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2023年3月27日、「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍」を対象疾患とするペマジール(ペミガチニブ)の適応拡大が承認されました。
インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ペマジール錠4.5mg |
一般名 | ペミガチニブ |
製品名の由来 | 当該資料なし |
製造販売 | インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン |
効能・効果 | ●がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん ●FGFR1 融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍 |
用法・用量 | <胆道がん> 通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、 7日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 <骨髄性又はリンパ性腫瘍> 通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 25,631.20円 |
ペマジールは国内初の選択的な「線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)」の阻害薬として、2021年3月23日に胆道がん治療薬として承認されました。
また、今後は希少疾病で標準治療が確立されていなかった「骨髄性又はリンパ性腫瘍」に対しても期待できます。
今回は代表疾患として、胆管がんとペマジール(ペミガチニブ)の作用機序について解説していきます。
胆道がんとは
肝臓で生成される胆汁(主に脂肪を分解する消化液)は、肝臓内の管を通って十二指腸の乳頭部から放出されます。
この胆汁が通る管のことを「胆管」と呼んでいます。また、胆汁を一時的に貯留する器官が「胆のう」です。
胆道がんはその名の通り、胆道から発生する悪性腫瘍です。
初期にはほぼ無症状ですが、がんが進行すると、
- 黄疸
- 腹痛
- 体重減少、発熱、食欲不振、全身倦怠感
といった症状が発現してきます。1)
治療法
初期に発見できた場合、手術による切除が最も有効な治療になります。
しかし、発見時にがんが大きくて切除できない場合(局所進行)や、他の臓器に転移している場合(遠隔転移)、手術はできません。
この場合、抗がん剤による化学療法が第一選択です。初回治療(一次治療)として使用される化学療法には以下があります。2)
最近では一次治療に免疫チェックポイント阻害薬のイミフィンジ(デュルバルマブ)も併用可能になりました。
-
イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】
続きを見る
初回治療を行ったとしてもいずれは抵抗性が生じ、上記治療が不応となってきます。
その場合、二次治療が行われますが、残念ながら明確なエビデンスのある治療法がなく、5-FU系抗がん剤(例:S-1等)が選択されることが多いです。2)
-
ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】
続きを見る
がんの遺伝子検査でMSI-Hと診断された場合にはキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が二次治療に行われることもありますね。2)
-
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】
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今回ご紹介するペマジールはFGFR2融合遺伝子が陽性の場合、二次治療として治療効果が期待されている薬剤です!
胆管がんでは10~16%にFGFR2融合遺伝子陽性が認められるとされています。3-4)
ちなみに、2021年2月15日に「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」がFGFR2融合遺伝子のコンパニオン診断として承認を取得していますね。早い!
ペマジール(ペミガチニブ)の作用機序|FGFR2融合遺伝子とは
FGFR(fibroblast growth factor receptor:線維芽細胞増殖因子受容体)は正常細胞にも存在している受容体で、因子(FGF等)が結合することで活性化して細胞の活性や増殖に関与しています。
FGFRにはサブタイプがあり、FGFR1、FGFR2、FRFR3が知られていて、それぞれFGFR1/2/3遺伝子から合成されます。
何らかの原因でFGFR2遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子を「FGFR2融合遺伝子」と呼んでいます。
FGFR2融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なFGFR2融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。
ペマジールは異常なFGFR2融合タンパクを選択的に阻害するように設計された薬剤です!
上図のようにFGFR2融合タンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制すると考えられていますね。
エビデンス紹介:FIGHT-202試験
根拠となったのは日本を含む国際共同で実施された第Ⅱ相試験のFIGHT-202試験です。4)
1つ以上の化学療法既往歴を有する局所進行・遠隔転移の胆道がん患者さんを対象に、ペマジールの安全性と有効性を検討しました。
本試験は3つのコホートに分かれて検討されています。
- FGFR2融合遺伝子/再構成陽性コホート
- 他のFGF/FGFR遺伝子変異陽性コホート
- 変異陰性コホート
主要評価項目は①のコホートにおける「奏効率」とされ、結果は35.5%と主要評価項目は達成されていました。
ちなみに同コホートの無増悪生存期間中央値は6.9か月、生存期間中央値は21.1か月と有望な結果です。
用法・用量
<胆道がんの場合>
通常、成人にはペミガチニブとして1日1回13.5mgを14日間経口投与した後、7日間休薬します。これを1サイクルとして投与を繰り返します。
なお、患者の状態により適宜減量
<骨髄性又はリンパ性腫瘍の場合>
通常、成人には、ペミガチニブとして1日1回13.5mgを経口投与します。
なお、患者の状態により適宜減量
副作用:高リン血症
10%以上に認められる副作用として、ドライアイ(31.8%)、睫毛乱生、下痢(42.1%)、口内炎(43.0%)、口内乾燥(37.4%)、悪心、便秘、嘔吐、疲労(41.1%)、体重減少、食欲減退、低リン血症、関節痛、四肢痛、筋肉痛、味覚異常(45.8%)、鼻乾燥、脱毛症(57.0%)、爪の障害(44.9%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群、皮膚乾燥などが報告されています。
また、重大な副作用としては、
- 網膜剥離(1.9%)
- 高リン血症(53.3%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
高リン血症の対策として、臨床試験では炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」が使用されていたことから、炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」に下線部の効能・効果が追加されています。
炭酸ランタン顆粒分包「ニプロ」
<効能・効果>
- 慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
- FGFR阻害剤投与に伴う高リン血症の改善
食直後に投与されると、消化管において食物中に含まれるリン酸とランタンが極めて難溶性の塩を形成し、糞便中に排泄されることで、腸管からのリンの吸収を抑制すると考えられていますよ。
収載時の薬価
収載時(2021年5月19日)の薬価は以下の通りです。
- ペマジール錠4.5mg:25,631.20円
算定根拠については以下をご覧ください。
-
【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2021年5月19日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ペマジールはこんな薬
- FGFR2融合タンパクを選択的に阻害する
- FGFR2融合遺伝子陽性胆管がんの二次治療として期待
- 高リン血症に注意(炭酸ランタンで対処)
これまで切除不能な胆管がんの二次治療はエビデンスのある治療選択肢がなく、新たな治療が望まれていました。
FGFR2融合遺伝子は胆管がん全体の10~16%ですので、全員が対象となるわけではありませんが、治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。
2023年には新規のFGFR阻害薬であるリトゴビ(フチバチニブ)、2024年にはタスフィゴ(タスルグラチニブ)も登場しています。以下の記事で比較一覧表を作成していますので、ご参照下さい。
-
タスフィゴ(タスルグラチニブ)の作用機序【胆道がん】
続きを見る
以上、今回は胆管がんとペマジール(ペミガチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- がん情報サービス|胆管がん
- 日本肝胆膵外科学会|胆道癌診療ガイドライン
- Cytokine Growth Factor Rev. 2020 Apr;52:56-67.
- FIGHT-202試験:Lancet Oncol. 2020 May;21(5):671-684.
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