物質(グルタミン神経)が強く働いているため、
- 興奮系神経伝達物質の働きを抑制する
- 抑制系神経伝達物質の働きを増強(亢進)する
といった治療が必要になります。
ロラピタはGABAA受容体(抑制系神経)に関係する薬剤です。
GABAA受容体の仕組み
GABAとGABA受容体についてもう少し詳しく見ていきます。
GABAA受容体にはGABAが結合する部位が存在していまが、ここにGABAが結合するとクロールイオン(Cl-)が細胞内に流入します。
そうすることで神経の抑制系が亢進されると考えられています。
ロラピタ(ロラゼパム)の作用機序
前述のGABAA受容体にはGABA結合部位の他、「ベンゾジアゼピン(BZD)結合部位」が存在しています。
ロラピタはベンゾジアゼピン系の薬剤に分類されており、GABAA受容体の「ベンゾジアゼピン結合部位」に結合します。
そうすると、GABAとGABAA受容体との結合親和性が高まると考えられており、それによってクロールイオン(Cl-)の流入が増大し、神経の抑制効果がより増強(亢進)されます。
このような作用機序によって過剰に興奮した神経を抑制し、てんかん重積状態を改善するのがロラピタです!
ロラピタ静注の副作用
主な副作用として傾眠、運動失調、平衡障害などが報告されています。
ロラピタ静注の薬価
収載時(2018年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- ロラピタ静注2mg:2,225円(1日薬価:8,900円)
算定方法等については以下の記事をご覧ください。
>>【新薬:薬価収載】12製品(2018年11月20日)と市場拡大再算定
類薬・ロラピタ静注の特徴
てんかん重積状態に使用できるベンゾジアゼピン系の薬剤は以下があります。
- ミダフレッサ静注(一般名:ミダゾラム):小児のみ
- ブコラム口腔用液(一般名:ミダゾラム):小児のみ
- セルシン注射液(一般名:ジアゼパム):成人のみ
- ホリゾン注射液(一般名:ジアゼパム):成人のみ
ロラピタは成人・小児ともに使用可能です。
ガイドライン1)では第1段階の治療としてジアゼパムかロラピタが推奨されています。
小児に使用する場合、前向きの第Ⅲ相臨床試験2)より、ジアゼパムとロラピタの有効性と副作用に差は認められませんでした1)。
一方、臨床試験などのメタ解析3)では、ジアゼパムよりロラピタの方が発作の収まらないリスクがより低かった(危険率0.64)と報告されています1)。
今後使い分け等を検討する上では参考になる臨床試験かと思います!
2020年にはミダゾラムの初の頬粘膜投与製剤であるブコラム口腔用液も承認されました。
-
ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】
続きを見る
まとめ・あとがき
ロラピタはこんな薬
- ベンゾジアゼピン系の薬剤
- GABAとGABAA受容体との結合親和性が高める
- ジアゼパムと効果は同じかそれ以上(の可能性がある)
ロラピタは海外ではてんかん重積状態に第一選択薬として使用されていますが、これまで日本では適応がありませんでした。
ロラピタが承認され、日本国内でもようやく海外同様の治療が行えるようになりました!患者さんにとっては朗報ではないでしょうか。
以上、今回はてんかん重積状態とロラピタ(ロラゼパム)の作用機序についてご紹介しました!
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