新薬承認・薬価収載

【新薬:薬価収載】7製品(2023年8月30日)

2023年8月30日、新薬6製品と再生医療等製品1製品が薬価収載されました!

 

前回見送られていたエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)が今回収載されましたが、ウゴービ皮下注(セマグルチド)は今回も見送りです…。

ウゴービは肥満症治療薬として期待されているだけに動向が気になりますね。

ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】

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その他、市場拡大再算定費用対効果評価を踏まえた薬価の引き下げも了承され、2023年11月1日より薬価がダウンする薬剤もいくつかありました・・・。

 

木元 貴祥
今回は薬価収載の新薬一覧とその算定根拠について紹介していきます!

 

2023年8月30日:薬価収載の6製品

2023年8月30日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。

製品名
(一般名)
規格 薬価 効能・効果
(簡略)
コレチメント錠
(ブデソニド)
9mg1錠 607.80円 潰瘍性大腸炎
リットフーロカプセル
(リトレシチニブ)
50mg1カプセル 5,802.40円 円形脱毛症
リトゴビ錠
’(フチバチニブ)
4mg1錠 10,252.50円 胆道がん
エムパベリ皮下注
(ペグセタコプラン)
1,080mg20mL1瓶 488,121円 発作性夜間ヘモグロビン尿症
オンキャスパー点滴静注用
(ペグアスパルガーゼ)
3,750国際単位1瓶 230,637円 急性リンパ性白血病
アクトヒブ
(乾燥ヘモフィルスb型ワクチン)
10μg1瓶 4,941円 インフルエンザ菌b型による
感染症の予防

 

薬価の算定方法

各薬剤の薬価算定方法は2023年8月23日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。

 

コレチメント:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ゼンタコート)

コレチメントと同一有効成分・同一投与形態であるゼンタコート(ブデソニド)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

ゼンタコートはクローン病、コレチメントは潰瘍性大腸炎に使用します。

 

特に加算等はなく、以下の薬価に決定しました。

  • ゼンタコートカプセル3mg:202.60円(1日薬価:607.80円)
  • コレチメント錠9mg:607.80円(1日薬価:607.80円)

 

ピーク時の予測販売金額は15億円です。

 

同様の有効成分を含有する注腸剤のレクタブルとの比較や、作用機序・特徴については以下で解説しています。

コレチメント(ブデソニド)の作用機序:レクタブルとの違い【潰瘍性大腸炎】

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リットフーロ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (オルミエント)【加算あり】

リットフーロは、同じく円形脱毛症に使用するJAK阻害薬のオルミエント(バリシチニブ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)小児加算(A=5%)が加算されていますね!

元々の薬価は1カプセル5,274.90円でしたが、加算(×1.1)の上、以下の薬価に決定しました。

  • オルミエント錠4mg:5,274.90円(1日薬価:5,274.90円)
  • リットフーロカプセル50mg:5,802.40円

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。12歳以上の小児に対しても効果が認められている点が評価されました。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:比較薬オルミエント錠が承認を有さない12歳以上の小児円形脱毛症患者に対しても有用性が認められていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
  • 小児加算:本剤は小児に係る用法・用量が明示されていること等から、加算の要件に該当する。日本人の試験組み入れ数等を踏まえ、加算率は5%が妥当である。

 

ピーク時の予測販売金額は156億円です。

 

作用機序・エビデンスや、オルミエントとの違いについては以下の記事で解説しています。

リットフーロカプセル(リトレシチニブ)の作用機序【円形脱毛症】

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経口JAK阻害薬については以下の記事でまとめましたので、併せてご参考くださいませ♪

JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ

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リトゴビ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ペマジール)

リトゴビは同じく胆道がんに使用するペマジール(ペミガチニブ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

特に加算等はなく、以下の薬価に決定しました。

  • ペマジール錠4.5mg:25,631.20円(1日薬価:51,262.40円)
  • リトゴビ錠4mg:10,252.50円(1日薬価:51,262.50円)

 

ピーク時の予測販売金額は3.7億円です。

 

作用機序とエビデンスについては以下で解説しています。

リトゴビ(フチバチニブ)の作用機序【胆道がん】

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エムパベリ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(ソリリス)【加算あり】

