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2023年3月27日、厚労省は新薬として9製品を承認しました。その他、既存薬の適応拡大等が14製品承認されていますね。
新薬:9製品
●ドプテレット錠20mg(一般名:アバトロンボパグマレイン酸塩)
:「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
新規のトロンボポエチン受容体作動薬ですね。類薬にはムルプレタ錠(一般名:ルストロンボパグ)があります。
●エムパベリ皮下注1080mg(一般名:ペグセタコプラン)
:「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
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エムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)の作用機序【PNH】
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補体C3とC3bを阻害する作用を有するPEG化ペプチド製剤です!
抗補体C5抗体製剤(ソリリス、ユルトミリス)が投与された一部の患者さんでは、補体C3を介した血管外溶血を認めることがあり、課題となっていました。
●①オンボー点滴静注300mg、②同皮下注100mgオートインジェクター、③同皮下注100mg シリンジ(一般名:ミリキズマブ(遺伝子組換え))
:①「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
②③「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
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オンボー(ミリキズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎】
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IL-23のp19サブユニットを特異的に阻害する抗体薬です。
点滴静注は寛解導入療法、皮下注製剤は維持療法に使用します。
●パリンジック皮下注2.5mg、同皮下注10mg、同皮下注20mg(一般名:ペグバリアーゼ(遺伝子組換え))
:「フェニルケトン尿症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
パリンジックは、フェニルケトン尿症で蓄積しているフェニルアラニンを分解する作用を有しています!
●オファコルカプセル50mg(一般名:コール酸)
:「先天性胆汁酸代謝異常症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
先天性胆汁酸代謝異常症は、肝臓内でのコレステロールから胆汁酸までの生合成経路に関与する酵素のうちいずれか一つの遺伝性欠損を病因とし、複数の欠損症からなる疾患です。
オファコルは、先天性胆汁酸代謝異常症患者に対して、酵素の欠損に起因して合成されないコール酸を補充する目的で使用します。
日本では未承認だったことから、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと評価され、厚労省から開発要請を受けていました。
●アトガム点滴静注液250mg(一般名:抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン)
:「中等症以上の再生不良性貧血」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
アトガムは、ヒト胸腺細胞で免疫されたウマの血漿から分離精製したIgGで、強力なT細胞抑制作用を有しています。
その免疫抑制作用によって再生不良性貧血の症状を改善し、海外では第一選択薬の一つとして使用されています。
こちらも日本では未承認だったことから、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと評価され、厚労省から開発要請を受けていました。
●フルミスト点鼻液(一般名:経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)
:「インフルエンザの予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
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フルミスト点鼻液の作用機序【経鼻弱毒生インフルエンザワクチン】
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国内初の鼻腔噴霧型インフルエンザ弱毒生ワクチンですね!!対象年齢は「2歳以上19歳未満」です。
2016年に申請されていましたが、臨床試験等で疑義があり、時間がかかったとのこと。
ただし、発売予定時期は2024年度とのことですので、もう暫く先になりますね。
●ゴービック水性懸濁注シリンジ(一般名:沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルb型混合ワクチン)
:「百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤。
既に承認されている4種混合ワクチンのテトラビック皮下注にHibワクチンを加えた5種混合ワクチンです。
●ベスレミ皮下注250μgシリンジ、同皮下注500μgシリンジ(一般名:ロペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え))
:「真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。
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ベスレミ皮下注(ロペグインターフェロン)の作用機序【真性多血症】
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2週間に1回の皮下投与で使用するPEG化インターフェロン製剤です。
独自の技術によって化学的に単一なため、半減期が延長しているとのこと。
適応拡大・剤形追加等:14製品
●ウゴービ皮下注0.25mgSD、同皮下注0.5mgSD、同皮下注1.0mgSD、同皮下注1.7mgSD、同皮下注2.4mgSD(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え))
:「肥満症」を効能・効果とする新効能・新用量・その他・剤形追加に係る医薬品。
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ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】
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有効成分のセマグルチドは、既に2型糖尿病治療薬のオゼンピック皮下注やリベルサス錠として使用されています。
ウゴービもオゼンピックも有効成分が同一の皮下注製剤ですが、医療上の使用環境の違いを考慮して別製品名とされました。
●アポハイドローション20%(一般名:オキシブチニン塩酸塩)
:「原発性手掌多汗症」を効能・効果とする新効能・新剤形医薬品。
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アポハイドローション(オキシブチニン)の作用機序【手掌多汗症】
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アポハイドの有効成分のオキシブチニンは抗コリン薬に分類されていて、過活動膀胱の治療薬等でも使用されていますね。
原発性局所多汗症のうち、「原発性腋窩多汗症」については、最近以下の2製品が承認されています。
●エンタイビオ皮下注108mgペン、同皮下注108mgシリンジ(一般名:ベドリズマブ(遺伝子組換え))
:「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
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エンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎/クローン病】
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既にエンタイビオ点滴静注用が潰瘍性大腸炎・クローン病の治療薬として使用されていますが、今回は皮下注製剤が追加されます。
●リネイルゲル10%(一般名:アセチルシステイン)
:「巻き爪矯正の補助」を効能・効果とする新投与経路医薬品。
巻き爪に対しては、主に外科的治療と保存的治療が行われていますが、外科的治療は侵襲性が高いことから、ワイヤ等の爪矯正具を用いた非侵襲的な保存的治療が広く施行されています。
リネイルゲルは爪の構成成分であるケラチンに含まれるジスルフィド結合を還元して開裂することで爪を軟化させる働きがあります。
●ペマジール錠4.5mg(一般名:ペミガチニブ)
:「FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
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ペマジール(ペミガチニブ)の作用機序【胆道がん】
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骨髄性又はリンパ性腫瘍は非常に稀な血液腫瘍の一つで、治療選択肢は「同種造血幹細胞移植」で、標準治療は確立されていませんでした。
FGFR1融合遺伝子陽性の場合に新たな治療選択肢として使用できるため、期待されています!