エムパベリは、同じく発作性夜間ヘモグロビン尿症に使用するソリリス(エクリズマブ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!元々の薬価は1瓶464,877円でしたが、加算(×1.05)の上、以下の薬価に決定しました。

  • ソリリス点滴静注300mg:619,834.00円(1日薬価:132,822円)
  • エムパベリ皮下注1080mg:488,121円(1日薬価:139,463円)

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。ソリリスで効果不十分な場合にも有効性が認められている点が評価されました。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:臨床試験において、比較薬エクリズマブ(遺伝子組換え)で効果不十分な患者を対象として、有効性が認められていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は110億円です。

 

作用機序については以下の記事で解説しています。

エムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)の作用機序【PNH】

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当日の中医協総会では、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤とすることも了承されましたので、発売と同時に在宅自己注射が可能になる見込みです。

 

オンキャスパー:原価計算方式【加算あり】

オンキャスパーと同一有効成分である大腸菌由来L-アスパラギナーゼ製剤のロイナーゼは、昭和46年の薬価収載品目であることから、本剤の算定上の比較薬として用いるには適当でないと判断されました。

よって、算定方式は原価計算方式です。

 

また、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)小児加算(A=5%)の対象でしたが、原価の開示度が50%を下回ったため加算係数がゼロに。

 

木元 貴祥
出ましたね、加算係数ゼロ・・・。

 

2022年の診療報酬改定で開示度に応じた加算係数ですが、これまでにほとんどの新薬は加算係数ゼロでした。従って、特に加算はなく、以下の薬価に決定しています。

 

  • オンキャスパー点滴静注用3750国際単位1瓶:230,637円

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。既存のロイナーゼではしばしば過敏症が問題となっていましたが、そのような場合にも使用可能になった点が評価されていますね。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:既存の治療方法であるL-アスパラギナーゼ製剤に対して過敏症を示し、同剤が使用できなくなった患者に対しての有効性が示されていること等から、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。
  • 小児加算:本剤の効能・効果及び用法・用量は小児と成人の区別がされておらず、小児にも使用可能であること等から、加算の要件に該当する。国内臨床における小児の組み入れ数等を踏まえ、加算率は5%が妥当である。

 

ピーク時の予測販売金額は5.2億円です。

 

作用機序やエビデンスについては以下の記事で解説しています。

オンキャスパー(ペグアスパルガーゼ)の作用機序・特徴【急性リンパ性白血病】

続きを見る

 

アクトヒブ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ニューモバックス)【加算あり】

アクトヒブはインフルエンザ菌b型(ヒブ)感染症の予防接種に使用するヒブワクチンです。類似薬は肺炎球菌ワクチンのニューモバックスとされ、その1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

アクトヒブは2008年に販売され、定期接種化されています。定期接種は保険給付の対象とならないため、薬価基準未収載でした。

 

類薬のニューモバックスも定期接種化されていて基本は保険給付の対象外ですが、「2歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防」の目的で使用した場合、保険給付の対象となっています。

 

今回、アクトヒブが薬価収載された理由についてですが、同日収載されるエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)の投与にあたっては、警告欄にヒブワクチンの投与を行う旨が記載されています。そのため、この対象に対して混合診療による保険給付の制限を回避する目的で、アクトヒブが保険給付の対象となりました。

薬価収載と同日、アクトヒブの添付文書に「本剤はペグセタコプラン投与患者に保険給付が限定される。」との記載が追加されています。

 

参考までに、エムパベリの添付文書の記載はこちらです↓↓

エムパベリ皮下注の警告欄(抜粋)

髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与前にワクチンを接種すること。必要に応じて、本剤投与中のワクチンの追加接種を考慮すること。

 

また、これまでは5歳未満の接種に限定されていましたが、2023年6月より、年齢の制限も無くなっています。アクトヒブの製造販売元のサノフィ社のHPにも掲載されていましたので、ご参照ください。

薬価基準に収載される背景

アクトヒブが薬価基準収載されることとなった背景といたしましては、2023 年 3 月にインフルエンザ菌 b 型に対するワクチン接種が事前に必要な薬剤が製造販売承認を取得したことにより、今後混合診療による保険給付の制限を回避するためです。