●コムレクス耳科用液1.5%(一般名:レボフロキサシン水和物)
:「〈適応菌種〉本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、肺炎桿菌、エンテロバクター属、セラチア属、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属――。〈適応症〉外耳炎、中耳炎」を効能・効果とする新投与経路医薬品。
レボフロキサシンの耳科用液ですね。キノロン系抗菌薬に分類されています。
●バリキサドライシロップ5000mg(一般名:バルガンシクロビル塩酸塩)
:「症候性先天性サイトメガロウイルス感染症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
症候性先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対する世界初の治療薬です!
妊婦の胎盤を通じて胎児に感染して発症する症候性先天性CMV感染症ですが、これまで同適応を有する薬剤はありませんでした。
●オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(一般名:ニボルマブ(遺伝子組換え))
:「非小細胞肺がんにおける術前補助療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
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オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺/食道がん】
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術前にプラチナ製剤を含む化学療法と併用します。根拠となった臨床試験はCheckMate-816試験ですね。
●ペメトレキセド点滴静注用100mg「NK」、同点滴静注用500mg「NK」、同点滴静注用800mg「NK」、同点滴静注液100mg「NK」、同点滴静注液500mg「NK」、同点滴静注液800mg「NK」(一般名:ペメトレキセドナトリウムヘミペンタ水和物)
:「扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんにおける術前補助療法」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
オプジーボの術前補助療法に合わせた適応拡大です。
●テクネフチン酸キット(一般名:フィチン酸テクネチウム(99mTc))
:「子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頸部がんにおけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ」を効能・効果とする新投与経路医薬品・新効能医薬品。
現在、乳がんや悪性黒色腫のセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィを効能・効果としていますが、新たに上記のがんに対しても使用可能となります。
●エンハーツ点滴静注用100mg(一般名:トラスツズマブデルクステカン(遺伝子組換え))
:「化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新効能医薬品。
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エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
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これまではHER2陽性の乳がんや胃がんに使用されていましたが、HER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+と定義)の乳がんの二次治療に適応拡大されます。
デルクステカンは細胞膜の透過性が高いため、周囲のがん細胞にも効果が及ぶようです。そのため、HER2低発現であっても治療効果が期待されると考えられていますね。
●5-FU注250mg、同1000mg(一般名:フルオロウラシル、協和キリン):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
●アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg(一般名:レボホリナートカルシウム水和物、ファイザー):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
●エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg、オキサリプラチン点滴静注液50mg/10mL「サンド」、同100mg/20mL「サンド」、同200mg/40mL「サンド」(一般名:オキサリプラチン)
:「胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
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エルプラット(オキサリプラチン)の作用機序【各癌腫とレジメン】
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これまで胃がんに対してはCAPOX療法(カペシタビン+オキサリプラチン)やSOX療法(S-1+オキサリプラチン)しか使用できませんでしたが、今回新たにFOLFOX療法(5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン)が使用可能となります。
いずれも事前評価済みの公知申請のため、保険償還は可能でした。
あとがき
今回の注目は、肥満症治療薬のウゴービ(セマグルチド)と、国内初の鼻腔噴霧型インフルエンザ弱毒生ワクチンのフルミスト点鼻液ですかね。
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フルミスト点鼻液の作用機序【経鼻弱毒生インフルエンザワクチン】
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ウゴービは肥満症全体に使用できるわけではなく、以下の場合にのみ使用できます。
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
- BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- BMIが35kg/m2以上
以上、今回は2023年3月27日に承認された新薬や適応拡大等について概要をご紹介しました!
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