アクトヒブは、成人(造血幹細胞移植後や免疫を低下させる薬剤が投与された患者等)への接種ができるように、2023 年 6 月 1 日に電子添文の改訂を行い、5 歳未満の年齢制限をなくし、改訂後は全ての年齢において接種が可能になっております。

【出典】サノフィ|アクトヒブ>薬価基準収載に関するご案内

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!元々の薬価は1瓶4,706円でしたが、加算(×1.05)の上、以下の薬価に決定しました。

  • ニューモバックスNPシリンジ:4,735円(1日薬価:4,735円)
  • アクトヒブ:4,941円(1日薬価:4,941円)

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤は、本邦において予防接種法において定期接種のワクチンと位置づけられていることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は89万円です。

 

再生医療等製品のルクスターナ:類似薬効比較方式(Ⅰ)【加算あり】

ルクスターナは、「両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー」を効能・効果とする遺伝子治療用ベクターで、単回投与でRPE65遺伝子の機能欠損を補うことが可能です。

類薬はないため、原価計算方式で算定されました。

 

また、有用性加算(Ⅰ)(A=45%)の対象でしたが、原価の開示度が50%を下回ったため加算係数がゼロに・・・。

 

木元 貴祥
有用性加算Ⅰでもゼロは厳しい…

 

そのため、加算は無くなり、以下の薬価に決定しました。

  • ルクスターナ注:49,600,226円

 

1瓶で約5,000万円!!片目に1本ずつ使用するため、1人の患者さんでは2本使用します。そのため、1患者さんあたりの薬価は約1億円と、ゾルゲンスマに次ぐ高額薬価となりました。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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ただ、予測本剤投与患者数はピーク時で年間5名のため、ピーク時の予測販売金額は5億円です。

 

市場拡大再算定:ヘムライブラ、リムパーザ、ゼジューラ

効能変更等が承認された既収載品及び2年度目以降の予想販売額が350億円を億円を超える既収載品について、一定規模以上の市場拡大のあった場合、新薬収載の機会(年4回)を活用して、薬価を見直すこととされています。

 

ヘムライブラ(エミシズマブ)は、2022年6月20日に「後天性血友病A患者における出血傾向の抑制」の適応拡大が承認され、市場規模が増加してしまいました。

ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】

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また、リムパーザ(オラパリブ)は2022年8月24日に「BRCA 遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法」の適応拡大が承認され、ゼジューラ(ニラパリブ)はその類似品として道連れの薬価ダウンです。

リムパーザ(オラパリブ)の作用機序【卵巣/乳/膵/前立腺がん】

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その結果、2023年11月1日より、現在販売されている上記医薬品の薬価は以下に引き下げられます。

 

ヘムライブラが約9.4%、リムパーザが約7.7%、ゼジューラが約10.2%の薬価ダウンです。

 

木元 貴祥
道連れのゼジューラのダウン率が一番高いのが可哀想な気もしますが…。

 

費用対効果評価:リフヌア

2022年1月20日に承認された慢性咳嗽治療薬のリフヌア(ゲーファピキサント)は、費用対効果評価の結果に基づいて薬価が引き下げられます。

時期は同じく2023年11月1日です。

  • リフヌア錠45mgの現行薬価:203.20円
  • リフヌア錠45mgの改定薬価:187.50円

 

こちらは約7.7%の薬価ダウンですね。

リフヌア(ゲーファピキサント)の作用機序【慢性咳嗽】

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あとがき

今回は再生医療等製品を含む7製品中5製品が加算品目でしたね!

 

また、ピーク時の予測販売金額が100億円を超えたのは以下の2製品です。

 

また、1人あたりの薬価が約1億円となった再生医療等製品のルクスターナも注目ですね!作用機序的には既に承認されていて国内最高薬価(収載時は約1憶6,700万円)のゾルゲンスマと似ています。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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前回から見送られている肥満症治療薬のウゴービ皮下注(セマグルチド)は今回も見送られましたので、次回以降の薬価収載が期待されますね。

 

木元 貴祥
ウゴービは、肥満症の医療用医薬品としてサノレックス(マジンドール)以来の登場のため、非常に期待されています。

 

以上、今回は2023年8月30日に薬価収載された新薬6製品+再生医療等製品1製品についてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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